文楽二月公演 「女殺油地獄」を観る2009/02/07

有名な近松門左衛門作、『女殺油地獄』を観て来ました。
国立劇場はしばらく行っていないので、道がわかるのかと心配でしたが、今回は同僚の旦那様の車で送り迎えしていただいたので、道に迷わず、楽チンでした。

上演されたのが、「庵堤の段」と「河内屋の段」、「豊島屋油店の段」です。
「徳庵堤の段」では、入れ替わり立ち代り大夫がたくさんでてきて、各々登場人物の台詞を語るので、あれ~、一人がすべて語るんじゃないの?と思いましたが、「河内屋の段」からは、例の回る舞台に乗って大夫と三味線が出てきて、それでわかりました。
最初の段は若手がやるのね。
重要無形文化財保持者の方は二人いらっしゃるようですが、夜の部には出ていませんでした。
同僚曰く、「年よりは朝の方がいいのよね。夜は眠いから~」などと冗談言ってましたが、そんなことないわよね、笑。
「女殺油地獄」は初演当時に、あまり人気がなかったそうです。
それもよくわかります。
主人公の河内屋与兵衛とんでもない奴なんです。
性根の腐った奴という言葉がぴったりです。
殺人をする理由が理由ですからね。

人形が生きている人間のように動きます。
意外と大きいのでびっくりしました。 
会場には着物を着た女性が能の時より多いようです。
小劇場なので、人がそんなに多くないので、のんびりとした感じです。
結構雰囲気がいいかも。
おもしろさでいうと、能より文楽でしょうね。
自分で物語の内容を確認したいので筋を書いてみます。

「徳庵堤の段」
四月半ばの徳庵堤は野崎観音参りの人でにぎわっていました。
そこへ河内屋の息子の与兵衛が悪友と一緒にやってきます。
馴染みの遊女小菊が与平の誘いを断り、他の人と野崎観音参りに出掛けたと聞き、嫌がらせにやってきたんです。
小菊と男の二人がやってくると、早速喧嘩を始めます。
この喧嘩の場面はつかみ合いあり、石が飛ぶわで、おもしろいです。
そこへ通りかかった高槻家の小栗八弥。
彼の袴に与兵衛の投げた泥が掛かってしまいます。
お付の武士が手打ちにしようと与兵衛を捕まえると、なんとその武士、与兵衛の伯父の山本森右衛門でした。
八弥が参詣の前だからといって許してくれ、与兵衛は命拾いをします。
でも、帰途に斬られるのではと、気が気ではない与兵衛です。
そこへ戻ってきた知り合いの油店を営んでいる豊島屋七左衛門の女房お吉に助けを求めます。
お吉は茶屋を借り、与兵衛の汚れた着物を洗ってやります。
が、そこへ夫の七左衛門が戻ってきて、不義を疑われます。
七左衛門はお吉をたしなめ、子供と三人で帰途につきます。
残された与兵衛は一人、とぼとぼと去っていきます。
与兵衛の放蕩の様子と性格がよくわかる段です。
お吉は気がいいんですね。
与兵衛に姉のような感じで接しています。
それが後の悲劇を生むことになります。

「河内屋内の段」
与兵衛の実家です。
兄の太兵衛がやってきて、義父の徳兵衛に伯父の森右衛門の手紙を見せます。
そこには徳庵堤の一件のことが書いてありました。
太兵衛は徳兵衛に与兵衛を勘当するようにと言いますが…。
実は徳兵衛は元河内屋の奉公人で、先代が死んだ後、後家のお沢と一緒になり跡を継いだのです。
そのために与兵衛に遠慮があり、甘やかして育ててしまったのです。
一方お沢は徳兵衛が跡を継いでくれたために、今の暮らしが保てるという感謝の気持ちを持っているため、なおさら与兵衛に甘くできないのです。
太兵衛が帰ると、入れ違いに与兵衛が戻ってきて、金の無心をします。
そして、所帯を渡すようにと徳兵衛を足蹴にし、踏みつけます。
この最中に母のお沢が戻り、与兵衛を棒で叩きます。
与兵衛が棒を取り上げ、お沢を叩き始めると、徳兵衛は棒を与兵衛から取り上げ、涙を浮かべながら与兵衛を打ち据えます。
お沢は心を鬼にし、与兵衛に出て行くようにと言います。
どんなに馬鹿な息子でも、親はいつかは自分達の心がわかるようになって、まっとうになることを信じているんですね。
こういう気持ちのわからない与兵衛は、とんでもない奴です。

「豊島屋油店の段」
いよいよクライマックスです。
お吉は娘の髪を梳いているときに、櫛が折れ、胸騒ぎを覚えます。
与兵衛が豊島屋の前を通りかかります。
綿屋小兵衛が声をかけ、借金を返すようにと迫ります。
与兵衛は明日までに返すと答えますが、まったく当てがありません。
一方豊島屋では、夫の七左兵衛が出かけます。
そこへ徳兵衛がやってきます。
彼は与兵衛にと銭三百を託すのです。
同じように、母のお沢がやってきます。
隠れようとしたのですが、徳兵衛は見つかり、銭を見つけ、私が追い出したのだから、銭なんか渡さなくていいと言うのですが…。
懐から銭五百と粽が落ちます。
なんともありがたい親心ではありませんか。
お吉はこの銭をあずかります。
両親が帰ったのを見た与兵衛は、豊島屋にやってきます。
お吉から銭を貰ったのですが、与兵衛はこれでは足りないから、金を貸してくれと言います。
お吉は今までの苦い経験から、夫が留守なので一銭も自由にならないと、きっぱりと断ります。
与兵衛はお吉なら金を貸してくれると甘くも思い込んでいたため、拒絶され、カッとなります。
油を貸して欲しいと頼み、油を入れているお吉の後ろから斬りつけようとします。
ここからが山場です。
殺されまいと逃げるお吉。こぼれる油。
油と血ですべる床。
人形が足をすべらせ、すーとすべっていきます。
ちょっと大げさですが…。

さて、お吉を殺した与兵衛がそれからどうなったのか、気になりました。
調べてみると、与平衛は盗んだ金で借金を返し、溜まった茶屋の払いも済ませ、御大尽気取りで新町や曽根崎で馴染みの遊女と遊び回っていたそうです。
捕まるはずが無いという甘い考えでいたのでしょうか?
しかし何時までも盗んだ金が続くわけでもなし、犯行後も与平衛の行動は刹那的で思慮に欠けていますね。
お吉の三十五日の逮夜の供養に与兵衛は何食わぬ顔で列席します。
ここが不思議なところですが、天井でネズミが荒れて血潮を拭った古証文を落ちてきます。
それにはのがれられぬ証拠の与兵衛の署名が書いてありました。
その上、お吉の血のすいた与兵衛の着物も見つかります。
与兵衛は悪事が露見してただちにめしとられます。
どうしようもない奴ですね。

文楽もおもしろくて、いろいろと見たいものが多く、どうしようかと迷うこの頃です。

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