ジェイニー・ボライソー 『クリスマスに死体がふたつ』2006/05/22

夫に先立たれ、遅まきながら画家を目指して、観光客相手のハガキの水彩画を描くことから、油絵にも手を出し始めたローズ・トレヴェリアンが主人公の、イギリス・コーンウォールを舞台にしたミステリの第三弾です。
いつも思うのですが、題名どうにかならないですかね。

廃鉱でスケッチをしているローズの耳に女性の悲鳴が聞こえてきました。
警察に電話をしますが、なにも見つからず、警察には呆れられてしまいます。
元恋人の警部ジャックにも気をつけるようにと言われる始末。
つきあい始めたばかりのニックには、元ガール・フレンドのモデル、ジェニーが別れてからもつきまとっているようです。

画家ステラの個展のパーティの後にジェニーが行方不明になり、死体で見つかります。
ローズが悲鳴を聞いた廃鉱では、白骨化した女性が見つかります。
ニックとローズが容疑者として疑われ、ローズは事件を探り始めます。

このミステリーの良さは、主人公のローズが成熟した女性だということです。
未亡人ながら、しっかりとした自分を持っていて、男性との付き合いもしっかりこなし、冷静にその男性の良いところも、悪いところも見通します。
うっかりした男性は彼女にはひじ鉄をくらうのが落ちです。
若いモデルのジェニーが殺され、彼女を尋問しに来た警官が、「ミス・マンダーズは若くて美人でしたー強敵、といえますね」と言われ、ぽかんとしてしまうローズ。
彼女は「若いとか美人とかいう形容詞が頭にうかぶことはないのだ。むしろそれよりは知的に見えるほうがいい」のです。

その他にも、イギリスの地方の様子が克明に書かれています。
例えば、
「頑固なのは高齢者ばかりではない。…ドリーンはイングランドとコーンウォールの境界をなしているテイマー川を渡ってくる者すべて<よそ者>イコール<ロンドンの連中>と見なしているため、ロンドンとグロスターシャーはちがうといっても、認めようとはしないといことがわかった」
このような地方特有の閉鎖性も書かれています。
イギリス人はなかなかよそ者に心を開かないといういい伝えがありますが、本当なのでしょうね。

もうひとつ、すばらしいのは景色です。
コーンウォールには行ったことがありませんが、イギリスに行ったら行きたいです。
「…ここより美しい砂浜があるはずはないし、ここより壮観な海岸線はどこにもあるまい」
などと書かれると、見てみたいという気持ちになります。

イギリスの田舎生活はいいな、と思わせられるミステリーです。でも死体は見つけたくありませんがね。