あさのあつこ 『花宴』2015/04/05



小太刀の名手である嵯浪藩・西野家の一人娘・紀江は、一創流の剣士である父・新佐衛門の後を継ぐ婿を父の弟子の中から決めることになりました。
彼女には思い人がいました。
母の形見の櫛を探してくれた三和十之介です。
父も十之介を婿にと考えてくれていたのですが、二人は結ばれず、別の弟子、藤倉勝之進と結婚することになってしまいます。
勝之進は剣の腕は凡庸ですが、性根が真っ直ぐで他人を偽ることのない男でした。
やがて子もでき一見幸せそうな紀江でしたが、それでも十之介を忘れることができません。
そんな紀江に不幸が襲います。
子と父の突然の死です。
紀江は子の死は自分の不実のせい、父の死には何かあるのではと悩みます。
ある朝、勝之進が何者かに斬られて命からがら家に帰ってきました。
紀江は夫の命を受け自ら囮となり、父の仇をうつことになります。

「女子の剣は敵を作り、倒すためのものではありませぬ。己の身を守り、難をはらうためのものです」

小太刀にも名手っていたんですね。
紀江と十之介の立ち会いが二度ありますが、この本のクライマックスです。
最後はハッピーエンドではないですが、運命に翻弄される女よりも、立ち向かう女の方が潔くていいですね。