中山七里 『作家刑事毒島の暴言』 ― 2024/10/28

お散歩の時に綺麗なコスモスが咲いていました。
外に出ると、必ず一回は出会うのが救急車。
コロナ禍の前には滅多に見かけなかったような気がするのですけどね。

作家刑事毒島シリーズの四作目で、今回、毒島が扱う事件は五つです。
「一 予選は突破できません」
<多門紀平小説講座>の受講者、武邑譲が殺された。
彼は<双龍社新人賞>を受賞したばかりだった。
警視庁捜査一課の高千穂明日香は犬養とともに臨場するが、犬養は被害者が作家だと知ると、すぐに刑事技能指導員と作家を兼業している毒島真理を呼び出し、高千穂に毒島を押しつけ、いなくなる。
容疑者は、多門喜平と受講生の三人。
毒島の毒舌が炸裂するか。
「二 書籍化はデビューではありません」
天王山光利がの死体が自宅アパートで発見された。
彼の作品が「小説家になろう」で月間ランキングで一位、ブックマークは六万件になり、書籍化されていたが、全く売れず、二作目の書籍化は絶望的だった。彼は苦肉の策としてYouTubeで「リクエストに応える」と宣言し、応えるが、リクエストはどんどんエスカレートしていき、とんでもないことになっていた。
高千穂はまた毒島と組む。
「三 書評家の仕事がありません」
文学YouTuberホンズッキーの活躍が気にくわない書評家の田和部が、Twitterに投稿したことで、ホンズッキーはYouTubeを閉鎖し、SNSは炎上した。
その三日後、ホンズッキーは作家デビューを発表する。
田和部は出版社にのせられ、彼のデビュー作を書評し、ドツボにはまってしまう。
そんな時に、ホンズッキーがキャンプ場で死体となって発見される。
毒島、書評家と文学YouTuberを尋問する。
「四 文学賞が取れません」
小説家嬬恋連我が死んだ。
彼は初期に書いた政治小説で一躍ベストセラー作家になったが、この頃は何を書いても売れていなかった。追い詰められた彼が考え出したのが、直木賞受賞。
新作を書いてもいないのに、直木賞にノミネートさせるように出版社に圧力をかけていたのだ。
毒島、珍しく彼をリスペクトしていたらしい。
「五 この世に神様はいません」
小説家花王子貴光の死体が自宅の書斎兼教室で見つかる。
彼は小説講座を開いており、机の上に朱が入った原稿があった。
死亡推定時刻に会うことになっていたのが、崎山光輝という十五年前に新人賞を取ったっきり終わってしまった作家で、その日、崎山は宗教法人統価会総本部にいるらしい。
宗教団体が関係するとわかり、はしゃぐ毒島。
高千穂は毒島のことを「毒舌魔神」と言っていますが、彼の毒舌に慣れてしまったのか、今回はそれほどひどいとは感じませんでした。
毒島よりも出てくる作家志望の人たちに嫌悪感を持ちました。
書くことが好きだから作家になりたいじゃなく、作家という肩書きが欲しいだけの人がいるとは、思ってもいませんでした。
小説講座なんて行ったことないけど、そんな人たちがいそうです。
<なろう>とか<カクヨム>って何だろうって思って調べてみました。
<なろう>は「小説家になろう みんなのための小説投稿サイト」のことで、<カクヨム>は「カクヨム:無料で小説を書ける、読める、伝えられる」のことなんですって。
携帯で小説を書く人がいることは知っていましたが、今はこういうサイトが出来ていて、投稿する人が沢山いるんですね。
今の出版社の裏側とか、宗教法人の出版事情とかも書いてあって、面白かったです。
これって本当の話ですよね。
本当なら、こんなに赤裸々に書いてしまっていいのかしら…。
シリーズを順番にのせておきます。
①『作家刑事毒島』(2016年8月)
②『毒島刑事最後の事件』(2020年7月)
③『作家刑事毒島の嘲笑』(2022年7月)
④『作家刑事毒島の暴言』(2024年9月)
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