ジョン・ダニング 『愛書家の死』2010/09/05

蔵書家と蔵書狂の違いは何でしょう。
本の中にでてきますが、蔵書家は心から本が好きな人で、蔵書狂は本をため込むだけの人です。

「最悪の蔵書狂は精神に異常をきたしている。連中は読みもしないのに家のなかを本で埋めつくしちまうんだ。欲しい本を手に入れるためには、どこへなりとも出かけ、どんな手で使う。金がないときは・・・」
「盗む」
 
蔵書家の中には初版本などの価値のある本を集めたりしている人もいます。
私は本を読むのが好きなだけで、好きな作家の初版本など欲しいとも思いませんが、思う人がいるんですね。
古本ははっきり言って嫌いです。埃が苦手ですし、どんな人が触っているのかわからないのって、嫌なんです。
愛書家になれても、蔵書家にはなれませんわ。


このシリーズも5作目。他の本を読んだかどうか定かではありませんが、今回に限って言えば、好きな話です。

元警官で今は古書店主をしているクリフは、膨大な初版本コレクションを残したというガイガー氏の本の査定をしに、アイダホ州まで行くことになりました。
待ち合わせ場所で待っていると、一時間近くも遅れてガイガーの代理のウィリスがやってきました。
ウィリスの高圧的な態度に飽き飽きしたクリフは仕事を断ろうと思いますが、とりあえず、向こうが折れたので話だけは聞いて、本を見せてもらおうと屋敷まで行くことにします。

ガイガーは本のコレクションのほかに、競馬馬も飼育していました。本は亡くなった妻、キャンディスのもので、馬が彼の人生そのものだったのです。
キャンディスはリッチー鉄鋼社の社長の娘で13歳の時から本を集め始めました。父親はキャンディスをかわいがっており、際限なく彼女の望む物を買い与えました。キャンディスが本を丁重に扱うことを知ると、本を投資とみなし、本に金をつぎ込んだのです。蔵書の半分は娘のキャロンに、残り半分がガイガーのものになっていました。
ウィリスがクリフに、キャンディスの蔵書のいくつかが無くなっており、なにが欠けていて誰が持ち出したのか見つけて欲しいといいます。このことを突き詰めていくと、キャンディスが殺されたかどうかわかると言うのです。

ガイガーには三人の息子と一人の腹違いの娘がいました。息子はどれも人でなしで、馬を扱う仕事をしていましたが、家には寄り付きませんでした。娘は馬のための救援牧場をしていました。
娘のキャロルに会いにいった次の日、クリフは彼女から母、キャンディスの死の真相を調べるようにとの依頼を受けます。
クリフはウィリスからの依頼を断り、キャロルのために仕事をすることにします。

意外なことに、クリフは馬の扱いも上手いんです。ガイガーとキャンディスのことを調べるために、競馬場の厩舎で働くんですから。
弁護士の傍ら古書を一緒に経営している、恋人でもあるエリンとの仲は微妙になってきました。クリフはとうとう「警官にもどりたい」と言ってしまうのです。
エリンはいつクリフが死ぬかもしれないという恐怖と戦うことはしたくないのです。
本のことより競馬界の内幕がおもしろいです。
今までの本を読んでいなくても十分楽しめる内容です。お勧めの一冊です。