野地秩嘉 『サービスの達人たち』2013/12/13

前に紹介した『サービスの裏方たち』の人が書いている本です。
こちらの本の方が人間の裏の世界に踏み込んでいる感じです。


サービス業に勤める人で達人と呼ばれている人がどのように仕事をしているかというハウツー物かなと思って読んでいたのですが、全く違いました。
出てくるのは普通の達人ではありません。
彼らの生き方が丹念に書かれています。
印象に残った人を紹介してみましょう。

ロールスロイスを年間20数台以上も売る男。
ともすれば金持ちの客ばかり相手をしていると勘違いをしてしまう輩がいるのに、彼は明確にお客と自分との間に一線を引いています。
私生活では若くで奥さんが亡くなっており、残された子供を育てています。
娘さんによるとお母さんはお父さんのことが大好きで、いつも「幸せ」といっていたそうです。いいですね。
こんなお母さんがいたら、今のように結婚しようと思わない若者が増えなかったでしょうね。

サントリー山崎蒸留所のチーフ・ブレンダーの輿水精一。
彼は「響」をブレンドした人です。飲んだことないけれど。
サントリーはスコットランドのボウモアにウイスキーの蒸留所を所有しているそうです。
その蒸留所の広報をしている人の言葉は、ウイスキーを飲まない私にもわかることです。

「ウイスキーはあくまで人間が造ったものだということが。ウイスキーはリフレクションなんだ。この島を反映し、この島の人々を反映し・・・」

ウイスキーは無くても生きていけるけれど、それでも人生をかける人がいるということはすばらしいことです。

電報を配達してもらったのはいつのことでしょうか?
記憶にないです。
今はお祝いの時に電報を贈るというのがあるぐらいですか。
電話が今ほど普及していなかった時は電報を使っていたようです。
でも、今でも役立つ時があったのです。あまりうれしくない時ですが。
災害の時です。
阪神・淡路大震災の時に電話線が破壊され、殺到した通話のためにライン容量がパンクし、通話不能状態が長く続きました。
その時、五十代以上の人たちが「見舞いや安否を気遣うために電報を打ち、電報配達員が被災地に駆けつけ、自らの危険もかえりみず、瓦礫を乗り越えて電報を届けていた」のです。
知りませんでした。
何故、このようなことをマスコミは報道しなかったのでしょうか。
あって欲しくないことですが、電話が不通になったら電報を試してみるのも一つの手なんだなということがわかってよかったです。

他にも魅力的な方々が出てきますので、目次を見ておもしろそうと思ったら読んでみてください。