椹野道流 『祖母姫、ロンドンへ行く!』2023/06/27



始めに恥をさらしておきますが、私題名が「祖母」と椹野さん=「姫」だと思っていました。違っていました。祖母=姫なんです。
よくよく考えてみると、「祖母と姫」じゃないですものね。

この本で祖母と孫がイギリスに行くのですが、何故、行ったかというと、正月の親戚の集まりで、椹野さんがイギリス留学の話をしたら、祖母が、「一生に一度でいいからロンドンに行きたい。お姫様のような旅がしてみたいわ」と漏らしたので、叔父様たちが資金を出すから椹野さんに80歳を超える祖母を連れていってやってはどうかと言い出したのです。
この叔父様たちってお金持ちなんですね。
椹野さんは医師ですから、ひょっとしたら叔父様たちも医師という可能性がありますわねぇ。
そんな訳で、「プライドが高すぎるめんどくさい年寄り」で認知症もある祖母を五泊七日の豪華イギリス旅行に連れて行くことになります。

実は椹野さんは留学と言っても一年間、語学学校に通っただけです。(「椹野道流の英国つれづれ」より)これ以外にもイギリスに留学していたとしたら、ゴメンナサイ。ちゃんと通訳できるほどの英語力です。

すごいですよぉ。飛行機はファーストクラスでホテルは五つ星の一流ホテル。
タクシー乗りまくりでオリエント急行にまで乗っちゃうんですから。
椹野さんは古きよき時代の付添人のように祖母に仕えますが、普通ならどうしたらいいかわかりませんよね。
ところがさずがファーストクラス。CAさんが違います。飛行機の中で椹野さんに頼まれ、快く高齢者に対するプロの技を伝授してくれたのです。
私の皮肉れ根性が思いますが、エコノミーならこんなことはないでしょうね。
五つ星ホテルでもすごかったです。ドアマンからウェイター、バトラーまで、これぞホスピタリティというものを見せてくれたのです。
バトラーのティムが特にいい味出してました。ホテルのバトラーってみんな彼みたいなんでしょうかね。
彼の「恋愛は必ずしも人間関係の頂点にあるものではありません」は深い言葉です。
ついでにロンドンの三越(2013年9月に閉店)の店員さんもプロでした。
どうしてこんなに色々な人たちが祖母のために手を差し伸べてくれたのでしょうか。
それは彼女が誇り高き姫そのもので、彼女に仕える椹野さんの一生懸命さが通じたからでしょうね。

旅の最後に祖母が椹野さんに言う言葉がいいです。長いですけど、今後の覚え書きのために載せておきます。

「あなたに足りないのは、自信です。見ていたら、自信がないだけじゃなくて、自分の値打ちを低く見積もっているわね」
「謙虚と卑下は違うものなの。自信がないから、自分のことをつまらないものみたいに言って、相手に見くびってもらって楽をしようとするのはやめなさい。それは卑下。とてもみっともないものよ」
「楽をせず、努力しなさい。いつも、そのときの最高の自分で、他人様のお相手をしなさいよ。オシャレもお化粧も、そのために必要だと思ったらしなさい。胸を張って堂々と、でも相手のことも尊敬してお相手をする。それが謙虚です」

耳が痛いです。こんなこと言ってくれるなんて、祖母姫さん、素敵です。

表紙のスコーンがいいなと思っていたら、90歳からちぎり絵を始めた木村セツさんの作品だそうです。
椹野さんたちが食べたスコーンは「手のひらよりひと回り大きい」といいますが、そんなスコーン、本当にあるんですかぁ?
食べ方ですが、私はクロテッドクリームの上にジャムをのせていましたが、これはデヴォン式と言うそうです。
椹野さんたちはコーンウォール式で、ジャムの上にクロテッドクリームをのせて食べています。
どちらが美味しいのかしら?いつになるのかわかりませんが、今度スコーンとクロテッドクリーム、ジャムが揃ったらやってみますわ。
椹野さんたちが泊まったホテルのアフタヌーンティーはケーキスタンドがありません。温かいうち、冷たいうちに食べて貰いたいからと、一品ずつ出てくるようです。
クラリッジズのアフタヌーンティー(85£)が似ています。でもスコーンは普通サイズのようですね。

バトラーってこんなことまでしてくれるのと思う場面もありましたが、もし本当にそんなことまでしてくれるというなら、お高いホテルに泊まるのも良さそうです。
まあ、宝くじにでも当たらなきゃ私には一生縁がないでしょうが、笑。

ロンドンの観光スポットの紹介ではなく、祖母と孫、ホテルの従業員たちなどのお話がメインの軽いエッセイ集です。
面白いので、興味を持った方は読んでみて下さい。
私はとってもイギリスに行きたくなりました。