柚月裕子 『暴虎の牙』2020/09/15

「弧狼の血」シリーズの完結編。


昭和57年、広島呉原。
愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦は、暴力の歯止めがきかず、ヤクザも恐れず、死ぬのさえ怖くないという奴。
ヤクザの父親から虐待を受けていたため、ヤクザに深い恨みを抱いており、そのため実の親さえも、何の躊躇もなく殺します。
彼は暴力団からカネとクスリを奪い資金にし、広島でのし上がろうとします。
広島北署二課暴力団係の大上章吾は沖に興味を持ち、彼の様子を探り、ヤクザと抗争をさせまいと、彼を刑務所へ送ります。

平成16年、沖は出所します。
暴対法のおかげで暴力団という存在は風前の灯火。なのに沖の感覚は昔のまま。
誰が彼を売ったのか、そいつを探り出し、落とし前をつけることにこだわります。
彼に危うさを感じた日岡は、彼の周辺を探ることにします。

ガミさん(大上刑事)の登場にはびっくりしました。
彼には彼独自の美学がありますね。
前の本の内容を全く覚えていないのですが、彼の悲しい過去と彼の死が描かれていたかしら?
もし描かれていなかったら、番外編として本を書いて欲しいです。

それにしても半グレはどうしようもないですね。
ヤクザのように仁義はないし、仲間さえ信じられず、ただ自分を爪弾きにしている社会に対する怒りしかないような感じです。
そういうのはダサいんですけど。

日岡は最後まで活躍できなかったですね。
半グレの淋しい最期。一体誰が?と思い、見直してしまいました。
エンディングはヤクザ物らしくキッタハッタで終わって欲しかったです(笑)。