カミラ・レックバリ 『説教師』2010/07/27

スウェーデンのミステリー。
北欧って昔は明るいイメージしかなかったけれど、何か重苦しい閉塞感のあるところなんですね。昔お隣の(たぶん)デンマークに行った時、昼間から飲んでいる人たちがいてびっくりしたけれど、この本を呼んでいたらなるほどと思えてきました。北欧の小さな町も日本の田舎と同じです。


一作目は『氷姫』。この本はちょっと読みずらくて、作品の中に入っていくのが難しかったのですが、今回もそうでした。思うに、視点が細かくずれていくからかもしれません。

作家の伝記を書いているエリカは妊娠して仕事をお休みしています。
『氷姫』では友人の死因を探り活躍したのに、今回は妊娠のため大人しく、いいえ、退屈でイライラしながら家にいます。
笑っちゃったのが、彼女の親戚と知り合い。港町フィエルバッカにやってきて、見晴らしのいいエリカの家にずうずうしくも居座ろうとするのです。誘われたのならわかりますよ。全然親しくもないのに、やってくるところが信じられません。一日くらいなら我慢できます。でもそれ以上居座ろうとし、出て行って欲しいと言えずに悩むエリカには同情してしまいました。
しかし・・・、彼女も切れます。あまりにも躾の悪い子供に腹を立て、マカロニを母親の頭にぶちまけたのです。スカッとする場面です。
まあ、こんなようなことにしかエリカの活躍はありません。今回活躍するのが、前回の事件で再会し、私達の知らない間に付き合って結婚したエリカの夫、ターヌムスヘーデ警察署刑事のパトリック・ヘードストルムです。

洞窟で若い女性の全裸死体と2体の白骨死体が見つかります。この3体の死体に共通しているのが、死ぬ前に加えられた、何箇所にもわたる骨折痕です。
全裸死体はドイツから来て、キャンプ場に滞在していたタニャ、そして白骨死体は1970年代末に失踪したシーヴとモーナだということがわかりました。70年代に被疑者と考えられていたユハンネス・フルトは失踪事件の後すぐに自殺していました。

ヨハンネスは自由教会司祭で”説教師”と呼ばれていたエフライム・フルトの息子で、幼い頃、父親から兄のガブリエルと一緒に異言を口にし、病人を癒やさせられていました。後にエフライムは信者の夫人から遺産を相続し、”説教師”を辞めます。今は相続した屋敷にガブリエルの家族が住み、自殺したヨハンネスの家族はスクラップ置き場のような敷地の小さな小屋に住んでいます。
パトリックが捜査を行ないますが、どんな観点から捜査をしても、この一族に行き着きます。
殺された女性たちとフルト一族はどんな関係があるのでしょうか。
 
”説教師”というと、アメリカのテレビ説教師が有名ですね。アメリカやヨーロッパで”説教師”が受け入れられているのに、日本には”説教坊主”(と言えばいいのかしら?)がいませんね。親鸞などの時代にはたくさんいたのにね。

人間関係がゴチャゴチャしているし、次は誰が話しているのかわかるまでに時間がかかったりと面倒なので、途中で読むのを止めてしまう人がいそうです。慣れるとそうでもなくなるのですが。
ミステリーとしては、科学捜査がアメリカのミステリーに負けてます。

夫のDVに悩み、一度は夫の元を去ったエリカの妹アンナが、また夫と一緒に暮らし始めました。悲劇の予感がします。

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