西加奈子 『くもをさがす』 ― 2023/05/27

2021年、コロナ禍の中、カナダのバンクーバーで暮らしていた西さんは、足に大量の赤い斑点ができ、クリニックに電話をします。
写真を送ると帯状疱疹ではないかと言われ、対面の診察では蜘蛛か何かに噛まれたのではないかと言われます。
実はこの頃、西さんは胸のしこりが気になっていました。
思い切って医師にそのことを告げると、その場で三週間後の超音波検査とマンモグラフィ、そしてその一ヶ月半後の針生検を予約できました。
結果は浸潤性乳管がんでした。
たいていの人は言葉やシステムがわからない外国で治療を受けるよりも日本でと思うでしょうが、コロナ禍では戻るに戻れません。
西さんはカナダで治療を受けることになりますが、治療が軌道に乗るまで、様々な困難に遭遇します。
例えば、がんセンターから電話がかかってくると言われたのに、かかってこない。
吐き気止めの薬をいつ飲んだらいいのかわからない。
薬が薬局に届いていない。
白血球を増やす注射を自宅で自分で打たなければならない。
両方の乳房を切除したというのに、手術は日帰り。
しかし幸運なことに西さんには頼りになる知人と友人たちがいました。
看護婦たちは皆優しく、驚くほどのケアをしてくれました。
カナダでは看護師と患者は対等な関係です。
「カナコ。がん患者やからって、喜びを奪われるべきやない」
「あなたの体のボスは、あなたやねんから」
彼女たちはそう言って必要な時には手を差し伸べてくれます。
西さんも書いていますが、「日本では家族のことは家族だけでなんとかしないといけない、という考えが、私たちの心身にしみついている」ため、人に頼ることをよしとしません。
もし私ががんになったら、たぶん人には頼らずに、家族だけで頑張るでしょう。
家族には仕事があるからと、一人で病院まで行って検査や治療に耐えるでしょう。
ご飯のことなんかできそうもないから、コンビニ弁当にでもなるのだろうなぁ…etc.。
でも西さんの場合は違いました。
電話で埒が明かない時は知人が代わりに電話をしてくれました。
Meal Trainというものがあり、西さんのがんがわかってから手術を終えた後まで、半年も友人たちが毎日順番にご飯を届けてくれました。
病院に行くときには、付き添ってくれる人がいました。
カナダで皆西さんのようなサポートが得られるわけではないでしょうね。
「私は人に頼るのが得意な方だ」といえる彼女のような人だからこそ医師や看護師などと温かい交流ができ、友人たちからのサポートが得られたんじゃないかしら。
人に頼れない私じゃダメだわねぇ…。
この本は闘病記ではありますが、日本とカナダの文化論でもあります。
「日本人には情があり、カナダ人には愛がある」
と西さんは書いています。どちらがいい、悪いではないですが、カナダに暮らすとストレスが少ないかもしれませんね。
実は私、関西弁があまり好きではないのですが、西さんの書いているカナダ人医療従事者たちの関西弁には愛を感じました。(もちろんカナダ人が関西弁を話すわけがないですが)
実際は大変だったのでしょうが、書いてあるように、何事もよい面を見て、前向きに、パワフルに、明るく生きて行けたらいいなぁと思いました。
西さん、お体に気をつけて、執筆を続けて下さいね。
そうそうタイレノールってそんなに万能な薬なのでしょうか?
カナダ人、飲み過ぎよ、笑。
<今日のわんこ>

パパが部屋の移動を始めたので、わんこたちは興味津々で見ていました。

とにかく物が多すぎです。
断捨離をしなければ…。
村上春樹 『騎士団長殺し』 ― 2023/05/24
『騎士団長殺し』は『騎士団長殺し<第1部>顕れるイデア編』と『騎士団長殺し <第2部>遷ろうメタファー編』の各上下二巻からなるお話です。
村上春樹は学生時代から読み続けていますが、『IQ84』以降は文庫本になったら読もうかという感じになっています。
新作の『街とその不確かな壁』を図書館で予約をしようかとも思ったのですが止めて、この本をkindleで読むことにしました
村上春樹は村上春樹のままでした。

「私」は36歳の画家で、肖像画を描いて生計を立てていた。
ある日、妻のユズから離婚したいと言われる。男がいるというのだ。
ショックを受けた私は、ユズに家を引き渡し、車で北海道と東北地方を放浪する。
途中で車が動かなくなってしまい、二ヶ月ぶりに東京に戻った私は、二度と肖像画を描かないと決める。
美大時代からの友人の雨田政彦から彼の父親が住んでいた小田原の山中にある家を借り、住むことにする。
雨田の父、雨田具彦は著名な画家で、始めはモダニズム絵画を指向し、ウィーンまで留学したが、帰国後唐突に日本画に転向していた。
ずっとこの家で仕事をし、十年前に妻が亡くなってからはひとりでここにこもって暮らしていたが、認知症が進み療養所に入ったという。
越してきて数ヶ月経った頃に、私はアトリエの屋根裏部屋で雨田具彦の未発表の絵を見つける。
その絵は『騎士団長殺し』と題されていて、私はその絵には何か特別なものがあると感じる。
夏が終わろうという頃に、エージェントから電話が来る。
もう一度だけ、肖像画を描いてみないかというのだ。
その話は報酬が法外によく、対面で描いてもらいたいという要望だった。
肖像画の依頼主は私の家のテラスから見える瀟洒な邸宅に住み、銀色のジャガーに乗る、白髪の免色渉という男だった。
私は免色は私に何を求め、何の目的で肖像画を描くように依頼してきたのだろうかと疑問を感じる。
そんな頃、真夜中に目を覚ました私は不思議な鈴の音を聞く。
その音は祠の裏に積まれている石の隙間から漏れ聞こえているようだ。
モデルをしに来た免色にその音の話をすると、彼は夜中にまた来るという。
その夜、やって来た免色は私に十三年前の出来事を話す。
その話が終わった頃に、鈴の音が聞こえてくる。
免色は費用は自分が出すから、知り合いの造園業者に依頼して、重機で石をどかし、掘り返してもらおうという。
やってみると、敷石のしたに石室のような穴があり、底に鈴が置かれていた。
ある夜、私が目覚めると、鈴が鳴っていた。
鈴の音はスタジオから聞こえていた。
スタジオに行くと、そこは無人で、鈴は棚の上にある。
しかし、居間のソファの上に、身長が六十センチばかりの白い奇妙な衣服をまとった、具彦が絵の中で描いた騎士団長がいた。
彼は自分のことを「イデア」だという…。
騎士団長の登場から物語は動いていきます。
とにかく第一部ではなかなか村上春樹の世界に入り込めなくて、読みにくく、字面だけ追っている感じでした。
第二部の冒険が始まると、読むスピードが上がりました。
でも、いったい彼は何を書きたかったのか、私の理解力が足りなくて、全くわかりませんでした。
意味のない(あるか?)セックス描写に辟易しましたし、自分の胸が膨らむかどうか気にしている少女が謎でした。
オペラの『ドン・ジョバンニ』は見たことがないので、見てみたら少しはわかるようになるかな?
気にいった言葉をあげておきます。
「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない」
「でも少なくとも何かを信じることはできる」
村上春樹が好きな方は読んでもいいでしょうが、そうでもない人は止めておきましょう。
初期の作品を先に読んだ方がいいと思いますよ。というか、私は初期の作品の方が好きです。

「ママちゃん、ぼく、穴の中が好きです」
ヨーキーはネズミ捕りなので、穴の中にもぐるのが大好きです。
いつでもどこでももぐろうとします。
タオルや座布団、クッションなどがあると、すぐに下にもぐります。
一色さゆり 『カンヴァスの恋人たち』 ― 2023/05/22

学芸員の貴山史絵は、以前は都内の美術館に勤めていたが、契約が切れたため、今は碧波市にある白石美術館に非常勤職員として勤めている。
白石美術館は「女性が輝く社会をつくる」が理念の、コスメブランドを展開し、健康食品なども販売している白石グループが運営している。
ある日、史絵はシングルマザーで学芸課の課長の楠木美和子から80歳の女性画家、ヨシダカオルの展覧会を担当してほしいと言われる。
ヨシダは美術業界から一線を退いたあと、山奥のアトリエでひとり絵を描き続けていた。
その頃、史絵は恋人の天野雄介との将来に悩んでいた。
彼は常勤の学芸員として都内の東京西洋美術館で働いており、いつも史絵が彼に会いに東京まで行っていた。
この前会った時に、世田谷のシブヤ美術館で学芸員の募集があることを教えてくれたが、それは五年契約で契約更新はない非常勤職員の口だった。
雄介は五年もあれば都内のどこかで常勤の募集が出るし、史絵ぐらい優秀だったら引き抜きだってありうるかもしれないと無責任なことを言う。
その上、史絵が東京に戻ってくれば、結婚も出来ると言う。
史絵が白石美術館で働き続け、週末婚をするなどという考えはないようだ。
そんな頃、子宮内膜症が見つかる。
史絵は結婚するか、子どもをどうするかで悩む。
仕事のためヨシダに会いに行き、交流するうちに、だんだんと史絵はヨシダの不思議な魅力と、ひとり筆を握り続ける生き方に魅了されていく。
ヨシダは戦後の女性画家として名をはせたにもかかわらず、なぜ表舞台から消えてしまったのか。
再び絵を描き始めるまでの空白の10年間に何があったのか。
不思議に思う史絵にヨシダが語ったことは…。
史絵はヨシダと会い続けるうちに、こう思うようになります。
「今こそ、彼女の作品に救われる人がいるんじゃないか。少なくとも自分は救われた。病気がわかって、いろんな制約が生まれて、いったい誰のための身体なのだろうと考えることが増えた。ヨシダと話すと、自分は自分なんだ、自分のために生きればいいのだ、と勇気づけられる。結婚とか出産とか、そんな外枠でがんじがらめになり、本来の心が見えなくなっていた自分に、今のままでいいのだと、ヨシダの絵は教えてくれる。ただ純粋に、誰かを好きだから、誰かが大切だから、一緒にいたいと思ってもいいのだ、と」
まだまだ女性が生きにくい世の中ですが、一色さんが書いているように、「あなたのままで大丈夫」だと言われると、心が軽くなりますよね。
20~30代の女性に読んでもらいたい本です。
今野敏 『署長シンドローム』 ― 2023/05/21
週末は犬たちを連れて石神井公園まで行ってきました。

午前中だったのにもかかわらず、石神井池にはボートが沢山浮かんでいます。
池沿いの道を散歩する犬も沢山います。
野生犬の兄は臭いを嗅ぐのに夢中になり、通り過ぎる犬たちに見向きもしません。
雨の後なので、芝生に座るのを止めて野外ステージのところに座ることにしました。

23区内の公園は人が多いですね。
写真を撮った後から人がやって来て、ベンチがほぼ人で埋まりました。

相変わらず弟はこういう場所に慣れないみたいで、せわしなく動き回り、落ち着きがありません。

兄は膝の上に乗ると、すぐに寝そべり、まったりします。
草地広場が狭くて、人が多いので、兄は思いっきり走り回れなくてちょっと残念だったようです。
犬を連れて行くには多摩地域の公園の方が良さそうです。

『隠蔽捜査9.5』で竜崎伸也が大森署から神奈川県警刑事部長に異動した後に新署長として赴任してきたのが、40歳のキャリア警視正・藍本小百合。
彼女と竜崎が組んだ事件かと思ったら、竜崎なき後の大森署の騒動でした。
とにかく藍本署長の美貌はすごいんです。
副署長の貝沼曰く。
「藍本署長の美貌は、そうしたモラルとかコンプライアンスを超越している。
例えば、上の方針に批判的な署員が、署長に会ったとたんに、反抗する気をなくしてしまうのだ。
外からやってきて、署長に会った者たちは、必ずもう一度会いたがる。その傾向は、幹部に顕著だ」
幹部のみなさん、お暇なんですね。
ある日、組織犯罪対策部長の安西正が大森署にやって来て、羽田沖の海上で武器と麻薬の密輸取引が行われるという情報が入ったので、前線本部を大森署に作りたいと言い出します。
羽田沖に近いのは空港署なのに、妙に大森署にこだわります。
それほど藍本署長の顔を見ていたいんですね、笑。
本部の態勢は、組対部と外事二課、警備部の特殊部隊などで総勢百人(?)。
ついでに船を持っている臨海署に応援を頼み、海上保安庁と連携を取ることになります。
そんなところに厚労省の麻薬取締部までやって来ます。
いったいどうなるんだか…。
藍本は捜査経験はじぶんよりずっと豊富だからと、貝沼に前線本部を任せて所長室に戻ってしまいます。
貝沼も大変ですねぇ。
藍本のいいところは、自分の美貌が他に与える影響を知ってか知らずかわかりませんが、美貌を鼻にかけていないことです。
計略家なのかどうかこれまたわかりませんが、どこか天然のところがあります。
それが嫌みじゃないんです。
警察って前例主義で、上意下達が原則ですが、藍本はそんなことを気にせず無視し、シンプルに采配を振るっていき、それが今回は上手く行きます。
彼女に次々と懐柔され、骨抜きになっていく幹部たちの姿が面白いです。
それにしても竜崎にあれだけ嫌がらせをしていた奴らがねぇ。
でもねぇ、そんなにすごい美貌の女性っていますか。(心の声が言ってます)
夫は、本を読んでいませんが、北川景子か菜々緒だと言ってます。
ドラマにするなら誰がいいかしら?
コメディタッチのお話で、すべては大森署内で起るって感じです。
ミステリだと思って読まないで下さい。
男性向きですね。
私的にはあまり好みではなかったです(ゴメン)。
<今週のおやつ>

かわいいひつじ組のクッキーです。
二列目からのクッキーにアイシングがかかっていないのが残念。
トリミングに行く♫ ― 2023/05/20
小雨の中、トリミングに行ってきました。
わんこたちは歩いていったので、お腹のところがちょっと濡れていました。

紫陽花がだんだんと咲いてきています。
病院に着くと、病院のマスコットの黒猫さんが飛び出てきました。
この黒猫さんは人懐っこくて、この前私のところに来たので、撫でてやりました。
それを覚えていたのかな?
遠慮なく撫で回しました。猫も飼いたいわぁ。
普通の猫は兄が近付くとうなってひっかこうとするのですが、黒猫さんは何もしません。穏やかな猫さんです。

トリミングの後、兄がご機嫌ななめでした。
お散歩中のわんこたちに吠えまくりました。
最後に抱いているママの顔までかじりました。
途中からパパに抱いてもらったら、その後一匹もわんこに会いませんでした、笑。
弟の爪は硬くて、ママの腕に爪痕が残るので、いつも兄の方を抱いています。
今日は半袖を着ていて、途中から弟を抱いたので、腕に赤く爪痕が残っています。
痛かったわ、顔も腕もww。
家に帰ると、お決まりの撮影会です。

機嫌が悪そうな兄ですが、おやつを見るとしぶしぶとお座りをします。

目が怖いです。
脚と尻尾がふわふわです。

おやつを見て、少しは機嫌が直ったかな?

そういえば弟の機嫌の悪い顔を見たことがないです。
顔のタテガミがだんだんと長くなっていますね。

弟は相変わらず兄のそばに寄ろうとしません。
今日は特に兄の機嫌が悪いので、嫌そうです。
兄が怒るので、弟を動かして近づけます。

ちょろっと舌を出し、愛嬌のある弟です。

最後はフセで。
体重は兄、3.4㎏で弟、3.2㎏。
この前のお泊まりから増えていないようです。
わんこの寝相 ― 2023/05/18
暑くなると楽しみなのが、兄犬の寝相です。
昨夜、こんな感じで寝ていました、笑。

いつもは丸まって寝ているのですが、頭が落ちてます。
お腹が熱いんでしょうか。
ママのベッドの上にわんこのベッドを置き、寝せると、こんな感じです。

ママの布団の半分を使って寝ています。迷惑なんですけどぉ、笑。
昨夜と同じように頭が落ちるのは何故かしら?
医学生と医師が主人公の三冊 ― 2023/05/17

中山祐次郎 『悩め医学生 泣くな研修医5』
雨野隆治は薩摩大学の医学部に入学した。
入学式で学長が言っただいたい毎年10名が医師国家試験に不合格になり、次の年に受験しても合格率は約50%で、一割が医者になれないという現実に衝撃を受ける。
雨野は同じ高校の一年下の伊佐と入学式の時に宣誓をした指宿真子と同じ班になり、解剖や病院実習をすることになる。
現役の医師が書いたシリーズなので、リアルな医学生の姿が描かれています。
解剖学の田村教授の言葉がいいです。
「諸君らはこれから医師として厳しい修業を積まねばならぬ。その修業の中でも最も重要なことは、知識でも技術でもなく、精神の鍛錬である。言い換えるならば、人間としての胆力を鍛えることである」
「諸君らはこれから医師になる。医師は選ばれしエリートである。であるからして、当然、人々が味わうことのない苦しみもまた引き受けることになる。これを高貴な者の義務(ノーブレス・オブリージュ)、という」
医学生は悩みながらも厳しい試練を乗り越え、仲間と切磋琢磨し合い、患者に教えられながら、一人前の医師となっていきます。
それなのに、世の中には患者の気持ちに添えない医師が結構多いと思うのは私だけ?
午鳥志季 『君は医者になれない 膠原病内科医・漆原光莉と血嫌い医学生』
医学生の戸島光一郎は血が苦手だ。
医者には向いていないと言われ続けているが、医者になることは彼の夢。
医師免許を手に入れるために日々努力しているが、血をみると、嘔気がし、その果てに気絶してしまい、周りに呆れられている。
もちろん解剖なんてダメ。
でも「解剖学」の単位を取らないと進級できない。
留年しそうな学生の面談の時に医学部学部長に留年回避の直訴をすると、補講による救済措置という形なら認めてもいいと言われる。
その措置とは、外来の総括で膠原病内科医・漆原光莉に医師としての適性を認められたら、進級を許可するというものだった。
漆原医師は院内でも悪い意味で有名人。歯に衣着せぬ人で、人使いが荒く、光一郎はパシリに使われる。
彼女の性格ゆえに患者とよくトラブルを起こすが、その割に外来患者が絶えない。
光一郎は漆原の元で様々な患者と出会い、学んでいくうちに、漆原の医者としての能力が本物であると認めるようになる。
漆原光莉の言葉。
「中途半端な知識で間違った治療をすることほど有害な医療はない」
「医者にとって大切なのは、自分の力と責任を自覚することだ。なら、アレルギー・膠原病内科医に大事なのはなんだと思う」(中略)「患者から逃げないことだ」
題名と表紙から軽い内容のものだと思いましたが違いました。
光一郎君の成長物語で、未だ途上です。続きが出るかな?
膠原病内科のことが少しわかりました。
午鳥さんも医師です。
小松亜由美 『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト』
久住遼真は神楽岡大学医学部法医学部法医学講座の新人法医解剖技官。
教授の柊侑作と助教の加賀谷千夏の解剖補助に入っている。千夏が無表情で何を考えているのか分らず、苦手だ。
この頃法医学が自分に向いているのかどうか悩んでいる。
「エクソシズム」
田淵好美の娘、優衣が部屋で亡くなっていた。優衣は語学専門学校生だが、この頃自宅にひきこもっていたという。好美は精神疾患があるらしく、娘は悪魔に身体を乗っ取られたとか意味不明の供述をしている。好美の信仰する『黒水仙の会』には『悪魔祓い』の教義があり、京都府警は好美が優衣を『悪魔祓い』という名目で虐待していたのではないかと疑い、優衣の検屍と司法解剖を千夏に依頼する。
「梟首」
京都市北区の河川敷で首のない死体が見つかる。遺体には右手小指の先がなく、襟足からは刺青が覗いていた。暴力団関係者だとみなされ、捜査一課の他に捜査四課マル暴の警部、鬼窪が現場にやって来る。
検視官都倉は血痕が不可解で、現場に来たときから違和感を覚えていた。
千夏は都倉の勘は当たっているといい、遺体を開けばわかると言う。
「赤い墓標」
京都美術大学の裏山で人間の膝から下の両足が見つかる。両足の膝下辺りに何やら大きな創が平行に走っていて、足の爪には真っ赤なマニキュアが塗られていた。
その日は休日だったため、千夏が一人で検死と解剖をする。
千夏は足の創はバンパー創で、両足は鋭利な刃物で死後に切断されたと断言する。
マニキュアとみなされたものは、<胡粉>でないかと思われた。
両足に該当しそうな京都美術大学の女子生徒が見つかるが。
「腐爛と凍結」
検視官の都倉から検屍依頼が来る。東山区古川町商店街の久保田精肉店で男女二体の異状死体が発見されたという。
久住が体調不良でダウンしていたため、柊は彼の代わりに現場に赴く。
遺体の一つは久保田邦雄のもので、腐敗が進んでおり、乾燥して変色していた。
しかし邦雄の妻、美登の遺体は頭部が挫滅しているが、腐敗は進んでおらず、遺体が凍っていた。
第一発見者によると二人はショーケースの前に並んで倒れていたというのに、何故美登だけが凍っているのか…。
第一発見者によると二人はショーケースの前に並んで倒れていたというのに、何故美登だけが凍っているのか…。
一話ごとに視点が変わり、千夏の秘密が少しずつ明らかになっていきます。
と言ってもすべてではないので、シリーズになって徐々にわかっていくのでしょうね。
両親の殺害犯人がわかっていないので、千夏は法医学者になって探そうとしていたりして。
脇役の久住や柊教授、都倉検視官などはいいのですが、鬼窪警部とか秋田から千夏を追いかけて来て京都府警の警官になったという北条がちょっとウザいです、笑。
ミステリとして読むと物足りないですが、小松さんは解剖技師だそうで、リアルな検屍や解剖の様子が垣間見られます。
<今日のわんこ>
兄はこの頃甘えん坊です。パパはそろそろ寿命かなと嫌なことを言います。
そんなことないですよ、(`ヘ´) プンプン。
朝(4時頃)になると、起きてきてママと一緒に寝ようとします。

前はこういう風に自分のベッドで寝ていたのに、

この頃はベッドを抜け出し、ママの布団の上で寝るようになりました。

これは足の間に挟まっています。
ママは動けず、迷惑なんですが…。
タスキメシ・シリーズの三冊を読む ― 2023/05/15

紫陽花の季節が近付きました。
普段は目につかないのに、何故か雨が多くなると紫陽花が目立ちます。

他の場所の紫陽花は小さいのですが、ここの紫陽花はもうこんなになっています。
紫陽花も日当たりが関係するのかしら?それとも水はけがいい、悪いが関係するのかしら?

「タスキメシ」とは何だろうと思うかもしれませんが、「タスキ」と言えば…。
そうです、駅伝です。
駅伝にかかわるお料理のお話だと思って読んでみましたが、一巻目以降それほどお料理のことは出てきません。
どちらかと言えばスポーツに関わる人たちの熱い思いを描いた作品です。
『タスキメシ』
眞家早馬は茨城県の私立神野向高校三年生。
陸上部で長距離選手として期待されていたが、昨年の冬に右膝を剥離骨折し、手術を受けた。
リハビリをしているが、仮に競技に戻れるまで回復しても、その頃には三年生は引退だ。
そんなことなど色々と考えていると、やる気もでない。
そんな彼に担任の生物教師・稔が料理研究部の井坂都を紹介する。
早馬の家は母親が亡くなってから家事は祖母がやってくれていた。
しかし昨年の九月に祖母が腰を痛め、伯母の家で介護をしてもらうことになり、それ以来家事は早馬と父が担当している。
一学年下の弟の春馬は甘やかされて育ったせいか、偏食で小食。毎日コンビニ弁当を食べる始末。
陸上部に入り活躍していて自分より見込みがありそうなので、早馬は春馬の偏食をどうにかしたいと思っていた。
都はそんな彼に色々と料理を教えてくれる。
陸上部部長で親友の助川とライバル校の藤宮たちは、早馬が競技に戻って来るのを待っていた。
しかし早馬は競技から引退したその先を考え始めていた。
『タスキメシ 箱根』
高校卒業後、眞家早馬は日本農業大学応用生物科学栄養科学科に入学し、陸上部で長距離走に励み、卒業後は管理栄養士として病院で働いていた。
しかし夢を諦めきれない上に上司とも馬が合わず、仕事を辞め、紫峰大学の大学院でスポーツ栄養学を本格的に学ぶことにする。
紫峰大学駅伝部は寮の管理人で栄養士の資格を持ち食事を作ってくれていた男性が退職してしまい、代わりの人をさがしていた。
たまたま早馬のことを聞いた駅伝部の監督が、栄養管理兼コーチアシスタントとして箱根駅伝出場を勝ち取るために協力してほしいと、早馬を駅伝部に勧誘する。
早馬は引き受けることにする。
だがそんな彼を駅伝部キャプテンの四年生・仙波千早は受け入れられなく、ことごとく反発する。
しかし…。
『タスキメシ 五輪』
仙波千早は大学卒業後食品会社に就職し、食堂運営部門に配属され、オリンピックの選手村食堂プロジェクトの一員となる。
裏方として世界のアスリートたちを支えていくようにと任された仕事だったが、やがてその中に、使命感や尊さを見いだしていく。
井坂都は就職した和食料理店が閉店することが決まり、選手村のスタッフ募集に応募し、採用される。
眞家早馬は大学院を卒業後、正式に紫峰大学駅伝部のコーチとして雇われる。
春馬は東京オリンピックのマラソン代表になれなかったが、次のパリを目指し、世界陸上へ。
一方助川と藤宮は…。
主人公が一貫して同じ人ではなくて、それがちょっと残念でした。
特に三作目は早馬がオリンピックのマラソン選手になった誰かを管理栄養士として支えていくお話だと思って読んだので、裏切られましたわ、笑。
私、早馬君推しなんです。
ホント、東京オリンピックって何だったんでしょうね。
あの時の異常な雰囲気を思い出しました。
関わった人たちにとっては思い出深いんだろうなぁ。
でもその後に色々あったし…。
「タスキ」からちょっと外れちゃったけど、それなりに面白かったです。
オリンピック選手村の食堂のことでわかったことは、一日四万五千食を二十四時間体勢で提供し、大会期間中の提供量は八十万食の予定だった。七百種類の料理を二千人近いスタッフで均一に調理し、餃子がとにかくすごい人気だったなどなどww。
や~、よくやれましたねぇ。すごいです。
オリンピックの選手村のお話だけでも一冊の本になりそうですね。
アラ、オリンピック選手村の食堂のお話で、前の二冊の記憶がどこかに行ってしまったわ、笑。
<今週のおやつ>

母の日にちなんだカーネーション柄の缶に入ったクッキーです。
この缶、使えそう。
体重はほぼ戻りましたが、運動が思ったように出来ず、減量できていません。
二ヶ月ほどになるのに、腕をちょっと使っただけで肩から手先にかけて痛みが出てくるのです。
体重が変わらなくても筋肉量が減り、脂肪が増えていますわ(泣)。
深町秋生 『探偵は田園をゆく』 ― 2023/05/13
2016年に発売された『探偵は女手ひとつ』の続編です。
約6年ぶりの女探偵・椎名留美の登場です。
山形弁が珍しかったのか、彼女のことは覚えていました。
今回は長編です。

探偵の仕事よりも便利屋の仕事の方が多いぐらいなのに、今年の冬は暖冬で仕事がない。
そのため椎名留美は仕方なくデリヘルの送迎ドライバーを始めたが、余計なことに首を突っ込んでしまい首になる。
そこに知り合ったばかりのホテルの従業員から仕事が入る。
息子が行方不明になっているので、探して欲しいというのだ。
早速彼の勤め先に行き話を聞くが、彼の評判は思わしくない。
みんなから借金をしているという。
彼の部屋を調べてみると、その場にそぐわない物が見つかる。
子なんかいないはずなのに西置市が子育て支援の一環として、新一年生に配っているという「すこやかパッケージ」があったのだ。
彼はそれが金になると言っていたという。
留美はそこから彼の行方を探っていくことにする。
今回も留美は活躍します。
前回よりも(記憶が正しければ)暴力沙汰が少ないです。
助っ人の逸平と麗夫婦がとにかく最強。だれもが恐れる狂犬夫婦です、笑。
山形は祖母の故郷なので、親近感があります。山形弁は難しいですが。
地方独特のしがらみやらなんやらが大変そうですが、そんな中を留美は頭を使い、上手く立ち回っています。
亡くなった夫の家族や自分の母や娘のことなどで悩みが尽きません。
それでも留美はカッコいいです。
また会えてよかったわ。
赤羽は行ったことがないのですが、もつ焼きとかが美味しいところがたくさんあるんですかぁ。
行ってみたいと思いますが、赤羽はちょっとくたびれた男性たちが羽を休めるところなのかな?
六年後ではなく、もっと早く続編をお願いしますね。
ヘニング・マンケル 『スウェーディッシュ・ブーツ』 ― 2023/05/12
スウェーデンのミステリー作家マンケルが書いた小説『イタリアン・シューズ』の続編です。
英語版の『After the fire』を読む前に翻訳が出てしまいました(恥)。

元医師のフレデリック・ヴェリーンは70歳。
未だ祖父から遺された小島に一人で住んでいる。
ある夜、火事で目覚める。
警察が調べると、放火であることがわかる。
とんでもないことに警察はフレデリックがやったのではないかと疑っている。
そんな彼のところにインタビューをしたいとリーサ・モディーンという女性記者がやって来る。
フレデリックは彼女と関係を持ちたいと思う。
娘のルイースに家が焼けたことを連絡するとすぐに島にやって来る。
フレデリックは娘とどう接したらいいのかわからない。
彼女はエキセントリックで、何かと腹を立てるのだ。
いったい何をして暮らしているのだ。
やがて警察から呼び出しが来る。
ルイースは一緒に行くというが断ると喧嘩になる。
翌日、ルイースはいなくなる。
しばらくしてルイースから電話が来る。
パリで警察に捕まっているので助けて欲しいというのだ。
フレデリックはパリへ向かう。
親しくなっていたリーサ・モディーンも誘うが断られる。
パリでは大使館員に助けられ、ルイースと会うことができた。
ルイースは思ってもいなかったことをフレデリックに告白する。
そしてフレデリックに付近の群島の家が焼けたという連絡が…。
この本はミステリではないので、フレデリックは犯人捜しをしませんが、彼の悪癖から偶然に犯人を突きとめてしまいます。
読みながら私も彼ではないかと思っていました。
誰もが人を正確に理解しているわけではなく、人には思いもかけないことがあります。
中学校の人気教師が強盗殺人事件を起こしてしまうようにね(本当のことなのか、信じたくないですが)。
それにしても70歳になるというのにフレデリックには驚きました。
自分よりも大分若い女性のことをすぐに好きになってしまうんですもの。
そういえば50代のヴァランダー(マンケルのミステリーの主人公)もヴィスティング(ホルストのミステリーの主人公)も女性を求めていましたね。
年を取ると一層、特に一人暮らしだと男女関係なく、そういう関係を求めるのかもしれませんね。
この小説はマンケルの最後の作品です。
そのためか死の影がどの場面にも色濃く感じられます。
マンケルはスウェーデンに明るい未来を感じていなかったのでしょうか。
新しい命に希望を託していたと思いたいです。
ちなみに「スウェーディッシュ・ブーツ」とはスウェーデンのトレトン社製のゴム長靴のことです。
火事で片方無くし、注文するのですが、何故かすぐに手に入らないのです。
老年に足を踏み入れた人が読むと身に染みる本かもしれません。
最近のコメント