ラグナル・ヨナソン 『雪盲』2023/06/20

アイスランド・ミステリ。
ヨナソンの書いた女性刑事フルダ・シリーズが面白かったので、新人警察官アリ=ソウルが活躍する<ダーク・アイスランド・シリーズ>を読んでみました。


2008年、レイキャヴィークに住んでいるアリ=ソウルは二十四歳。
十三歳の時に母親が亡くなり父親が失踪したため祖母と暮らしていたが、祖母も亡くなり、天涯孤独の身だ。
大学で哲学を勉強し始めたがやめ、聖職者を目指し神学部に進むが、それもやめて警察学校に入った。あと一学期を終えれば警察官の資格が与えられるが、まだ進路は決まっていない。
一緒に暮らしている恋人のクリスティンは医学過程の五年目を終えたばかりだ。

そんなある日、シグルフィヨルズル警察署長のトーマスから電話が来る。
彼はアリ=ソウルを採用したいと言う。
シグルフィヨルズルは北の最果てにある小さな町で、クリスティンに黙って応募していた。
相談もせずに決めてしまったとクリスティンは激怒し、ふたりの仲は危機に陥る。

クリスマスまで一ヶ月という時期にアリ=ソウルはシグルフィヨルズルに赴任する。旅行がてら一緒に行こうとクリスティンを誘ったが断られる。
飛行場までトーマスが迎えに来てくれた。
町の外に通じる道は一本だけで、町はニシンが姿を消してから活気をなくしたらしく、今や人影もなく、車もほとんど走っていない。
トーマスは「ここじゃどうせ何も起きないんだから」と言うが…。

アリ=ソウルが着任してから二ヶ月が経ったある日、元作家でアマチュア劇団の代表であるフロルフルが劇場で死体で見つかる。
トーマスはフロルフルは飲み過ぎて階段から落ちた、事故だと確信している。
しかしアリ=ソウルは劇の主役で、彼にピアノを教えてくれているウグラから事故の前にフロルフルと演出家のウールヴルが口論をしていたと聞き、疑念を抱く。
ウールヴルから話を聞くとそれが住民の間に知れ渡り、とんでもない話となり、アリ=ソウルはトーマスから余計なことをするならやめてもらうと言われてしまう。

そんな時に少年が雪の中で瀕死の状態になっている半裸の女性を見つける。

雪で閉ざされた閉鎖的な町で、よそ者であるアリ=ソウルは真相に迫ることができるのか…。

この本は大分前に読んでいたのに、また読んでしまいました、笑。
劇場で起きた殺人ということは記憶にあったのですが、何故かアリ=ソウル君のことを忘れていました。
24歳のアリ=ソウル君はあまりにも青臭くて、魅力的ではなかったからかも。
アイスランドって平和なので、警察仕事に身が入らないのかしら?
アリ=ソウル君、アメリカでこんないい加減な気持ちで事件を捜査していたら、命がいくつあっても足りないですわよwww。
ヴィスティングやヴァランダーもそうでしたけど、北欧ミステリって等身大の人間を描くものなのですかね。

アイスランドの冬は北海道の冬とは比べられないくらい厳しいですね。
北海道の家は、毎冬、裏窓が雪で埋まっていましたが、雪に閉じ込められる感じはしませんでした。東北の方がそうなのかしら?
ニシン漁のことが出てきて、北海道と同じだと思いました。
北海道のニシン漁は1957年には途絶えたと言われていますが、アイスランドは1960年代だそうです。
北海道のニシンがアイスランドの方に移動したのかしら?

このシリーズは日本で三冊、英語では六冊翻訳されているようです。
ところが日本では一巻目の次に五巻目、次に二巻目という具合に出版されています。出版社の都合でしょうか、困ったものです。
シリーズ第二弾というので『極夜の警官』を読むと、話が跳んでいるんですもの。
シリーズ第三弾の『白夜の警官』を読んで、そうかとわかりました。
これから読む人は『雪盲』→『白夜の警官』→『極夜の警官』と読んだ方がいいですよ。出版社は早く三作目と四作目を翻訳して出版してください。
そういえば題名も第二弾から『〇〇の警官』に変わって、表紙が警官のイラストになっていますね。
好き嫌いの問題ですが、私は一巻目の方が好きです。

主人公が若者ということで、これから人間的に成長していくのを楽しみにして読んでいくことにしますわ。
アイスランド人って意外と内にこもってグダグダ考える性格なのかもしれませんね。
そんな主人公を温かく見守られる方、読んでみて下さい。