堂場瞬一 『最後の光 警視庁総合支援課2』2023/08/17

主人公が村野から柿谷晶に変わった警視庁総合支援課シーズン2の二作目。


二歳の男の子・森野蓮が殺された。
母親・夏海の証言に基づき、夏海の交際相手・岡江弘人に対し厳しい取り調べが行なわれているが、岡江は黙秘を続けている。
警視庁総合支援課のスタッフ・柿谷晶は夏海を支援するために、後輩の奏加奈江とともに西ヶ原署へ駆けつける。

夏海は二十三歳という年齢にかかわらず、幼い感じで、息子の死に精神的ダメージを強く受け、混乱しているようだった。
実家は静岡で、そこに母親の貴恵がいるが、高校卒業後から絶縁状態。
その上、夏海は蓮の父親は誰かも言わない。
唯一の頼みの綱は出産直前に夏海がバイトしていた喫茶店「琥珀亭」の女店主の飯塚朋恵だ。
彼女によると、父親は店の近くにある商社の社員・水谷晃太らしく、彼は夏海が妊娠したのを知らずに海外赴任でアメリカに行き、一週間ほど前に日本に帰ってきたという。
早速水谷に会いに会社に行くが、10日間の休暇を取っていて、会社も家族もどこにいるのかわからないという。

結局、朋恵が蓮の葬式を仕切ってくれたが、夏海の支えになる人は見つからず、頭を抱える晶のところに水谷の母親から電話が来る。
晃太が出社いていないと会社から連絡が来たというのだ。
支援課は失踪人捜査課に相談する。

思いもかけない事態が起り、虐待事件が意外な様相を見せ始める。

幼い命が失われ、その背景を調査すると、劣悪な家庭環境や複雑な人間関係などが浮かび上がることが多いと思います。
悲しいけれど、不幸の連鎖があることは事実です。
どうやってそれを断ち切るのか、うまい解決策が見つかるといいのですが、それは簡単なもんじゃないですよね。
”自己肯定感”がキーワードになると思いますが、どうでしょう。

このシリーズの主人公が晶になりましたが、実は私、彼女がどうしても好きになれないのです。
彼女自身が加害者家族とはいえ、なんか突っ走るだけで思慮が浅く、人の心をそれほど思いやれていないところが見えてしまうのです。
シリーズが進むにつれ、成長していくのでしょうが…。

村野がいつものようにちょっと顔を出し、失踪人捜査課のあの人が出てきて、後は大友が出てくるともっと嬉しいですね。
ヒロインが好きでも嫌いでも関係なく、とても面白かったです。