本多孝好 『こぼれ落ちる欠片のために』 ― 2024/12/09

県警刑事部捜査第一課強行二係の和泉光輝はある殺人事件で中山署刑事課の女性警察官、瀬良朝陽巡査と組まされる。
瀬良は警察官にあるまじき美女だが、いつも自分の手元を見ていて、人とは目を合わせず、話もしない、コミュ障かと思われる不思議なキャラ。
瀬良の最初の印象は最悪だったが、彼女は県内で噂になるほどの「職質の女神」だった。
「イージー・ケース」
和泉と瀬良が組んだ最初の事件。
マンションの一室でアイドル好きの訪問介護員の男性が殺されていた。死因は失血死。職場でも友人関係でも特にこれといった被疑者が出てこなかったが、瀬良の一言から事件は動く。
「ノー・リプライ」
110番通報があり、現場に向かうと、アパートの一室に手が血だらけの女と倒れている男がいた。
女は四十二歳、独身のスーパーで働くパート店員。男は十七歳年下の美容師。
五ヶ月前に知り合い、ひと月後につき合い始めたらしい。
女は取調室で雑談には応じるが事件に関する供述を拒否している。
男が十五年程前に芸能活動をしていたことが判明し、メディァで大きく取り上げられたため、県警から指導係員として和泉と瀬良が派遣される。
「ホワイト・ポートレイト」
学校の校長からの通報で、小学五年生の少年が家に帰って来ていないことがわかった。両親の婚姻関係は破綻しており、父親は一年以上も家に寄りつかず、母親は二週間近く家を空けており、そういう状態が珍しくないという。
空き家や空きビル、空き地、大規模公園、鴨井川沿いの土手や緑地などを中心に捜査が行われたが、何も発見されなかった。
失踪四日目に県警本部捜査第一課強行犯第一係熊井班と第二係宮地班が投入されたが、少年の行方はわからず。
関係者による犯行なのか、それとも…。
瀬良は今までにないキャラです。
観察眼がすごいですが、こんなキャラで刑事をやっていけるのかどうか疑問です。
彼女がそんなキャラになったのは、何かあったのでしょうね。
いっしょに組んだ和泉君はよく彼女の考えていることがわかりますね。
そうか、だから次なる取調官として期待されているんですね。
どのケースも真実は悲しいものです。
最初と最後で事件の様相がガラリと変ります。
被疑者に代わって警察官は『罪を最大化する』とはいえ、本当にこれでいいのかと思うところがありました。
瀬良をまだ上手く使っていないなと思いました。
本多さんの初めての警察小説らしいです。
次回も期待して待ちます。
本多さんのインタビューがあったので、興味がある方はご覧下さい。
お勧めのミステリです。
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