カミラ・レックバリ 『悪童』2011/04/06



説教師』では妊娠していたエリカですが、無事子供が生まれました。それなのに幸せでいっぱい・・・ではなく、育児ノイローゼ気味です。子どもがなかなか寝ないのです。パトリックも寝不足気味で仕事に行く始末。実は仕事で家を出られて、ホッとしていたりします。

そういう時に、子どもが生まれてから親しくなった近所のママ友、シャロットの娘で7歳のサーラが海で遺体となって見つかります。検死の結果、殺人事件とみなされます。
シャロットの家族はしばらく前に引越ししてきて、母親の家に居候していました。
シャロットは母親とはうまくいかないので別居したいと思っていたところでした。

母親は再婚相手が病気なので、献身的に面倒をみているなど優しいところもあるのですが、隣人カイとは犬猿の仲です。互いに相手の粗探しをして、些細なことで裁判を起こすは、警察を呼ぶは・・・。
カイの息子モルガンは人とは違っており、”変人”と思われていました。

シャロットの夫である医師のニクラスは娘が遺体で見つかったというのに、連絡しても職場にいませんでした。
ニクラスは偏狂的な父親のために10代の頃に家を飛び出しており、親が近くに住んでいるにも関わらず、会っていません。

怪しい人はたくさんいても、一体誰が何のためにサーラを殺したのかはわかりません。

途中に挟まれる昔の出来事がどう現在と繋がるのか。それがわかった時に謎が解けます。

前の2作よりも読みやすいと思ったら、訳者が変わっていたのですね。
このシリーズ、『ミレニアム』よりも人気があるらしいです。(あとがきによる)
まあ、それぞれの家庭の中の隠された暗部が書かれていて、怖いもの見たさで読まれているのかもしれませんね。

私って人間性善説の人なので、これほどの”悪”を秘めた人がいるなんて信じられないと思ってしまいました。こういう”悪”を想像できないとミステリーは書けないのでしょうね。

読みながら「不寛容」について考えさせられました。程度というものがあるのでしょうが、人はみなそれぞれ他人に対して「不寛容さ」を持っています。できれば、その割合が少ない人間でいたいと思います。
でも、難しい時が多いんですがね。

最後にエリカの妹が・・・。
早く次が読みたいわ。

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_ じゅうのblog - 2015/04/29 00時00分10秒

「カミラ・レックバリ」の長篇ミステリー作品『悪童―エリカ&パトリック事件簿(原題:Stenhuggaren、英語題:The Stone Cutter)』を読みました。
[悪童―エリカ&パトリック事件簿(原題:Stenhuggaren、英語題:The Stone Cutter)]

『氷姫―エリカ&パトリック事件簿』、『説教師―エリカ&パトリック事件簿』に続き「カミラ・レックバリ」作品です。

-----story-------------
ロブスター漁の網が子供の遺体を引き上げた。
医師「ニクラス」の娘、7歳の「サーラ」だった。
検死の結果、肺から石鹸水が検出され、殺人事件として捜査が開始される。
指揮を執るのは父親になったばかりの「パトリック」、生前最後に「サーラ」と一緒にいた少女から事情をきいたものの、浮かんだ犯人像はあまりに意外で…。
小さな海辺の町の人間模様と風土も魅力的、世界で1000万部突破の大人気シリーズ第3弾。
-----------------------

2005年に発表された「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第3作目、、、

前作から数ヶ月後という設定のようで、季節は夏から秋に変わり、「エリカ」と「パトリック」には愛娘「マヤ」が誕生し、「エリカ」の妹「アンナ」は前作でDV夫「ルーカス」と離婚したのに、再び「ルーカス」の元に戻り、さらに激しいDVに遭っている… 等々、季節やプライベートな設定が前回と変化した状況下で新事件の解決に挑みます。


今回の事件は子ども殺しという重いテーマを扱っています、、、

漁師の網にかかった少女の死体は溺死と思われたが、検死の結果、肺から淡水(風呂で使ったと思われる石鹸水)が検出され、殺された後に海に捨てられたことが想定されることから、殺人事件として捜査が始まる… 「パトリック」が事件の捜査を指揮することになるが、被害者「サーラ」の母親「シャロット」は、「エリカ」のママ友だったことから、私情を挟んでしまい、やり難さを感じながらの捜査となります。

ここに80年前の美しいが陰険な性格の女性「アグネス」の物語が並行して展開… 全くの無関係と思われた、二つの物語が終盤でひとつの物語となる瞬間は、なかなか感動的でしたね。

80年間に亘る「アグネス」の物語と原題の子ども殺しの物語が展開する中で、家族や愛、虐待、死、病気、不倫、嫉妬、殺意、変態的性欲(児童ポルノ)、殺人、悪というあらゆるものが登場、、、

善と悪が単純ではなく、多面的な様相を見せる読み応えのある長篇作品(約700ページ)でした。


「アグネス」の母「リリアン」と隣人「カイ・ヴィーバリ」の険悪な仲、

「リリアン」の夫「スティーグ」の病気(前夫と同じ病状?)、

「アグネス」の夫「ニクラス」の不倫、

「サーラ」の弟「アルビン」が受けていた虐待、

「カイ・ヴィーバリ」の変態的性癖、

「カイ・ヴィーバリ」の息子「モルガン」の先天的な病気(アスペルガー症候群)、

等々の捜査で判明した事実が、ひとつの真実へと導いてくれます。


そして、まさかまさか身内の犯行とは… そして、その背景には「アグネス」に育てられた「マリー」の不幸な子ども時代の影響が色濃く反映されていたなんて、、、

「シャロット」の体型や行動(食欲を抑えきれない)が「マリー」との類似性があるなぁ… とは感じていたんですよね。

真相が判明した際のパズルのピースが埋まったような感覚… 達成感のある作品でした。


それにしても、警察官「アーンスト・ルンドグレーン」の無謀な(無能な?)捜査の犠牲となった「モルガン」のエピソードは辛いねぇ… 「アーンスト・ルンドグレーン」の行動は許せない!さすがに懲戒免職だろうなぁ。


このシリーズの醍醐味は、事件解決のサイドストーリーとして描かれるプライベートな描写、、、

「パトリック」が遂に「エリカ」に求婚、「アンナ」は「ルーカス」を殺してしまう… という場面で終わるプライベートも気になります。

続篇を読みたくなるような、巧い終わり方ですね。



以下、主な登場人物です。

「エリカ・ファルク」
 伝記作家

「パトリック・ヘードストルム」
 ターヌムスヘーデ警察署刑事

「マヤ」
 エリカとパトリックの娘
 
「シャロット・クリンガ」
 エリカの友人
 
「ニクラス・クリンガ」
 シャロットの夫、医師
 
「サーラ・クリンガ」
 シャロットとニクラスの娘
 
「リリアン・フローリン」
 シャロットの母親
 
「スティーグ・フローリン」
 リリアンの夫
 
「アーネ・アントンソン」
 ニクラスの父親
 
「アスタ・アントンソン」
 ニクラスの母親

「カイ・ヴィーバリ」
 元会社経営者
 
「モニカ・ヴィーバリ」
 カイの妻
 
「モルガン・ヴィーバリ」
 カイとモニカの息子
 
「フリーダ・カールグレーン」
 サーラの友人
 
「アンナ」
 エリカの妹、二児の母

「ルーカス・マックスウェル」
 アンナの元夫、トレーダー

「バッティル・メルバリ」
 ターヌムスヘーデ警察署署長
 
「マーティン・モリーン」
 ターヌムスヘーデ警察署刑事
 
「ユスタ・フリューガレ」
 ターヌムスヘーデ警察署刑事
 
「アーンスト・ルンドグレーン」
 ターヌムスヘーデ警察署刑事
 
「アンニカ・ヤンソン」
 ターヌムスヘーデ警察署事務官
 
「ダーン・カールソン」
 漁師、エリカの昔のボーイフレンド
 
「トード・ペーデシェン」
 イェーテボリ警察管区法医学室監察医