中野京子 『歴史が語る 恋の嵐』2009/11/30



中野京子さんの本をまた読んでみました。今度は絵のことではなくて、歴史に名を残した女性のことです。彼女たちがいくつの時に運命の恋をしたのか。それがこの本の主題です。

一番若い14歳で運命の恋をしたのは大納言久我雅忠の娘二条。
誰だかわかりますか?
『とはずがたり』の作者です。『とはずがたり』は学校の古典の授業では勉強していないような気がします。
内容はというと、鎌倉時代、14歳の二条はあこがれの雪の曙こと西園寺実兼と恋歌をやり取りして、恋の真っ只中にいました。
ところが彼女の父親は、娘を15歳年上の後深草院の後宮にあげるという約束をしていたのです。実は二条の母親は後深草院の初めての夜伽の人で、後深草院はその人の娘を狙っていたんですね。光源氏をきどっていたようです。
さて、初恋を踏みにじられた二条と西園寺実兼はどうなったかというと、なんと二条の父の葬儀で再会し、焼けぼっくいに火がついてしまいました。まあ、そんなもんでしょうね。
そして、不義の子まで産んでしまうんです。
こんな立場になっても、二条は全然悩まないんです。上皇と実兼以外にも数人の男性と新たな恋もしちゃうんですから。もっとすごいのは、そのことを赤裸々に書いちゃったんですからね。

キュリー夫人も出てきます。彼女はパリのソルボンヌに行く前にガヴァネスをしていたのです。


ガヴァネスとは、住み込みの家庭教師のことです。ガヴァネスもしかるべき家庭出身ですが、生家が没落したため経済的逼迫ゆえに、裕福な家庭の子女を教育するために住み込みで働いているのです。
マリーは4人兄弟の末っ子で、官立女子高校を主席で卒業し、長姉をパリのソルボンヌ大学へ留学させるためにガヴァネスになったのです。
雇われ先はゾラフスキー家。その家の長男カジミールと18歳のマリーは恋に落ちたのです。
アレ、キュリーさんじゃないの?と不思議に思うでしょう。私もそうでした。『キュリー夫人伝』を小学校の時に読んだはずですが、こんなこと書いてなかったです。小学生には教えたくないことですものね。
結局、カジミールが優柔不断で、親を説得できなかったみたいです。6年も彼を待ったようですが、最後にマリーは決心します。彼と別れパリに行くことを。
カジミールと結婚してたら、ノーベル賞も取っていなかったでしょうね。何がいいのか分からないのが人生ですね。

何といっても、うらやましく、見習いたいのがマルグリット・デュラスです。
彼女、66歳の時、27歳の文学青年ヤンと恋に落ちたのです。デュラスはこの時、太った飲んだくれだったそうです。なんでそんな老女がいいんでしょう?
そうそう、『ラマン』は70歳の時の作品だそうです。恋の力はすごいですね。
デュラスが81歳で死ぬのをみとったのはヤンだそうです。女冥利につきますね。

 
写真の彼女はそんなに悪くないですが。でも39歳も年下に愛されるなんて・・・。

他にもたくさんの有名女性が出てきます。私のような凡人には経験できないような、強烈な恋がいっぱいあります。彼女たちのエネルギーはそうとうなものだったのでしょうから、愛することにかけてもそうとうなものだったのだと思います。

世界史の裏を覗くという感覚で読んでみると、新しい発見がある本です。