小川洋子 『やさしい訴え』& 『余白の愛』 ― 2016/09/29

夫との生活に耐えきれなくなり、山あいの別荘に逃げ込んだ「わたし」。
そこにはチャンバロを作っている男と弟子の女がいました。
男はピアニストを目指していたのに、人前で弾けなくなり、女は愛する男を失い、「わたし」は・・・。
不思議な三人の関係が、淡々と描かれています。
「やさしい訴え」はラモーが作曲したチャンバロ曲です。
物悲しい曲です。

24歳の「わたし」は夫が出て行った次の日から突発性難聴になります。
夫は他に好きな人ができたから離婚をしてほしいというのです。
「わたし」は同じような病気にかかった人たちの集まりで、美しい指をした速記者「Y」に出会い、彼に聞こえない耳に聞こえる音を速記してもらうことになります。
2冊共に主人公は20代の既婚女性。
二人の主人公は似ています。
どちらも夫に愛人がいて、自分を主張しない受け身の女性です。
小柄で、それなりにきれいで、夫の与えてくれるお給料で満足して暮らせる、奥さんとしては十分な女性ではないでしょうか。
私とは全く違う人種です。
こんな女性になれたら、私の人生も変わっていたでしょうね(笑)。
物語性を求める人にはそれでなんなのと言いたくなるような本でしょうが、小川さんの描く世界に浸れる人には、この上もなく美しい本でしょう。
幻想的な世界から、現実へ。

昨夜は普通の寝方でした。
起こしてしまってごめんなさいね。
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