ラモーナ・エマーソン 『鑑識写真係リタとうるさい幽霊』 ― 2024/09/13

ナバホ族の遺留地で育ったリタ・トダチーニはニュー・メキシコ州アルバカーキ市警鑑識課の写真係をしている。
彼女には特殊な能力がある。幽霊が見え、話ができるのだ。
ナバホ族は死を強く怖れ、口にすることすら嫌う。そのためリタの能力はおおっぴらにはできなく、できるだけ霊には近寄らないようにしてきた。
しかし、仕事柄そうはいっていられないし、これが役立つこともある。
被害者の幽霊がリタに他の捜査官が見逃す手がかりを教えてくれ、リタは多くの事件を解決に導いてきたのだ。
ある日、高速道路の跨道橋から落下した女性の轢死現場を撮影していたリタの前に、その女性の幽霊が現れる。
彼女はアーマといい、自分は殺された、犯人を突きとめなければ生き地獄を味わわせてやるとリタを脅すだけではなく、しつこくつきまとうようになる。
仕方なくリタは独自に彼女の事件を調べることにする。
英語の題名『Shutter(シャッター)』が『鑑識写真係リタとうるさい幽霊』になりました。
原題よりも内容をよく表しています。
題名と表紙のイラストからコミカルなミステリなのかと思いましたが、違っていました。
この本では、リタの家族の歴史と彼女の生い立ち、そしていかにしてカメラと出会い、アルバカーキ市警に働くようになったかということと、リタが関わる事件が交互に描かれています。
そして本の半分以上がリタの過去とアルバカーキに起る事件現場に臨場するリタのことです。(グロい表現があるので注意してください)
アーマの事件はいつ調べるのかしらと思っていたら、半分以上たってからちょこっと調べてあっけなく終わった感じです。
事件よりもリタの素性の方が面白いからいいんですけどねww。
とにかくリタはわがままな幽霊のアーマには振り回されますが、リタの特殊能力を知っている祖母とまじない師のミスター・ビッツィリーがリタに会いに来て、お節介ではありますが、色々とアドバイスをしてくれます。
ナバホ族社会に溶け込めなかったリタでしたが、この二人がいてくれてよかったですね。
二人が次の事件でも登場してくれるといいなぁ。
作者のラモーナさんがナバホ族について詳しいのは何故かと思って調べてみたら、彼女はニュー・メキシコ州トハッチのディネ族出身で、現在アルバカーキに住んでいる作家兼映画制作者だそうです。
この本は三部作になる予定で、二作目の『Exposure(露出)』は今年の10月にアメリカで出版されるようです。日本では来年ですね。
次はニューメキシコ州ギャラップで起る貧しい先住民を狙った連続殺人事件。
犠牲者の幽霊が見える探偵が出てくるみたいですが、リタとどう関わるのでしょうかね。
小松亜由美 『イシュタムの手 法医学教授・上杉永久子』 ― 2024/09/14

東京都出身の南雲瞬平は秋田医科大学の博士課程で法医学教室に所属し、秋田の有毒植物を研究テーマにしている。
指導教官は自殺研究の第一人者、上杉永久子教授。
法医学教室にはもう一人、修士課程の臨床検査技師免許を持つ鈴屋玲奈がいる。
秋田県内で発見された異状死体の法医解剖は、全てここで行われる。
上杉の夫、秀世は大仙市大曲在住で歯科医院を開業している。秋田県警から頼まれて歯科鑑定を行うので、よく法医解剖室にやって来る。
「第一話 業火の棺」
二体の焼死体が持ち込まれる。昨日の夕方に火災が発生した民家の住人の夫妻だと思われる。夫が妻を殺害後、自宅に放火した無理心中事案であると思われたが、解剖してみると、二つの遺体の臓器に似たようなポリープがあった。
「第二話 胡乱な食卓」
一家の集団食中毒の疑いがあると秋田県警の熊谷から連絡がある。上杉は南雲を連れて現場に赴く。
家族三人中二人が亡くなり、このうちの一人は全裸で風呂場に、もう一人は居間に倒れていた。台所に倒れていた一人は中等症で病院搬送され、治療を受けていた。
吐瀉物を見て南雲はあることに気づく。
「第三話 子守唄は空に消える」
南雲は日本法医学会の全国集会が開催される仙台に行くため、秋田駅の改札口に向かっているときに、秀世に遭遇する。立ち話をしていると、仙台にいる上杉から電話が来る。生後二ヶ月の乳児の司法解剖が入り、秀世には口腔内鑑定を頼むという。大学に戻り、南雲と鈴屋は秀世から乳児の解剖について指導を受ける。
仙台から戻ってきた上杉の様子がおかしい。この乳児の父親と兄も上杉が司法解剖したという。
一週間後、マスコミがとんでもないことを報道する。
誰がマスコミにリークしたのか。そして乳児の死の真相は?
「第四話 出会いと別れの庭」
南雲が法医学を選んだきっかけとなる人物との出会いと別れ、そして上杉教授の過去が語られる。
「第五話 真夏の種子」
夜の夏祭りで集団食中毒が起り、四名が亡くなり、二名の症状も重く、予断を許さない状況だという。上杉と南雲は現場に赴く。
翌日、司法解剖が行われた。南雲は以前読んだ毒物関係の論文で、今回と似た事案があったのを思い出す。
題名の「イシュタム」は「マヤ神話で自殺を司り、死者を楽園に導く女神」で、上杉教授は南雲によると、「遺体の死因究明を使命とする教授は、死者やその周囲の人たちを救っている気がするので」『イシュタム』みたいなのだそうです。
上杉教授は「抜群の解剖技術と観察眼を持つ」人ですが、とにかく変わっていて、周りの人たちをはばかることなく振り回すのが玉に瑕ですね、笑。
それに甘い物がすごく好きで、大量にペロッと平らげ、とんでもなく苦いインスタントコーヒーを平気で飲んでいます。
そういえば「ドクターX」で手術の後に大門美知子がガムシロップをものすごい量、飲んでいましたね。
医師って手術をすると、甘い物が必要になるんでしょうかね。
南雲君の家族はみな医師で、彼の家族は彼が東京の大学の医学部に入れなくて、最低ランクの秋田の医学部に入ったということをバカにしています。
南雲君もそういう自分を恥じるところがあり、それが最初は嫌でした。
でも、だんだんと場数を踏むにつれ、彼も変わってきています。
秋田の人たちの暖かさに触れられて、彼にはよかったんじゃないですかぁ。
わたしは気にならなかったのですが、秋田弁がわかりずらいという人もいるかもしれませんが、ご愛敬ということで。
小松亜由美さんは秋田県出身で、臨床検査技師の免許を持っています。現在は某大学医学部法医学教室に所属し、解剖技官を務め、多くの異状死体の解剖に携わっているそうです。
前に読んだことのある『誰そ彼の殺人』がデビュー作で、この他に『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト』があります。
主人公を変えて書くよりは、シリーズ物にした方がいいように思いますが、如何でしょうか。
「印象派モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」@東京富士美術館 ― 2024/09/16
東京都美術館で開催しているのを見逃した展覧会が八王子の東京富士美術館でやっているのを見つけ、三連休にこれといって行くところがなかったので、行ってみました。

ウスター美術館は1898年にアメリカのマサチューセッツ州ウースターに開館しました。ウースターはボストンから車で約一時間、電車で約2時間ほどです。
所蔵品はローマのモザイク画やヨーロッパやアメリカの絵画、日本の版画、アメリカで二番目に多い武器や防具のコレクションなど約4万点ほどあるそうです。
<Chapter 1 伝統への挑戦>
19世紀になって、画家たちは農民の生活や田園風景を主題に選ぶようになる。

ジャン・パティスト=カミーユ・コロー
≪ヴィル=ダヴレーの牧歌的な場所ーー池畔の釣り人≫ 1865-70年

ウィンスロー・ホーマー ≪冬の海岸≫ 1892年
ほかにコンスタン・トロワイヨンやギュスター・クールベ、トマス・コールなどの絵があります。
<Chapter 2 パリと印象派の画家たち>
1874年パリで、のちに「印象派」と呼ばれる画家たちの初めての展覧会が開催される。

クロード・モネ ≪税関使の小屋・荒れた海≫ 1882年

ベルト・モリゾ ≪テラスにて≫ 1874年

ピエール=オーギュスト・ルノワール ≪アラブの女≫ 1882年

メアリー・カサット
≪裸の赤ん坊を抱くレーヌ・ルフェーヴル(母と子)≫ 1902-03年

ピエール=オーギュスト・ルノワール
≪闘牛士姿のアンブロワーズ・ヴォラール≫ 1917年

クロード・モネ ≪睡蓮≫ 1908年
このほかにルイ=ウジェーヌ・ブーダンやアルフレッド・シスレー、カミーユ・ピサロ、チャイルド・ハッサムの絵画が展示してあります。
モネの「睡蓮」はウスター美術館が世界で初めて購入した「睡蓮」の連作二点のうちの一点です。購入の際にやり取りされた手紙などが展示されていました。
<Chapter 3 国際的な広がり>
パリに留学した画家たちは新しい絵画の表現技法を母国へ持ち帰り、各地で独自に展開していく。

アンデシュ・レオナード・ソーン ≪オパール≫ 1891年
ソーンはスウェーデン出身の画家です。

ジョン・シンガー・サージェント ≪コルフ島のオレンジの木≫ 1909年頃
サージェントはフランスで美術教育を受けたアメリカの画家です。

黒田清輝 ≪落葉≫ 1891年
他に久米桂一郎や藤島武二、斎藤豊作、大田喜二郎、児島虎次郎、中沢弘光、山下新太郎の絵があります。
<Chapter 4 アメリカの印象派>
1880年代半場、アメリカの画商や収集家の間でヨーロッパの印象派が人気になってきた。そのため多くのアメリカ人画家がヨーロッパに留学し、印象派の様式を現地で学んだ。

ジョゼフ・H・グリーンウッド ≪リンゴ園≫ 1903年

ジョゼフ・H・グリーンウッド ≪雪どけ≫ 1918年

チャイルド・ハッサム ≪朝食室、冬の朝、ニューヨーク≫ 1911年
ウィリアム・メリット・チェイス、フランク・ウェストン・ベンソン、ジョン・ヘンリー・トワックマンなどのアメリカ人の画家の作品があります。
<Chapter 5 まだ見ぬ景色を求めて>
「フランスのポスト印象派は光への関心を継承しつつも自然主義を脱却」、ドイツでは「自らの内面の表出を重視する表現主義の芽生え」が見られ、アメリカでは、「トーナリズム(色調主義)の風景画が人気を博した」

ポール・セザンヌ ≪「カード遊びをする人々」のための習作≫ 1890-92年

ジョン・ヘンリー・トワックマン ≪急流、イエローストーン≫ 1890-99年頃
ポール・シニャック、ジョルジュ・ブラック、ロヴィス・コリントなどの作品があります。
普段見られない作品が展示されていた展覧会でした。
チケットは美術館で買うよりもネットで買った方が安いです。
この展覧会を見逃した方、9月29日までやっていますので、ちょっと遠いかもしれませんが、八王子まで足を伸ばして下さい。
もっと空いているかと思って行ったのに、結構混んでいたので、平日がお勧めです。
他に「大使館の美術展Ⅱ 文化交流随想 インドネシア大使館」、「アメリカン・フォトグラフス~近代写真の系譜」、「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」、「ジュエリー・コレクション」(皇后ジョセフィーヌのティアラ)、≪タヴォラ・ドーリア≫特別展示がありました。

ナポレオンの肖像画。

エディエンヌ=モーリス・ファルコネ ≪アモール≫ (18世紀)
他に現代の画家ではピエール=オーギュスト・ルノワール、クロード・モネ、イリヤ・レーピンなどの作品も展示されていました。
詳しくは美術館の展示中の収蔵品をご覧ください。
暑くてあまり歩かないせいか、また右膝の調子が悪くなり、一時間以上経つと傷みが出るようになりました。
そんなわけで、常設展示の方はいい加減に見てしまい、後でブリューゲルの作品を見ておくんだったと思いました。

カフェがなくなり、和室になっていて、インドネシアのものが置いてありました。
お昼になったので、レストランに行くと満席で、紙に名前を書いてからしばらく待たなければなりませんでした。

夫は鳥グリルレモンカレーとアイスコーヒーフロート、わたしはプレートランチが売り切れだったので、カルツォーネプレートとアイスコーヒーを頼みました。
アイスコーヒーはたっぷりの量で、わたしは飲みきれず。
夫のコーヒーフロートにのっていたアイスクリームがびっくりするぐらい多くて、わたしももらいました。
麻見和史 『無垢の傷痕 本所署<白と黒>の事件簿』 ― 2024/09/17
朝の九時頃、通りを歩いていると、さっき会ったばかりの柴犬が歩道に横たわって寝ていました。
どうしたのかと思ったら、そばにいた飼い主が、「起きなさい」と一生懸命言っています。暑くて歩くのが嫌になったのかもね。
飼い主さんには悪いけど、かわいい寝姿でしたwww。
さて、懸案事項だった眼科は前の病院に戻ることにしました。
戻れるかなと心配しながら電話をすると、大丈夫でした。
一生ものの病気(緑内障)ですから、病院に行くのが苦痛ではダメですよね。
心安らかに暮らしていけるように、ストレスをできるだけなくすようにしようと思います。病院に行くのもストレスですもの。
そうそう、眼科で視野検査をした後に、視能訓練士さんに「視野検査をするのがとても上手いですね。ひとつも押し間違えがありません」と感心されました。
わたしゲーム感覚で検査をしていますし、何十年もやってますものwww。

「白と黒」って何かと思ったら、大した意味がなかったです。
「白」こと警視庁本所署刑事課の刑事、白石雪乃は元看護師という異色の経歴を持つ。
「黒」こと同じく本所署刑事課の刑事、黒星達成は名前のコンプレックスから超ネガティブ思考の持ち主。
この「白と黒」がコンピになり、事件を捜査し、解決していくという内容です。
シリーズになるとは思いますが、まだ二作目は出ていません。
「星の傷痕」
墨田区江東橋の廃ビルで男性が倒れていると通報がある。この男性は二階から階段を転落して死亡したものと見られた。
遺体にはアスタリスクマークのような傷が三箇所つけられていた。
黒星は雪乃とコンビを組み、「鑑取り班」に所属して捜査を進めことになる。
「美神の傷痕」
墨田区錦糸一丁目で女性の遺体が見つかり、白黒コンビは現場に駆けつける。
被害者は首を絞められた後、薄刃の刃物で胸を傷つけられたようだ。
白黒コンビは被害者の夫で美容外科医の夫に話を聞きに行く。
「罪の傷痕」
大衆食堂に昼飯を食いに行った黒星は近くでアパートを経営している男性から相談を受ける。彼のアパートの男が行方不明だというのだ。
いっしょにアパートに行ってみると、内縁の妻に押し入れの段ボール箱に入っていたという凶器と書き置きを見せられる。
上司の三好班長から白黒コンビで調べるようにと指示される。
「嵐の傷痕」
雪乃は先月から何か個人的な悩みを抱えているようだ。黒星は自分でよければ相談に乗ると言ったが無視されている。
そんな時に交通課の仙道警部補から、東駒形一丁目の路上で起きた轢き逃げ事件を捜査してもらいたいと頼まれる。
被害者の弟が、兄が何かトラブルを抱えていて、それが原因で殺害されたのではないかと言っているというのだ。
白黒コンビ、また三好班長から無茶ぶりされる。
「火焰の傷痕」
本所一丁目、隅田川緑道公園で爆破が起った。白黒コンビはすぐに駆けつける。
二日で解決しろという三好にいいようにこき使われる。
防犯カメラに怪しい男が映っていたので本庁に問い合わせると、その男はかつての爆弾魔だということがわかる。アパートの中を調べ、関係者に聞き込みを行うが…。
黒星君、君はあまりにもネガティブ過ぎるよ。
そんなことではモテませんよ。アラ、セクハラになるかしら。
主に元看護師の雪乃さんの閃きで事件が解決しています。
短編なので、サクサクとお話が進んでいくのが小気味良いです。
軽く、直ぐ読めるミステリをお望みならどうぞ。
ジジ・パンディアン 『壁から死体?<秘密の階段建築社>の事件簿』 ― 2024/09/19

事故の責任を取らせられ、仕事を失ったイリュージョニストのテンペスト・ラージは、ラスヴェガスからサンフランシスコのヒドゥン・クリークに戻り、実家の工務店<秘密の階段建築社>を手伝うことになる。
<秘密の階段建築社>は、秘密の読書室やドアが隠された柱時計などだれもが一度は夢見た、巧妙な隠し部屋を造ることに特化した工務店だ。
テンペストの初仕事は築百年の屋敷、ナイト邸。
ところがキッチンの隣のパントリーの壁から布袋に入った死体が出てきた。
好奇心に負け、テンペストは袋の口を開けてなかをのぞいてみると、それは白骨死体でも腐乱死体でもなく、よく知った人物だった。
キャシディ・スパロウ。
テンペストそっくりの裏切り者のステージ・ダブル(替え玉)。
誰が死体をどうやって壁のなかに閉じ込めたのか?
なぜキャシディはヒドゥン・クリークに来たのか?
テンペストに会いに来たのか?
名門マジシャン一族でもあるラージ家には言い伝えられた呪いがある。
「一族の長子はマジックに殺される」
ラスヴェガス市警はキャシディのボーイフレンドのアイザック・シャープを逮捕する。
だがテンペストは彼がやったのではないと確信していた。
ほんとうの狙いは自分ではないかとテンペストは思った。
テンペストは旧友のミステリ好きアイヴィの助けを借り、トリック(策略)を解こうと考える。
そんな時にテンペストは五年前に失踪した母の幽霊を見る。
五代前まで遡る名門マジシャン一族でもあるラージ家は、インド系アメリカ人。
なんとも魅力的な家族です。
祖父のアッシュは元医師で今はみんなの料理人。彼の作ったワダ・ドーナツとか食べてみたい(涎)。
祖母のモーはスコットランドで生まれ育った音楽家で美術家。
父のダリウスは隠し部屋を造る工務店を経営。
亡くなった叔母のエルスペスと行方不明の母、エマが元イリュージョニスト。
ペットのアブラカダブラは人を見る目が鋭い灰色の巨大なウサギ。
家族は鍵穴のない赤い玄関のあるツリーハウスと<フィドル弾きの阿房宮>と呼ばれている家に住んでいます。
これだけでわたしなんかは魅了されてしまいます。
テンペストはプリンセス天功みたいなもんですかね。
イリュージョンってどんなもんか、一度は見てみたいです。
ラスヴェガスまで行かなければ見られないかしら。
島田荘司の『占星術殺人事件』が密室トリックを扱っているミステリのひとつとして出てきました。海外でも有名なんですね。
Wikipediaをみると、2014年1月にイギリスのガーディアン紙で「世界の密室ミステリーベスト10」の第二位に選ばれているんですって。知りませんでした。
そのうち読んでみます。
他にもミステリに関する蘊蓄とか色々と出てきますので、そういうのが好きな方は読んでみてもいいかも。
しかし、本格的ミステリではなく、コージーミステリ的味付けがありますので、気をつけてくださいね。
<秘密の階段建築社>シリーズは三巻まで出版されていて、来年四巻が出版されるようです。
二巻目の「The Raven Thief」は降霊会で起ったミステリ作家の殺人事件で、どうもテンペストはイリュージョニストに戻らないようです。
アンソニー・ホロヴィッツ 『死はすぐそばに』 ― 2024/09/20
<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズの第五弾。
今回は趣が変わって、ホーソーンとホロヴィッツがいっしょに事件の調査をしません。
ホロヴィッツの代わりにホーソーンの助手を務めるのが元刑事ジョン・ダドリー。
というのも事件は五年前の2014年に起きたので、まだホーソーンとホロヴィッツは出会っていなかったのです。
そのため本書はホーソーンが提供した資料をもとに、ホロヴィッツが書いた三人称視点の過去の記述と、ホロヴィッツ自らの取材過程を一人称で語る現在の記述が交互に描かれています。

ロンドンのテムズ川沿いの閑静な高級住宅地リヴァービュー・クロースで、ベッジファンド・マネージャーをしているジャイルズ・ケンワージーがクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。
この殺人事件を担当することになったカーン警視は面倒な事件だと思い、部下の提案を受け入れ、ホーソーンを外部顧問として呼ぶことにする。
リヴァービュー・クロースには六軒の住宅があり、門と塀で外部と隔てられている。住んでいるのは以下の住民。
≪森の家≫にはスター御用達の歯科医、ロデリック・ブラウンと病に伏せっている妻のフェリシティ。
≪切妻の家≫には元修道女で書店経営者のメイ・ウィンズロウと同居人のフィリス・ムーア。
≪井戸の家≫には引退した法廷弁護士のアンドリュー・ペニントン
≪厩舎≫にはチェスの名手、アダム・シュトラウスと妻のテリ。
≪庭師の小屋≫には家庭医のトム・ベレスフォードと宝飾デザイナーの妻のジェマ、そして双子の娘。
≪リヴァービュー館≫には殺されたジャイルズ・ケンワージーと元客室乗務員だった妻のリンダ、そして二人の子どもたち。
この他に女性の庭師とベレスフォード家の子守、ハンプトン・ウィックに暮らす老婦人の面倒をみているオーストラリア人女性がいる。
六つの家族が穏やかに暮らしていたのに、ケンワージー一家が越してきた時から様子が変わる。
騒音、度重なるパーティ、やんちゃな子どもたち、私道の独占、井戸で死んだ犬、壊れたチェスの駒etc. そして、プール建設計画。
住民達は我慢に我慢を重ねてきて、最後に話し合いを持とうとしたにもかかわらず、ジャイルズは現れず、住民の怒りは最高潮に達する。
そんな中で殺人が起った。
住民の誰もが殺害動機を持っている。
ホーソーンは果たして犯人を捕まえることができるのだろうか。
読むたびに思うのですが、2010年代に起った事件のようには思えません。わざとそう見えるようにしているのでしょうか。
クリスティやらポワロがいる時代に起った事件のようです。
イギリスにはまだそういう感じが残っているのかもしれませんね。
ホロヴィッツってパソコン使えるのかなぁ?
だんだんと暴かれていく住民たちの過去には驚きます。どんな人にも隠していることがあるんですね。
残念なのは、後の方で犯人が明らかにされてしまうことと、気持ちのいい終わり方ではないというところです。
時間が過去から現在に変わるところも、話が途切れてしまうので、あまり好きではありません。
このシリーズはあまりわたしとは合わないのかもしれません。
それでもホーソーンのことがわかるまで、読んで行きますけどww。
シリーズの本を載せておきます。
①『メインテーマは殺人』(2019年9月)
②『その裁きは死』(2020年9月)
③『殺しへのライン』(2022年9月)
④『ナイフをひねれば』(2023年9月)
⑤『死はすぐそばに』(2024年9月)
だいたい年に一冊、翻訳されているようですが、今のところ新刊が出版されていないようなので、来年は<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズは読めないかもしれませんね。
シリーズとしては10巻まで出版される予定らしいです。
大井埠頭中央海浜公園なぎさの森から京浜運河緑道公園を歩く ― 2024/09/21
パパが大井埠頭の近くで飛行機を沢山見たと言ったので、犬を連れて行ってみることにしました。
大井埠頭中央海浜公園にはなぎさの森とスポーツの森があります。
スポーツの森にはテニスコートや陸上競技場、野球場、ホッケー競技場の他にドッグランもあるみたいです。うちのわんこたちは他の犬が苦手なので、ドッグランは使いません。
なぎさの森に行ってみることにしました。

ちゃんと前を向いて信号が変わるのを待つ兄とパパかママが気になる弟。

森らしき雰囲気です。

彫刻広場。野原があるようですが、今日は行きません。

久しぶりの公園が嬉しそうな兄。

釣りをしている人がいました。何が釣れるのでしょうね。

運河沿いを歩きましょう。

兄は嬉しくて駆けようとしますが、膝が心配なので、駆けないようにさせます。

一度水を飲んだ弟が兄を押しのけて、また水を飲もうとします。

兄はおやつを狙っているのかな?
ゴメン。ママ、寝坊しちゃって、おやつを持ってくるのを忘れてしまいました。
「ママはつかえません」by ワンコズ

後ろからママが行くと、弟が立ち止まってママを待ちます。

一色邦彦の「碧翔」というモニュメントがあります。
しばらく歩くと、勝島橋があり、橋を渡ると京浜運河緑道公園になります。

アラ、弟が歩くのを拒否して座り込みました。
イギリス産の犬は暑さに弱いですねぇ。
兄がママに抱かれているので、弟も抱かれたいのかな。

階段を降りて、運が沿いの道を歩きましょう。

空がいつもと違います。秋の空でしょうか。
この道をまっすぐいくと、飛行機が飛んでいるのが見られるそうです。
ママはちょっと疲れてきました。
スリングを忘れたので、兄を抱いていると暑くて大変なんです。
わんこは人間よりも体温が高いんですよ。
ママはわんこのおやつだけではなく、人間用の飲み物も持ってくるのを忘れてしまいました。
喉が渇いてきたので、そろそろ帰りましょうか。

かもめ橋。

再度、なぎさの森に。

反対側から見たかもめ橋。

パパと弟を見る兄。

前方に何かを発見。

アオサギと二羽の子どもでしょうか。

私たちが近寄ると飛んで逃げていきます。

我々は怪しいもんではありませんよ。

とうとう飛び立って、向こう岸まで行ってしまいました。

一時間ちょっとお散歩したところで、ママの膝が痛んできました。
これくらいがちょうど良いようですww。
トイレの前に自販機があったので、お茶を買って飲みました。
熱中症にならなくて良かったです。
これからはどんな時にも飲み物を忘れないようにしなくてはね。
もっと涼しくなったら、お弁当やおやつを持って来て、ベンチに座って飛行機をじっくり見たいものです。
わんこたちは暑かっただけで、それほど歩いていないので、家に帰るとすぐには寝ません。
お年のわりに元気なようです。
ママパパの方が疲れましたわwww。
今野敏 『わが名はオズヌ』&『ボーダーライト 神奈川県警少年捜査課』 ― 2024/09/22

神奈川県警少年捜査課シリーズの一作目。
神奈川県警生活安全部少年捜査課に所属する私服警官の高尾勇はコンビを組んでいる丸木正太と共に県立南浜高校を訪れる。
南浜高校は新興住宅地に隣接して作られた創立十周年を迎えたばかりの高校で、荒れ果てているので廃校にして宅地にしようという計画が持ち上がっていた。
校舎の前では堂々と三人の生徒が煙草を吸っている。
高尾が注意すると悪態をつき、ナイフを出して襲ってくる。
高尾はそんなことに慣れているので、サッサと片を付ける。
高尾が校長に会いに来たのには理由があった。
警視庁からこの学校の、名前が「オズヌ」と「ゴキ」という生徒のことを調べて欲しいという要請が来たからだ。
校長は生徒に会わせるのを拒否するが、名前は教えてくれ、担任に会わせてくれる。
担任は水越陽子という恐ろしいくらいの美女。
生徒の名は賀茂晶といい、自殺未遂後から自ら「オズヌ」と名乗り始めたと言う。
教頭も校長も水越も賀茂を恐れているようだ。
南浜高校はどこかおかしいと感じる高尾。
高尾たちが高校から帰ろうとすると、先ほどの生徒が総勢三十人を引き連れ、お礼参りに来る。
高尾はその中に暴走族のヘッドで神奈川県でちょっとした有名人の赤岩猛雄がいることに気づく。
すると、一人の少年が赤岩のことを「後鬼(ゴキ)」と呼んだ。
その少年が賀茂晶ことオズヌだった。
彼は自分を役小角(えんのおづぬ)の生まれ変わりだという。
オズヌは高尾が三人に手を出した理由を訊いてくる。
南浜高校からかろうじて脱出した高尾は、丸木に「役小角」について調べるように指示する。
高尾がオズヌと会ってからおかしなことが続く。
課長がオズヌと名乗る少年について調査しなくていい、すべて忘れろと言い出す。
神奈川県の暴走族の相州連合が集会を開いて、全神連との抗争に終止符を打つ。
そして、南浜高校で、生徒が正門にバリケードを作り学校を占拠する。

神奈川県警少年捜査課シリーズの二作目。
高尾は組対本部長から呼び出される。
赤岩猛雄が薬物の取り引き現場で検挙され、高尾の名前を出したというのだ。
赤岩に会いにみなとみらい署の暴力犯対策係へ行ってみると、赤岩はかつての暴走族仲間のもとに薬が流れているので、取り引きを止めさせようとしたという。
同じ頃に南浜高校の教師、水越と賀茂晶(オズヌ)が会いたいと言ってくる。
オズヌは赤岩をなんとかしてくれと頼んできた。
高尾が赤岩のことに対処する代わりに、水越に赤岩がドラッグの取り引き現場にいた事情を調べさせることにする。
ところが本部の薬物銃器課が赤岩を逮捕すると言い出す。
高尾はみなとみらい署の暴力犯対策係の協力を得、薬物銃器課の刑事を追い返し、赤岩をライブハウスで匿ってもらうことにする。
神奈川県内では、刑法犯で逮捕や補導される少年の数が減少しつづけていたのに、何故か最近、少年犯罪が急増している。
高尾は犯罪とは関わりなさそうなタイプの、おとなしくて、目立たない子を、犯罪に駆り立てる何かが起っているような気がしていた。
彼らを取り調べるうちに、高尾は彼らの唯一の共通点が人気バンド、スカGのファンだということに気づく。
今野さんというと、隠蔽捜査シリーズが有名ですが、今回のシリーズはまったく違ったテイストです。
古代の霊能者、役小角の生まれ変わりが出てくるのですから。
賀茂といえば、ピンとくる人もいるでしょう。
「役小角って誰?」と思った方は一作目に詳しく書いてあるので読んでみて下さい。
役小角を使って小説をどういう風に展開しようとしているのか、わたしには全くわかりません。
作者なりの深い意図があるのでしょう。
警察小説ではないので、気をつけて読んで下さいね。
<今日のわんこ>
朝、雨が降っていて、お散歩にいけなかったので、昼間に風があり、涼しかったので、散歩に行ってみました。
でも、人間には涼しく感じても、犬はあまり涼しくなかったみたいです。

こういう風に舌を出しています。
弟は何故か何回も座ろうとしますが、歩かせました。

兄は相変わらず、カメラを向けると視線をそらしますが、前を向いているだけいいですね。
弟は家の中ではバッチリ、カメラ目線なのに、なんで外ではこうなのでしょうね。
連休明けから30度以下になるという天気予報が当たりますように。
エリカ・ルース・ノイバウアー 『豪華客船オリンピック号の殺人』 ― 2024/09/24
ジェーン・ヴンダリー・シリーズの三作目。

英国政府のエージェントであるレドヴァース・ディブルからの依頼で、ジェーンは夫婦のふりをして、豪華客船オリンピック号に乗り込む。
使命は船に乗り込んでいるドイツのスパイを見つけ出すということだ。
容疑者は三人。
まず最初にジェーンはハインズ・ナウマンという男と友好関係をきずくようにレドヴァースに言われる。
ところがジェーンは他のことにも首を突っ込んでしまう。
ある新婚カップルの夫が船から消えてしまったというのだ。
妻は騒いでいるのに、何故か船長はとりあおうとしない。
ジェーンは出港時に彼女と夫を見ていたので、つい口を出してしまう。
そのため隠密捜査と女性の夫捜しの二つの問題に関わることになってしまう。
一作目のエジプトから二作目のイギリスと来て、今回はアメリカへの航海中というように場所が移って行きますが、前にも言いましたが、全く旅行ミステリにはなっていません。
しいていうと1926年当時の豪華客船の様子がわかりますけど。
とにかく二回も殺人事件を解決したのでジェーンが自分の能力を信じすぎて、傲慢になっている姿がちょっと鼻につきます。
戦争で亡くなった夫がDV夫だったらしいのですが、当時の男性として彼が特別悪かったというわけではないように思えてきました。
デビュー作の『メナハウス・ホテルの殺人』でアガサ賞の最優秀デビュー長編賞を受賞したので翻訳されたのかもしれませんが、ミステリとしてというのではなく、豪華客船の旅がどんなものか知りたい方がいたら、読んでみて下さい。
シリーズの他の本を載せておきます。
①『メナハウス・ホテルの殺人』(2023年2月)
②『ウェッジフィールド館の殺人』(2023年7月)
③『豪華客船オリンピック号の殺人』
時代小説シリーズ(文庫本) ― 2024/09/25
やっと30度以下になりました。湿気が多いのが気になりますが、暑いよりいいです。
予報によると、今年の秋は短く、冬は冬らしい冬になるそうです。
予報が当たるといいですね。

横山起也 『編み物ざむらい三 迷い道騒動』
黒瀬感九郎のメリヤス内職の仕事は順調で、最近、とみに依頼の数が増えている。
半月後に『魚吉』の娘の真魚との祝言を神奈川宿で挙げることになっている。
そのため「仕組み」から手を引こうと思っていたのだが、感九郎はなかなか言い出せないでいた。
そんなときに、内職元締めから相談したいことがあると言われる。
横浜の方から感九郎を指名した、南蛮の着物を修繕して欲しいという仕事依頼の書面が来たとのこと。
工賃が破格な上に本場で編まれたメリヤス着物を見ることができるし、たまたま次の「仕組み」が横浜だということで、皆と一緒に感九郎は横浜へ行く。
依頼人はロジャー・スミスという米利堅人で、今度の「仕組み」に係わる人物だったので、仕方なく今回の仕組みに協力する感九郎。
二作目はちょっと残念でしたが、今回は感九郎の力が生かされています。
実は感九郎は不思議な力を持っています。人の傷ついた心のほつれや破れを直してしまうんです。今回直したのは、母が日本人で父が米利堅人の朝の心でした。
時代小説でありながら、それだけではない人の心の不思議さを描いた作品です。
シリーズの順番
①『編み物ざむらい』(2022年12月)
②『編み物ざむらい二 一つ目小僧騒動』(2023年12月)
③『編み物ざむらい三 迷い道騒動』(2024年8月)
平谷美樹 『貸し物屋お庸 謎解き帖 夏至の日の客』
お庸たちは弟の幸太郎の師匠・仁座右衛門が歩けなくなり、彼に桜を見せるために一肌脱ぎます。
今回お庸が解く謎は、炬燵に潜む猫の謎と夏至の日に借りにきたギヤマンの盃の謎、女郎が借りにきた三人の赤ん坊の謎、去年の夏から出る幽霊の謎の4つです。
湊屋清五郎への思いを封印したお庸は、始めの頃の口の悪さは影を潜めてしまい、おとなしめになっています。
そのためいいのか悪いのかわかりませんが、普通の人情味溢れる謎解き話になってしまいました。
シリーズの順番
③(『貸し物屋お庸 娘店主、捕物に出張る』 在庫なし)
⑤『貸し物屋お庸謎解き帖 桜と長持』(2022年5月)
⑥『貸し物屋お庸謎解き帖 百鬼夜行の宵』(2022年12月)
⑦『貸し物屋お庸謎解き帖 五本の蛇目』(2023年6月)
⑧『貸し物屋お庸謎解き帖 髪結の亭主』(2024年2月)
⑨『貸し物屋お庸謎解き帖 夏至の日の客』(2024年9月)
高田在子 『茶屋占い師がらん堂』、『茶屋占い師がらん堂 招き猫』、『茶屋占
い師がらん堂 異国の皿』
い師がらん堂 異国の皿』
すずは最福神社の門前にある茶屋「たまや」の娘。一年前の春、父が行方不明になってから身体の不調に悩まされるようになる。どんな医者にかかっても原因がわからない。最後の頼みと、評判の医者のところへ向かうが、途中で具合が悪くなる。そこに一条宇之助と名乗る占い師が通りかかり、助けてくれる。
実は彼は一流の占い師で、すずの不調の原因を突きとめてくれる。
これが縁となり、宇之助は「たまや」の一角で占い処がらん堂を開く。
宇之助は訪れた客の話を聞き、その後、花札の絵柄から将来を占っていく。
いつしか占い処に人が集まり始める。
占い師と言ってもただの占い師ではなく、どちらかといえば陰陽師に近い存在です。すずに憑いていたのは龍で、彼女の生気を吸っていたのです。宇之助は龍と、これまでの代償として、何物からもすずを守るという誓約を交します。
実を言えば、すずにもある力があったのです。それが宇之助と一緒に行動することにより、どうなっていくのか。そして、宇之助の過去が気になるシリーズです。
最近のコメント