横山秀夫 『影踏み』 ― 2014/07/16

横山さんは刑事物という印象を持っていましたが、今回は犯罪者が主人公です。
真壁修一は二年の刑期を終え出所してきました。
彼は自分が捕まる時に忍び込んだ家の妻のことが、ずっと気になってしょうがありませんでした。
彼女は夫を殺そうと思っていた・・・。
出所して最初にしたのが県立図書館に行き、当時の新聞記事を読むことでした。
修一は「ノビ師」と呼ばれる、忍び込みのプロです。
取り調べに対して決して口をわらないことから、刑事たちから”ノビカベ”と綽名されていました。
彼が「ノビ師」になったきっかけは、弟の死でした。
双子の弟と一人の女を巡って争い、家出した弟は空き巣を重ね警察に追われ、悲観した母親が火を放って弟を道連れに無理心中をしたのです。
その時から弟は彼の耳に住み着いています。
何故、修一は「ノビ師」になったのか。
そのところが今一つわかりません。
愛する女もいるのに、何故、これほど「ノビ師」に固執するのか?
弟を死なせたという負い目からなのか。
耳の中に住む弟は彼の作り上げた幻影なのか。
犯罪者が主人公でも小説の内容に違いはありませんでした。
修一は刑事のように、自分に降りかかるトラブルをひとつひとつ納得のいくまで調べて解決していくのです。
この頭の良さを他で使って欲しかったですね。
修一は何でこんなことを・・・とかなんたらかんたらを考えないで、読んでいくといいでしょう。
人間ってよくわからない生き物ですものね。
決して嫌いな小説ではありません。
どちらかというと好きかも。
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