「この森で、天使はバスを降りた」を観る2008/04/06

邦題に賛否があるでしょうね。最初私はどの人が天使?と思ってしまいましたが、映画を観ているうちに納得しました。
原題は"THE SPITFIRE GRILL"。

1996年製作
監督:リー・デイヴィッド・ズロートフ
パーシー:アリソン・エリオット
ハナ:エレン・バースティン
シェルビー:マルシア・ゲル・ハーデン

刑務所で、メイン州観光局のテレフォン係をやっていたパーシー・タルボットは、刑期満了になり、刑務所から出ることになります。
彼女が新しい人生を始めようと思った先は、インディアン伝説のあるギリアドという田舎町でした。
『オデッセイ』を読んだりしているのをみると、パーシーは結構読書家です。
そんな彼女はどんな罪を犯したのでしょうか。

彼女は夜行バスでギリアドに到着します。
窓からそっと彼女の様子を見る人々。
このショットで、ここが閉鎖的な町だということがわかります。
刑務所の職員の知り合いの保安官が、”スピットファイヤー・グリル”を紹介してくれました。
”スピットファイヤー・グリル”はハナというちょっと偏屈な老女が経営しているレストランです。
最初は上手く行くのかしらという感じでしたが、腰痛を持っているハナが上にある荷物を取ろうとして、椅子から落ち、骨折をしてから、二人の間に信頼感が生まれてきます。

町の人々はパーシーのことが気になってしょうがありません。
隙あれば、詮索しようとします。
パーシーは自分の身の上を隠すのではなく、おおっぴらにします。
自分は刑務所から来たと。
ハナの甥で不動産屋をしているネイハムは、そんなパーシーのことをおもしろく思っていませんでした。
一体なんのためにハナの所にいるのだ?絶対何かある。
そう思ったネイハムは、パーシーを見張るために、いつも役立たずだと馬鹿にしている自分の妻、シェルビーにレストランを手伝わせることにします。
自分に自信がないシェルビーはいつもビクビクしていましたが、レストランで自分の料理の腕を認められるにつれ、自信を持ち始め、パーシーとも信頼関係を築いていきます。
ハナはパーシーにあることを頼みました。
夜に麻袋の中に缶詰を入れて、裏庭の斧の横に置いておいてほしいというのです。
不思議に思ったパーシーはある夜、誰が取りに来るのか確かめます。
それはベトナム戦争で精神を病んだ、ハナの息子、イーライだったのです。
そんなことを知らないパーシーは彼をジョニー・Bと呼ぶことにします。

ハナはレストランを売ろうとしていましたが、不況下では売れません。
それを聞いたパーシーは、前に聞いたことのある作文コンテストをしたらどうかと言います。
レストランが欲しい人が100ドルの応募料を払い、店をどうしたいかを書いた作文を書きます。
最優秀賞をもらった人にレストランをあげるというものです。
嬉しいことに、続々と手紙が来始め、予想以上のお金が集まりました。
一体何が起こっているのかと、好奇心いっぱいの村人たちですが、そんな彼らを無理矢理作文の審査員としたところなんか、笑ってしまいます。

そんなハナたちを苦々しく思っていたネイハムはパーシーの過去を探り、彼女の目当ては金だと断定し、保安官にチクリに行きますが、保安官は相手にしません。
そこで、彼は…。

パーシーがイーライと密かに会っていることに気づいたハナは、戻ってきたパーシーに怒りをぶつけます。
その次の日、パーシーはいなくなり、お金もなくなっていました。
ネイハムのパーシーが裏庭で誰かに袋を渡しているのを見たという証言で、村人たちは森の中に共犯者がいると思い、山狩りをすることにします。

映画の中で次のようなセリフがあります。

パーシー:傷が深いのなら 治るのも それに比例して苦しいのかしら
ハナ:   たぶんね

美しい自然の中で、心の傷を癒そうとしている人々がいます。
でも、人は残酷なものです。
どうしてそのような心の行き違いが起こるのか、それは永遠の謎です。
人は過ちを通してしか、自分の過ちを理解できないのでしょうか?
そんなことを思わせられる映画でした。