ジル・ペイン・ウォルシュ 『ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』2023/11/04

ウィンダム図書館の奇妙な事件』に続く、イモージェン・クワイ・シリーズの第二弾。


イモージェン・クワイはセント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師。
親から受け継いだテラスハウスの部屋を学生に貸している。
その中の一人、伝記と自伝の関係をテーマに博士論文を書こうとしている大学院生のフランセス(フラン)・ヴリャンにイモージェンは家賃を下げて貸していた。というのもフランは一文無しで、カツカツの生活をしていたからだ。
今のままでは大学を続けられなくなったフランは指導教官のマヴェラック教授に相談する。
教授はフランにウェイマーク賞を受賞することになった数学者ギデオン・サマーフィールドの伝記の執筆を任せることにする。

前任者から引継いだ資料を整理するうちに、サマーフィールドの伝記を今まで三人の者が着手し、途中で投げ出していたことがわかる。
なんと三人のうち、二人は行方不明で、一人は病死していた。
彼らが執筆を止めたのはサマーフィールドの履歴のある時期を書いている時だった。

フランはその時期にサマーフィールドがウェールズにいたことを突きとめ、一人でウェールズに行く。
フランと連絡がつかなくなり、心配になったイモージェンはフランを追ってウェールズに向かう。

ウェールズでイモージェンは大変なめに遭うが…。

イモージェンの趣味のひとつがパッチワーク。
イギリスのパッチワークって長い歴史があり、奥が深いんですね。
本の中に出てくるパッチワークは複雑すぎて、私には想像もつきません。
一度でもいいから作ってみたいですけど、パッチワークのデザインって数学的な素養が必要なのかしら?

本の中でケンブリッジ大学における女性教育について書かれているのが目を引きました。
ケンブリッジ大学は1920年と1921年の二度、女性への学位授与を拒む決議をしました。1921年には男性学生たちが『女を入れるな!』とシュプレヒコールをあげたあと、ニューナム・カレッジ(1871年に女性カレッジの1つとして設立された。現在も女子大学)に押しかけて、構内の若い女性たちに卑猥な言葉を浴びせながら、盗んだ手押し車で門を打ち壊して押し入ろうとしたそうです。
そこにいた女性たちはさぞ怖かったでしょうね。
ケンブリッジ大学で女性の学位授与が認められたのが1948年で、オックスフォード大学は1920年。オックスフォードとの差異をみせつけたいがためなんですって。変な理由ですね。
ニューナム・カレッジより前の1869年に最初の女子大学として設立されたガートン・カレッジでは、女性がケンブリッジ大学の学位を取得することを許可されなかった時期に思いをはせるために、毎年一回ガウンを着ない晩餐会を開催しているそうです。

このシリーズは四巻まで出版されています。
次回では寄付金集めのためにセント・アガサ・カレッジは裕福なジュリアス・ファラン卿を食事に招きますが、ファラン卿が唐突に亡くなってしまい、イモージェンが大学の財政的危機を救うために犯人捜しをするようです。

ケンブリッジには一度行ったことがありますが、どこのカレッジに行ったのか覚えていません。
ニューナム・カレッジとガートン・カレッジには行かなかったはずなので、次回行くことがあったら行ってみたいです。