アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム 『三分間の空隙』2023/09/18

エーヴェルト・グレーンス警部シリーズの六作目


エル・スエコはコロンビアのゲリラ組織PRCの一員であるエル・メスティーソの警護をしている。
彼はスウェーデン人だが、アメリカの潜入捜査員で、コロンビアの麻薬組織を一網打尽にするために、アメリカのDEA(アメリカ麻薬取締局)の長官、スー・マスターソンに雇われ、PRCの情報をアメリカに提供している。

娘を麻薬により失った下院議長、ティモシー・D・クラウズはクラウズ・モデルを作り、NGA(アメリカ国家地理空間情報局)の偵察衛星から得た画像やNSAの通信傍受プログラムから得た盗聴データやドキュメント、DEA(麻薬取締局)の潜入活動によって得た内部情報などをアナリストたちに分析させ、機に乗じて、クラウズ部隊と呼ばれる現地の精鋭部隊にコカイン・キャンプを襲撃させていた。
ある日、クラウズはクラウズ部隊に護衛されながら元コカイン・キャンプを訪れるが、そこで奇襲に遭い、拉致されてしまう。

アメリカ政府は対テロ戦争を宣言し、PRCの権力者または危険人物として十三名を殺害対象者リストに載せた。
その中に、エル・スエコが入っていた。
マスターソンはエル・スエコがアメリカ側の潜入捜査員であることをあかし、彼をリストから外すように要請するが、ホワイトハウスの上層部は拒絶する。

スウェーデン警察のエリック・ウィルソンは自分が潜入捜査員に仕立て上げ、マスターソンに斡旋したエル・スエコが殺害対象者リストに載ったことを知り、愕然とする。
彼を助けるために行動するが、策が尽き、エーヴェルト・グレーンスにエル・スエコが生き延びられるように力を貸してくれるように頼みに行く。

前作の『三秒間の死角』のように潜入捜査員は見捨てられる運命なんでしょうか。
いい加減にして欲しいと思います。
コロンビアの麻薬組織の様子が鮮明に描かれていて、特に残酷な拷問場面が多く、読み進むのが困難になりました。
たとえ味方でも信用できないし、いつ裏切られて殺されるかわからないという状況は辛いですね。

『三秒間の死角』から趣が変わって、映画化できるアクション物になっています。
今回の主役もエーヴェルトではなくエル・スエコで、彼がどうやって生き延びていくのかが読みごたえがあります。

「俺はスウェーデンの警察官でもアメリカの警察官でもない。エーヴェルト・グレーンスだ。約束は守る」というエーヴェルト、カッコいいです。
愛する人が亡くなってからどうなるのかと思っていましたが、事件がある限り大丈夫そうです。

絶対に『三秒間の死角』を先に読んでから『三分間の空隙』を読んでくださいね。
そろそろ麻薬関係ではなくスウェーデンの社会問題を扱ったものが読みたいです。
次の『三時間の導線』はどうなのかしら?