「まぼろし」を観る2009/03/07

シャーロット・ランプリングといえば、私は見ていないのですが、上半身裸にサスペンダーでナチ帽をかぶって踊るシーンが有名ですね。
退廃的な美女という感じです。
目が三白眼っていうんでしょうか、ちょっと行っちゃってるようで、よくよく見ると怖いです。
そんな彼女が54歳頃に出演したのがこの「まぼろし」です。
昔とそんなに変わっていません。
しわが増えたぐらい。
スタイルも54歳という年齢を考えると、抜群です。
映画でスポーツクラブでマシンをやったり、泳いだりする場面が出てきましたが、実際にやっていそうな腕の筋肉の盛り上がりです。
う~、うらやましい。54歳になっていない私なのに、デブだわ・・・。
個人的感想は置いておいて、映画です。

マリーとジャンは結婚して25年になる夫婦。
今年もバカンスでフランス南西部のランスにある別荘に出かけます。
車の中やドライブインでの様子には長年連れ添った夫婦らしさが漂っています。
着いた次の日、人のいない浜辺に行きます。
ジャンが泳ぎに行っている間にマリーは午睡をしていました。
気がつくと、夫がいません。
浜辺で泳いでいた男女に聞いても、誰も彼を見ていません。
一体彼はどこに行ったのでしょうか?
地元の警察にジャンの捜索を頼み、パリに戻ったマリーですが、夫の「まぼろし」を見るようになります。

何か嫌な出来事があると否認の気持ちが働くといいます。
マリーは夫が自分の傍からいなくなるはずはない、いやいなくなって欲しくないという思いが強かったのです。
周りはみな、ジャンは溺死したのか、蒸発したと思っています。
友達のディナーパーティに行った日、ヴァンサンという男を紹介されます。
夫のいない寂しさからか、ヴァンサンとデートをし、関係も持つのですが、夫を忘れられません。
ジャンはお腹のでた太っちょです。
全然格好よくないと思うのですが、そこは長年連れ添った夫婦。
ヴァンサンはお腹もでていない、スタイルのいい中年男性。
初めてベッドを共にしたときに、マリーが急に笑い出し、「あなたは軽いわ」という場面は印象的でしたが、言われた男はショックでしょうね。

ジャンのお母さんは養護施設に入っているようです。ジャンの溺死体が見つかったという知らせが入って、母に会いに行きます。
日本もフランスも変わらないのですね。
母は子供を産めなかったマリーに対し冷たいのです。
ジャンがうつ病で薬を飲んでいたから、ひょっとしたら自殺をしたのかもしれないとマリーが言った時、母はこう言います。
「薬を飲んでいたことは知っている、あなたは母と子の絆を軽んじている。家族を作れなかったあなたにわかるはずがない。ジャンは自殺したんじゃない。失踪したのよ。あなたに飽きたのかも。現実はもっと残酷かもしれないわ」
嫁も負けていません。
「あなたは養老院よりも、精神病院に入るべきだわ」(嫁)
 「あなたの方が先よ」(姑)
や~、怖いですねぇ。
ジャンがマリーのことを自分よりずっと大事にしていたので、母は嫉妬していたのでしょうか。

ランスの死体安置所で夫の溺死体と向き合うマリー。
彼女は夫の死を乗り越えていけるのでしょうか。
浜辺の最期の場面で監督は何を描きたかったのでしょうか。

親しい人が亡くなるという喪失経験を描いた映画です。
シャーロット・ランプリングはすばらしい女優なのだなと再認識しました。