エイヴリー・エイムズ 『名探偵のキッシュをひとつ』2012/04/14

日本初のコージーミステリ専門文庫が創刊されたそうです。
原書房の「コージーブックス」です。
どうも月に2冊ずつ発売されるようで、4月に発売されたうちの一冊が『名探偵のキッシュをひとつ』です。


コージーミステリは探偵役の人がどういう人かで事件以外のお楽しみも変ります。
たいてい探偵役は小さな町に住んでいる、何かお店をやっている女性で、彼女の友人が探偵役をたきつけたり、一緒に調査したりします。
この本もその王道を行っています。

シャーロットはオハイオの小さな町プロヴィデンスにある老舗チーズ店<フロマジュリー・ベセット>を祖父から引き継ぎ、いとこのマシューと一緒に経営しています。
マシューはクリーヴランドの高級レストランのソムリエだったのに、妻に捨てられ、失意の元、双子の娘を連れてプロヴィデンスに戻ってきました。
祖父がシャーロットとマシュウにチーズ店の共同経営をしないかともちかけたからです。
マシューと一緒に店を経営する上で、シャーロットはお店を改装し、リニューアルすることにしました。

彼女の夢はチーズとワインのテイスティング会を開き、秋に通信販売を開始し、お料理教室をし、チーズの料理本を書くというもの。
唯一の悩みは、<フロマジュリー・ベセット>の建物が賃貸だということです。どうもオーナーのエド・ウッドハウスはこの建物を売るようなのです。

シャーロットの祖母は町長で、プロヴィデンス劇場の経営者です。
町長選挙が近づき、ライバルのクリスティーンは祖母の町長辞任を狙って、人々を扇動しています。

新装開店のパーティの日、パーティに来て、女性といちゃいちゃしていたシャーロットの夫エドが、店の前でチーズナイフを胸に刺されて殺されます。
その側に、手が血にまみれた祖母が・・・。
祖母が容疑者になってしまい、逃亡の恐れがないからと外出禁止の在宅拘禁となりました。

ここからが定番。シャーロットは祖母の容疑を晴らすために、犯人探しに乗り出します。

お約束の気になる男性も登場しますが、私が注目するのは、チーズ店の従業員のレベッカです。彼女はアーミッシュ(アメリカ移民当時の生活様式を保持している人たち)出身で、意外と大胆な推理をするんです。

チーズとワインを扱うお店ですから、チーズとワインの薀蓄が読む楽しみのひとつです。
ワインのテイスティングでは、ワイングラスに「白ワインの後に赤ワインを入れるぶんには大丈夫」とのこと。ふむふむ。
例えば、ある日の夕飯。
マーカムのソーヴィニョン・ブラン、アプリコット・クリーム・チーズ・コーヒー・ケーキ、ズッキーニとオニオンのキッシュ。そして、サラダ―青物野菜とスライスしたローマトマト、レッドオニオンに砕いたハンボルト・フォッグを散らし、ドレッシングはオイルとビネガーにつぶしたニンニク、マスタード、お砂糖をひとつまみ。
ある日の朝食。
酸味のあるパン種でつくったパンをトーストし、ダルマチアいちじくスプレッドを塗って、ペラン・オートサヴォワの分厚いスライスを一枚のせる。

私好みの料理です。
ただし、なんのことを言っているのかわからない物もあります。
ちなみにダルマチアとはクロアチアにあるそうです。101匹わんちゃんのダルメシアンの故郷だそうです。
ハンボルト・フォッグって・・・?(北カリフォルニア・ハンボルト産のチーズだそうです)

唯一美味しいのかしら?と思ったのが、ハムとパイナップルのキッシュ。
レシピが巻末に載っているので見てみると、どうも甘いキッシュのようです。
今パイナップルが一個あるので、作ってみようかしら。でもブラウンシュガーとかシナモンがないわ・・・。
ピーナツバターとリンゴのサンドイッチなんて、エ!という感じです。
パンにピーナツバターを塗り、その上にレーズンを散らし、リンゴとチーズを交互に重ねるんですって。
そういえば前に日本の作家の本を読んだら、パンの上にリンゴを乗せるというのがありました。合うんでしょうか?

引越をしたので、今は街歩きをして、美味しそうな店があったら入って物を買っています。当分痩せることはなさそうです。
こんな本を読んだら、なおさらですね。
あ~、美味しいキッシュが食べたいわぁ。