夏川草介 『勿忘草の咲く町で~安曇野診療記~』2020/01/24



三年目の看護師の月岡三琴は松本市郊外にある梓川病院の内科病棟に勤めています。
内科へ研修期間を終えた研修医の桂正太郎がやってきます。
花の名前をよく知っている正太郎は生家が花屋、どこかひょうひょうとした不思議なキャラで、いつしか二人は付き合うようになります。
梓川病院、特に内科は高齢患者で溢れ、まるで介護施設のようです。
そのような状態でも患者のために真摯に取り組む二人がすがすがしいです。

昔なら亡くなっていた人が亡くならなくなり、地方の病院には高齢患者が溢れているといいます。
食べられなくなっても今は胃瘻があるから栄養が行き届いて、たとえ意識がなくても生き続けることになります。
「大量の高齢者たちをいかに生かすかではなく、いかに死なせるか」
これからの医療者はこのことを考えていかなければならないのです。
「死神の谷崎」のような存在も必要なのかも。
自分ならどうしてもらいたいか。自分の家族ならどうするか。
何かあったら考えるではなく、何かある前から考えておくことが大事ですね。

本の中にでてくる「花の美しさに気づかない者に、人の痛みはわからない」
痛烈な言葉です。
花だけではなく夕焼けでもいいし、何かの美しさを愛でる余裕がないのはいけないです。

『神様のカルテ』と同じようにシリーズになりそうです。
一止が現れるかと思ったら、ニアミスでした。残念。