ルイーズ・ペニー 『スリー・パインズ村の無慈悲な春』2011/05/26

ガマッシュ警部シリーズの三作目。


このシリーズは哲学的な言葉が書いてあるので、結構好きです。

イースター・シーズンです。カナダの美しい村、スリー・パインズ村では、ちょっとした余興として、丘の上にある旧ハドリー邸で交霊会が催されます。
しかし、この交霊会で少し前から村に住み始めたマドレーヌ・ファヴローが亡くなってしまいます。恐怖から心臓発作を起こしたのではと思われたのですが、不自然な死に方を不信に思い血液検査をしてみると、痩せ薬として使われているエフェドリンが大量に見つかります。エフェドリンは心臓病の人が飲むと死をもたらすのです。
マドレーヌは乳がん治療のため、心臓病を誘発していました。
ガマシュは警部補のボーヴォワール、刑事のニコル、ラコステ、そしてたまたまスリー・パインズの近くにいたルミューを使い、殺人事件の捜査を始めます。

その頃、新聞にガマシュに対する中傷記事が掲載されます。
ガマシュは過去に警察官の悪事を暴いたため同僚からの恨みをかっていました。
ガマシュだけならいいのですが、今回は彼の家族まで巻き込まれています。それで引き下がるガマシュではありません。意外な人を使い、自分を陥れようとした人物を探りますが、それは彼にとって一番知りたくない人でした。

この2つの事件の発端は心の中に巣くう嫉妬です。自分にないものを持っている相手に対する、誰でも少なからず持っている感情です。
人はどうやってこの感情と闘うのでしょうか。

楽しみな哲学的な文を引用してみます。今回はそれほど多くはなかったですが。

「近くの敵」「”愛”に見せかけた”執着”、”同情”に見せかけた”憐れみ”、そして
”平静”に見せかけた”無関心"」
「同情には共感が含まれているの。傷ついた人を対等な相手として見る。憐れみはちがう。誰かを憐れむのは、自分が優勢だと感じているからよ」
「愛は相手のための最善を望む。愛着は人質をとる」

前も思ったのですが、ガマシュの妻のレーヌ・マリーは素敵です。
ガマシュに「恋は盲目だから、どんな姿もすてきよ」なんて、50過ぎた夫婦が言う言葉ですかね。
幸せな家庭生活を送っているガマシュは、仕事で何があろうが幸せなのでしょうね。

スリー・パインズ村にしばらく滞在したいものです。B&Bが出てきますが、ここで出される食事がとっても美味しそうです。
エッグベネディクト、食べた~い。

不思議な魅力のある本です。
人間関係がちょっとわかりずらいですが、相関図なんかを作って読んでいくといいかもしれませんね。