浅田次郎 『蒼穹の昴』2010/07/12

中国の清朝末期を扱った歴史小説です。
実は私、他の本とごっちゃになっていて、モンゴルのチンギスハーンの小説だと勘違いをしていました。


主人公は二人。
一人は梁文秀。
郷紳の出で、兄がいるので、家を継ぐようにと言われていたのですが、兄より出来がよく、科挙を第一等「状元」で合格してしまいます。
「状元」とは全受験者の中で一番ということです。
彼は順調に出世をしていくのですが、時代の流れで、最後には日本に亡命することになります。
 
科挙についての記述を読むと、すごい試験だということがわかります。
何日もかけて試験を解くのです。頭だけではなく、体力も入ります。
試験を何回も受け、無駄に年を取り、なんと試験会場で死んでいく人もいたのです。
科挙に比べると、昔の受験地獄なんて、全然地獄ではありませんわね、笑。
 
もう一人の主人公は、梁文秀と義兄弟である李春雲。
彼は貧しい家に生まれ、糞拾いをして暮らしていました。
ある日、占い師の白太太が李春雲のことをかわいそうに思い、嘘のお告げを告げます。李春雲は、そのお告げを信じ、自らを去勢します。
幸運なことに元宦官たちと出会い、宦官になるために必要なことをすべて教えられ、紫禁城に入り西太后に使えることとなります。
李春雲は自分は所詮しがない糞拾いであるということを生涯忘れず、私利私欲に走らなかったため、西太后からは重んじられ、周りからも慕われるようになります。

この本では西太后が一人の生身の女性として書かれています。
彼女が残忍だとか嫉妬深いとか色々と言われていますが、実際は違ったようです。
梁文秀や李春雲は実在の人物ではないようですが、壮大な歴史小説です。 
清朝の終わりは、どうしようもない時代の流れなのだということがわかります。