アン・クリーヴス 『大鴉の啼く冬』2021/03/10

シェットランド諸島を舞台にした、ジミー・ペレス警部が活躍するミステリー・シリーズで全8巻。
5巻から7巻は電子書籍で発売されていたので読んでしまったので、1巻から4巻を取り寄せて読み始めました。
1巻から4巻をまとめて<シェットランド四重奏>と言うのだそうです。
翻訳者後書きによると、シェットランド諸島は「海岸線にはフィヨルドが重なり、一年じゅう吹き荒れる強風のために樹木や農作物がほとんど育たず、羊と海鳥にあふれた荒涼たる地」で、人口がわずか2万2千人。
「誰もが知り合いという濃密な人間関係故に、ちょっとした行き違いから、それまで無意識のうちに封印してきた怨嗟や嫉妬、そして欲望といった情念が噴出し、殺人へと至る」そうですが、これはシェットランド諸島特有というわけではなく、どんな小さな町でも起こりうることで、日本では古くは横溝正史の『八つ墓村』とか『犬神家の一族』なんかの世界ですね。
さて、どんな事件が起こるのでしょうか。


新年から五日目の朝、真っ赤なマフラーで首を絞められた少女の死体が見つかる。
少女はキャサリン・ロスといい、16歳でアンダーソン高校に通っていた。
母親の死後、学校の教師をしている父親と本土から越してきて、二人暮らしをしていた。父親は長患いだった妻の死をまだ乗り越えられず、娘に好きなようにさせていたようだ。
彼女を見つけたのは、フラン・ハンターで、彼女は遺体を見つける前日に、キャサリンがバスから降り、ヒルヘッドに住んでいる変った老人のマグナス・テイトと一緒に歩いて行くのを見たそうだ。

シェットランド署の警部・ジミー・ペレスはインヴァネスから捜査班が来る前に聞き取りを始める。
誰もがマグナスがやったと思っていた。
8年前にも同じような事件があった。
カトリオナという少女がいなくなり、彼女が最後に訪れたのがマグナスの家だったので、知的障害のある彼が怪しいと思われ、尋問するが、その時に警官が彼に暴力行為を行ったことと、証拠が見つからなかったため、彼は逮捕されなかった。
キャサリンの死がカトリオナの失踪と関係しているのか…。

そんなある日、フランが犬を連れて散歩している時に、泥炭に埋まっている子供の靴と洋服を見つける。
そこにいなくなったカトリオナが生きていた頃と同じ状態で埋まっていた。
マグナスは話を聞きに来たペレスにカトリオナのリボンを見せる。

キャサリンを殺したのはマグナスなのか?
ペレスは確信が持てず、関係者から話を聞き続けていく。
その中でキャサリンが映画を撮っていたことをつきとめるが、ビデオカメラもディスクも見当たらない。
彼女が撮っていたものと殺人に関係があるのではないかと思うペレス。

アップ・ヘリー・アーの日に、フランの娘のキャシーがいなくなる…。
(アップ・ヘリー・アー:1月最後の火曜日に行われるヨーロッパ最大のバイキングの火祭り)

ジミー・ペレスはフェア島出身。フェア島はシェットランド本島から郵便船で三時間もかかる地の果ての島です。(北ではなく南にポツンとある島です)
彼は祖先がスペイン人なので、黒髪、鉤鼻で、シェットランド人とはまるで違った風貌です。
12歳でラーウィック(シェットランド本島の大都市)で寄宿寮生活を始め、スコットランドのアバディーン警察に勤務し、離婚を機にシェットランド署にきました。
シェットランド人とはいえ、異質なタイプです。
彼の捜査方法は特別なものではありません。話をするだけです。
一見愚鈍に見えますが、彼は頭の中で色々と繋がりを考えていて、おかしいと思ったら質問をし、また考え、そのうち矛盾点を見つけだし、また質問し…。そうしているうちに犯人を突き止めるんです。誰でもペレス相手だと話してしまうんです。
人に話をしたくなるような雰囲気を持っているということは、ペレスの美点の一つですね。

私は誰もが互いに知っている閉ざされた土地に住むよりも、少しでもプライバシーが保てる大きな町に住む方がいいなと思いました、笑。

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