読んだ本2022/04/15



佐々涼子 『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』
2011年3月11日、宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場は津波に襲われ、機能停止に陥る。しかし工場長は半年で工場を復興させると宣言。誰もが無理だと思うなか、従業員たちは奮闘努力をしていく。

大分前に買っておいて寝かせておいた本です。すぐ読めばよかったと後悔しています。
日本製紙は出版用紙の供給の4割を負っており、石巻工場はその心臓部だそうです。ほしおさなえさんの本で和紙のことを少し学びましたが、この本には洋紙のことが詳しく書いてあり、本や教科書、新聞、雑誌など様々な用途に適した紙を造ることがどれほど大変かがわかりました。
美談だけではなく、報道されなかった震災の負の側面も書かれており、複雑な気持ちになりました。
お勧めの一冊です。

中山裕二郎 『やめるな外科医 泣くな研修医4』
雨野隆治、三十歳。外科医になって三年。受け持つ患者も増え、手術も任されるようになる。しかし同時期に入院した二人の老婦人が手術をすれば助かるのに、手術を拒む。一人は家族への説明も断る始末。
このまま死なせてもいいのかどうか、迷う雨野。
そんな時に手術で失敗してしまい…。

前回は末期ガンの患者を何の用意もせずに富士山に登らせてしまい、唖然としましたが、今回は真摯に患者の死と向き合っています。
でもこういう思いを各医師たちはしているはずなのに、何で患者の心のわからない医師がいるのかしら?

一色さゆり 『コンサバター 失われた安土桃山の秘宝』
修復士ケント・スギモトは狩野永徳の落款が捺された屏風「四季花鳥図」の「春」の復元コンペの参加を依頼される。この屏風は本当に永徳のものなのか。失われた「春」にはどのような絵が描かれていたのか。スギモトは手がかりを得るために助手の晴香と共に京都へ赴く。
一方晴香には恩師の野上から思いもかけないオファーが舞い込む。

『若冲』を読んだばかりだったので、狩野派のことが書かれていて、興味深く読めました。

植松三十里 『レイモンさん』
函館名物「函館カール・レイモン」のハムやソーセージ、ベーコンなどを食べたことのある方は多いでしょう。
そのソーセージを作ったのが、今のチェコ、カルルスバード生まれのカール・レイモンです。この本は彼と妻のコウのことを描いたフィクションです。

レイモンは大正末期に函館にやってきて、宿泊していた旅館の娘コウと出会い、天津まで駆け落ちし、結婚する。チェコに戻り店を開くが、コウは馴染めず、コウの気持ちを慮ったレイモンは函館に帰り、店を開くことにする。
しかしまだ肉食の習慣のない日本人には受け入れられず、やがて戦争が始まる。

レイモンの意固地なところがちょっと嫌でした。コウさんはものすごく苦労したんだろうなぁ。
彼の子孫が誰もソーセージ作りを継いでいないことが残念です。

原田マハ 『まぐだら屋のマリア』
東京の老舗料亭で板前の修業をしていた及川紫紋はある事件を機に料理人としての夢を失い、何もかも投げ出して失踪し、辿り着いたのが尽果というバス停だった。とりあえず崖っぷちにある小屋を目指して歩いて行くと、それは「まぐだら屋」という定食屋で、いつしかそこで働く訳アリのマリアと共に働くことになっていく…。

登場人物の名前を見ると、すぐに何がテーマかわかってしまいますね。
それなりに面白く読めましたが、マハさんとしては今一かな。

望月麻衣 『京都寺町三条のホームズ・18 お嬢様のミッション
ホームズこと家頭清貴は約束の期限が過ぎたのに未だに小松探偵事務所で働いている。仕事始めの日、事務所に上海の大富豪の娘・ジウ・イーリンがやってきて、彼女の父親の仕事相手の娘が京都に来るので、彼女のガイド兼ボディーガードをしてくれないかとお願いしてくる。何故かイケメンであることが大事とのこと。
清貴の出番ですが、葵がいますから、彼はやりたくないです。しかし小松はお金が欲しい。というわけで清貴は金持ちの一人娘で傲慢なお嬢様相手をしなければならなくなります。が、清貴は小松のことなんか頓着しません。断られるように、いつものいけずの彼で行きます。そこは小松、考えます。葵を呼んじゃうんです。
それで上手く行きそうだったのですが、とんでもない事件が起こります。

読んでいて京都に行きたくなりました。今行くと人が少なくていいんだろうなぁ。
外国の観光客が来る前に行きたいなぁ。
あ、本の内容はいつも通り、安定したものですので、ファンの方は安心して読んでね。

波津彬子 『ふるぎぬや紋様帳 六』
漫画ですが、好きなシリーズで、今回で終わってしまったので、書いておきます。
「着物を巡り縁をつなぐ、ふるぎぬや」でしたが、世の流れには逆らえません。
現代の人たちは着物を着なくなり、昔のように物に霊が宿るなんて誰も信じなくなり、ふるぎぬやは閉店してしまいます。しかしそこで出逢った伊都子と青砥には縁があったようです。
私は青砥ももののけの一種だと思っていました。人間だったのね。伊都子と上手く行くといいな。
幻想的な漫画がお好きな方、読んでみて下さい。

どの本もすぐに読めますので、興味があるものがあったら読んでみて下さい。

みんなでお散歩♫2022/04/16

今日はいい天気なので、二匹を連れてお散歩に行きました。
桜は終わったのですが、他の花が咲いています。


藤の花が満開です。いつのまにか咲いていました。


ハナミズキでしょうか。


ヤマボウシかと思って撮りましたが、どうもハナミズキのようです。
ハナミズキは桜が終わるとすぐに咲き、ヤマボウシは5月から咲くようです。


変わった色の椿も咲いています。
他にツツジも咲き始めています。本当にいい季節になりましたね。
これでコロナ禍でなければとつくづく思います。

お散歩の話なのに何で花の写真ばかりと思っているでしょう。
実はわが家の犬たちはカメラが嫌いで、外ではまともな写真が撮れないのです。
ブログにお散歩する犬の可愛らしい写真が載っていると、羨ましくなります。

まず、後ろから歩いている姿を撮ります。


これはまだいい方で、二匹が一緒に平衡に歩いている姿は滅多にありません。
というのも、弟犬が二匹で散歩するとあっちに行き、こっちに行きするんです。
一匹だとまっすぐ歩くんですよ、笑。
影でわかるように、弟が変なところに行かないようにリードで調節しています。


立ち止まったら、こんな感じです。
兄はカメラから顔を背けています。

抱いてみたら…。


二匹共にカメラを向きません。


よくてこんなんです、爆笑。
なんでいつも部屋の中で遊ぶ犬の写真ばかりなんだと思っていた方、お察し下さい。外で写真を撮るのは大変なんですよ。

みんなで散歩すると、いつも弟は後ろにいるママの様子を伺い、道を曲がったり、ママとの距離がひらいたりすると立ち止まり、全体重をかけてパパが歩くのを止めます。
今回初めて兄がそうしました。と言っても兄は疲れたので、ママに抱いてもらいたかったようです。ちゃっかりもんの兄です。
弟は兄の姿を見て、自分も抱いてもらいたいのか、ママの方に来ようとしますが、パパに阻止されていました、笑。

兄は6月で10歳。獣医さんからも言われましたが、お散歩もほどほどがいいようです。これからは気温が25度以下だったら、短時間のお散歩をし、それ以上だったら家で遊びますわ。
とにかく病気にならずにいつまでも元気でいて欲しいです。

「エール!」を観る2022/04/18

フランス映画「エール!」のリメイク版が、今年アカデミー賞の作品賞を取った「コーダ あいのうた」です。
「コーダ」を観ていないのでなんとも言えませんが、「エール」を観た印象から大衆向けでわかりやすい映画のように思います。

ちなみに「コーダ(CODA)」とは、「聞こえない親を持つ聞こえるこども(Child-ren of Deaf Adults)」のことです。


フランスの田舎町に住むベリエ家は、4人家族。陽気な母ジジと熱血漢の父ロドルフ、そしておませな弟カンタンの明るく仲のいい家族だが、高校生のポーラ以外、父も母も弟も耳が聞こえない。
ポーラは高校に通いながら、家畜を育て、チーズを製造販売している両親のために、健常者との仲立ちとして重要な役割を果たしている。電話に出たり、商品の説明をしたり、病院についていっては医師の説明を手話で通訳したり…。

ポーラはまだ初潮もなく、恋人もいないが、秘かにガブリエルという男の子に思いを寄せていた。彼が選択授業でコーラスを選んだのを知り、同じ授業を希望する。
コーラス担当の教師トマソンは歌を聞き授業の参加者を決めていた。
ポーラは友人のマチルドが一節歌っただけで落とされたことに対し「くだらない」と一言言っただけで合格となってしまう。

歌の才能があるガブリエルはパリの音楽学校のオーディションを受けることになっており、トマソンの個人レッスンを受けていた。
トマソンは年末の発表会でポーラとガブリエルをデュオで歌わせることにし、授業後二人にレッスンすることにする。

その頃、村では村長選挙が行われることになっており、父のロドルフは現村長に反発し、村長選挙に出馬することにする。
そのためポーラは忙しくなる。

レッスン以外にも練習しようということになり、ガブリエルがポーラの家にやって来る。両親は初めてポーラが男の子を連れてきたので、落ちつきをなくす。
運の悪いことに、この時、ポーラは初潮を迎えてしまう。喜んだ母がとんでもないことをしたので、ガブリエルは気まずくなり帰って行く。
次の日、ポーラに嫌みを言う女がいて、ガブリエルが昨日のことを話したと思い、頭にきたポーラはガブリエルの頬を叩いてしまう。
その日の授業でやけになったポーラが大声で歌うと、トマソンはポーラの声に感動し、ガブリエルと一緒にパリの音楽学校のオーディションを受けるように勧める。
合格すると家を出ることになるため、なかなか決心がつかないポーラだったが、とりあえず家族に内緒でオーディションを受けることにする。

ガブリエルは声変わりをしてしまい、オーディションを受けられなくなる。
ポーラは家業や選挙活動の手伝いと学校、レッスンと忙しい毎日を送る。
そんなある日、選挙のテレビ取材の予定が変わり、ポーラはレッスンに行けなくなり、いい加減に通訳をしてしまう。そのことに頭に来た両親たちに怒られ、なじられたポーラは思わずオーディションのことを話してしまう。
父は自分たちがポーラに頼りすぎていたことに気づくが、母はポーラがいなくなることに耐えられず、猛反対する。
果たしてポーラはどうするのか…。


フランスの高校生に歌わせる歌にびっくりしました。
「愛のやまい(La maladie d'amour)」とか「愛の叫び(Je vais t'aimer)」ですもの。「愛の叫び(Je vais t'aimer)」なんて「マルキ・ド・サドより激しく 娼婦が頬を染めるほど 愛の叫びがこだまする ジェリコの壁が震えるほど 愛したい」などと高校生が歌うんですよ。さすがアムールの国。
最後に歌う「Je vole」は映画の内容に合っていて、感動しましたけどね。

フランスの手話が激しくて、声がしなくても伝わってきました。
手話は意外と饒舌なんですね。親子喧嘩の場面なんかでは耳を塞ぎたくなりました、笑。
両親役の役者は耳が聞こえるようですが、上手く演じています。
ちょっと大げさすぎと思ってしまうほどでした。
この映画はコメディよりなのかな?

耳が聞こえなくても、聞こえても、子どもが旅だつ時の親の気持ちは同じ。
気持ちよく送り出してやりたいものだと思った映画でした。
そういう意味で日本のタイトルが「エール」なんでしょうね。フランスのタイトルは「ベリエ一家」ですけど。
あ、親子で見ると気まずくなりそうなので、止めましょうね、笑。

<今週のおやつ>


カフェタナカのクッキーです。
食いしん坊の兄犬がいい匂いがするからクンクンと嗅いでいます。


グリーンの缶はこんな感じです。
食べ過ぎないようにしなくては…。

「LET THEM ALL TALK」を観る2022/04/19

監督がスティーヴン・ソダーバーグで、主演がメリル・ストリープ。
低予算の映画で、実際に豪華客船クイーン・メアリー2で撮影され、台詞の多くが即興ということです。


小説家のアリス・ヒューズは英国の文学賞を受賞したので、編集者カレンの強い勧めもあり、飛行機は苦手なので船で授賞式に行くことにする。
甥で大学生のタイラーを連れ、30年以上も会っていない2人の友人を招待することにする。
しかしせっかく招いた友人に、私は執筆に集中したいから、会うのは夕食の時だけよ、後は好きにして、なんて言う。

友人の一人、スーザン(ダイアン・ウィースト)は家族にも恵まれ、穏やかな暮らしをしていた。せっかく豪華客船の旅に招待されたのだからと好奇心から参加した模様。
のんびりとマイペースで豪華客船の旅を楽しむ。

もう一人の友人のロベルタ(キャンディス・バーゲン)はランジェリーショップの店員をして暮らしている。
実は彼女はアリスに恨みを持っている。アリスが彼女のことを小説に書いたせいで、自分の結婚生活が駄目になったと思っているのだ。
スーザンは冷静にロベルタの思い込みだと言うのだが、ロベルタは聞かない。
ロベルタは何故自分が招かれたのか疑問に思っているが、そこは置いて置き、金を持っている男を捜し、親しくなろうと思っている。
アリスがロベルタと話をしようと飲みに誘っても、お茶に誘っても、ロベルタは断る。とにかく男と出会う機会を逃したくないのだ。

タイラーはアリスに内緒で船に乗っていたカレンと出会い恋に落ちる。
でもカレンはその気はなく、アリスが新作に何を書いているのかタイラーに探らせる。
タイラーは年上の女性たちに振り回されて、可哀想。
とにかく彼だけが唯一アリスを理解し、尊敬し、愛している人です。

こんな女三人が何を話すのか。そしてアリスは何のために旧友を招いたのか。
実はアリスには誰にも言わなかった秘密があります。

豪華客船の中を垣間見ることができて楽しかったです。
色々な施設があり(プラネタリウムもあるのよ)、様々なイベントがあり、乗客を飽きさせない工夫がされているのですね。
でも豪華客船にはコロナのせいでいい印象がないですねぇ。たぶん私は機会があっても乗らないでしょう。

「また、あなたとブッククラブで」は肉食系女子キャンディス・バーゲンにびっくりしましたが、この映画でも凄かったわ。強突張りのえげつない役が似合っていたわ、笑。自分の不幸を他の人のせいにするなんて、人間として最低でしたけどね。
女三人、いや二人か、のゴタゴタがタイラー君で癒やされました。
俳優達の演技が上手いので、最後まで観ていけます。
何を描きたかったのかは謎ですけど、それでも雰囲気が好きな映画です。

アン・タイラー 『この道に、いつもの赤毛』2022/04/20

タイトル(『Redhead by the side of the Road』)を表すものが表紙にあります。わかるかなぁ…。


アン・タイラーというと、平凡で善良な、どこにでもいるような孤独な人を温かな目線で描く作家です。
この本の主人公のマイカもそんな人です。

マイカは44歳。ボルティモア郊外に住み、コンピューターの出張修理をしながら、アパートの管理人をしている。
結婚は一度もせず、今決まった彼女がいるが、一緒には暮らしていない。
毎日決めた日課に従って行動している。

ある日、アパートの入口の階段に一人の青年が座っていた。
彼はブリンク・アダムズと名乗り、ローナ・バーテルの息子だと言う。
マイカは驚く。ローナは大学時代の元カノだ。一体彼に何の用があるというのだ。
話を聞いてみると、彼は自分がマイカの息子ではないかと思っているようだ。
どう考えてもローナと会わなくなって20年以上経つので、18歳の彼が息子である可能性はないし、ローナとはそういう関係ではなかった。
小学校の教師をしている彼女のキャス・スレイドが食事にやって来て、ブリンクと一緒に食事をする。
キャスはブリンクがマイカのところに泊まると聞くと、泊まらずに帰って行った。
次の日の朝、キッチンのカウンターに置いてあったブリンクの携帯が鳴ったので、覗いてみると、どうもブリンクは母親に言わずにマイカに会いに来たようだ。
母親に連絡するように言うと、ブリンクは怒って出て行ってしまった。
マイカはローナに息子のことを知らせることにする。

いつものような一日を送ろうと思ったのに、キャスからマイカは別れを告げられる。
キャスが住むべき家がなくなると心配しているのに、マイカは同居しようと言わなかった、それなのにブリンクには空き部屋を提供した、とマイカをせめる。
キャスが同居してもいいなんて思っていたなんて、女心ってわからん、と思うマイカ。

淡々となんのハプニングも起こらずに終わる人生だと思っていたら、ブリンクという思わぬバグ(でいいかな?)が見つかり、マイカの人生は乱され、図らずとも再起動が必要になってしまいます。戸惑いながらも、新しい世界へ一歩踏み出すマイカ。
人生にはちょっとした冒険が必要なのかもしれませんね。

アメリカ版の心がほっこりするお話です。

<今日のわんこ>
相変わらず、おもちゃの好きな弟。
新しいカモシカを出したら、その日のうちに音が出なくなりました。
彼の顎の力はすごいです。


今日は古い雪だるまで遊びました。
なかなか離しません。


兄も呆れています。

ファビオ・スタッシ 『読書セラピスト』2022/04/22

読書は「癒やしの活動」と言われています。
医療の専門家や心理学者は読書の癒やし効果を認め、長い間治療の補助として本を処方してきたそうです。
1916年にアメリカの牧師でエッセイストでもあったサミュエル・マッコード クローザーズ(Samuel McChord Crothers)が「ビブリオセラピー(読書療法:Biblio-therapy)」という言葉を初めて使い、1930年代にアメリカのメニンガー兄弟の研究をきっかけに読書療法は注目され、2013年6月にイギリスでは政府公認で医師が精神疾患のある患者に本を処方する医療システムが始まったらしいです。
ストレスの約68%が読書により軽減され、本を読む人は読まない人よりも2年長生きをするらしいですよ。(「STUDY HACKER」2019/3/24より)

みなさん、本を読みましょう!
ただし、読書習慣のない方にはこの本は薦めません。
この本は、文学的ミステリー小説と言ったらいいのかな、読書初心者にはとっても読みずらい本です。
ミステリーが好きなら、東京創元社のハードカバーではなく、創元推理文庫から始めましょう。


国語教師の資格を持っているにもかかわらず、何故か採用されないビンチェ・コルソは、二ヶ月の約束で古い建物の最上階の部屋を借り、読書セラピーを開業する。
やって来たのは、「髪型がいうことを聞かないという女性」や「夫を下宿人として見ていた女性」、「十二歳歳下のライバルのせいで見捨てられた女性」、「世界を見過ぎたという、目に病気のある女性」、「太らなければならない女性」etc.。
それぞれが癖ありで、ビンチェは彼女たちに翻弄される。
彼女たちは彼が処方する本に納得するかと思えば、怒り出す始末。(どちらかと言えば納得しない人の方が多い、笑)
意気消沈するビンチェ。

そんな頃、階下の女性が失踪し、夫が殺したのではないかと言う噂が出回る。
彼女が読者家だと知り、ビンチェの好奇心は高まる。
知り合いの古書店主のところに残されていた彼女の本のリストを見たビンチェは、リストを手がかりとして彼女の行方を追う。

謎解きを楽しむというよりも、やって来る女性とビンチェとの丁々発止の会話を楽しんで読むという感じです。
残念ながら処方されるのが海外文学作品なので(一冊日本の本があります。意外な本ですよ)私が読んだ本が少ししかなかったです。
出てくる本のあらすじを読んでから読むとより面白く読めたかもしれません。

シリーズになっているようです。
頼りなさげなビンチェ君がちゃんと読書セラピストとしてやっていけるのか、おばさんは心配です、笑。

蛇足ながら日本読書療法学会というのもあるようです。

ピーター・スワンソン 『ケイトが恐れるすべて』2022/04/23

読んでいない、翻訳されているスワンソンの最後の本だと思っていたら、もう一冊(『時計仕掛けの恋人』)翻訳されていました。でももう買えないみたい。面白くないのかな?


過去の事件のトラウマからパニック障害と不安神経症になったケイトは、転地療養の意味もあり、半年間の約束でボストンに住んでいる又従兄弟のコービンと住居を交換することにする。

ボストンに着いた次の日、隣に住む女性が死体となって見つかる。
彼女の友だちだという男や隣の棟に住む男がケイトに近付いてきて、コービンと彼女が付き合っていたと言う。しかしコービンは否定する。
コービンは嘘を言っているのか?
彼女をコービンが殺したのか。それとも…。
疑心暗鬼になるケイト。

ケイトが面倒くさい女で、まあ昔にあったことがトンデモないことですから、そうなっても仕方がないのですが、私の一番苦手なタイプの主人公です。
自分には必ず悪いことが起こり、悪い人が寄ってくると思い込んでいます。
恐怖の素はすべて彼女の頭の中にあるんですよ。
それに自ら危険に飛び込んでいっているみたいです。
こういう風だから、〇〇〇くんが近付いてくるのではないのかなぁ。
これからも大変な人生を歩みそうです。

だんだんと明らかになっていく男たちのことは、読んで確かめて下さいませ。
はっきり言ってまともな人ってこの本の中に一人もいないみたいです、笑。

ミステリーと言うよりサスペンス色の強い本です。
イヤミスが好きな方にはいいかも。


<今日のわんこ>
お散歩に出るのが遅れ、暑くなってしまいました。
水を飲ませると、こんな風に。


兄よりも弟の方が強いですねぇ、笑。


兄、頑張って水を飲む。

4月なのに、25度を超える暑さ。本格的な夏になったらどうなるのでしょうね。

原田ひ香 『古本食堂』2022/04/24

この本の中に『読書セラピスト』と同じように人に本を勧める場面が出てきます。
セラピストと古本屋の店主が勧めるのと違いはないとは思うのですが、私が思うに、圧倒的にセラピストの負けです、笑。
勧めるのが人生経験があまりない若い男性と酸いも甘いも噛み分けた女性との違いでしょうかね。


鷹島美希喜は国文科の大学院生。このまま研究の道に進むかどうか迷っていた。
そんな時に、神保町で古書店を営んでいた大叔父の滋郎が急逝し、滋郎の妹・珊瑚がお店を継ぐことになる。
美希喜は母親から珊瑚が店をどうする気かを探るように言われ、店を訪れるうちに店でバイトをするようになる。

北海道の帯広で介護ヘルパーとして働いていた珊瑚は兄の滋郎が亡くなったため、兄が住んでいた東京の高円寺にある一軒屋と神保町で営んでいた古書店を引継ぐことになる。
何もかもわからないことだらけだけど、大家の平塚さんや辻堂出版の社長、隣の喫茶店の美波さん、「汐留書店」の店主・沼田さんなどが親切に教えてくれるので、なんとかなりそうだが、でもどうしよう、このお店…。
ある日、滋郎の妻だと名乗る変な女がやって来た。
彼女は滋郎が店を任せたいと言っていたと言うが、可笑しな事に葬式にも来ていない。滋郎の妹だと名乗ると大人しく帰っていったが、彼女が言った戸越にいる子持ちの女のことが気になった。家にあった二つの茶碗の片割れが彼女のものなのか。
珊瑚は戸越銀座に行ってみるが…。

神保町には大分長い間行っていません。
絶版本で欲しいものがあれば買いますが、古本があまり好きじゃないのです。
それに若い頃は店主のおじいさんが怖くて入りずらかったです。
本の中に出てきたカレーとか鮨とかがものすごく食べたくなりました。
御茶ノ水から歩いていくことが多かったのですが、途中にある古瀬戸珈琲店はまだやっているかしら。
ロシア料理の壺焼きを初めて食べたのは神保町だったかも。
三省堂の地下にロシア料理店がなかったっけ?
そうそう岩波ホールが7月29日で閉館するようですが、その跡は何になるのでしょうね。
都心にはしばらく行っていないですが、そろそろ行ってもいいかなぁ。

あ、そうそう本のことでした。
美希喜の指導教官、後藤田先生の言葉が深いです。

「・・・ここに残っているものは末永く残していかなくてはならない。私たち、研究者はその長い長い鎖をつなぐ、小さな鎖の一つでいいではないですか。(中略)ただそれを後世に残す小さな輪で」
「・・・古本屋さんは私たち学者と同じように、本や物語といった文化を後世に残す、そういう輪です」

滋郎と関係の深い珊瑚と美希喜のことがメイン料理で、古書店を訪れる人たちとの交流やお勧めの本、美味しい神保町のお料理が付け合わせです。
古本食堂は美味しいお料理を出してくれました。
お勧めの本です。

*「マンガでかじるこの一冊」を見ると、簡単にあらすじがわかります。

「アリスのままで」を観る2022/04/25



アリス・ハウランドは今度の誕生日で50歳になる、コロンビア大学の言語学者。
夫のジョンは医師で、子どもは三人いる。長女のアナは法科大学を卒業し、法律の道へ進んでいる。現在妊娠中。長男のトムは医大生。次女のリディアは家族の厄介者で、ロサンジェルスで舞台女優を目指している。

アリスはUCLAで講演をしている時に「語彙」という言葉が出てこない。
それ以来、ジョギング中に道がわからなくなったり、キャンパスで迷ったり、単語や人の名前を忘れるようになる。
神経科の医師に見てもらうと、MRIも血液検査も問題がなかったが、記憶テストに問題が見つかる。
年齢に比べて極端な近時記憶障害があり、記憶機能が低下しているのだ。
病名は遺伝性の若年性アルツハイマー型認知症。
子どもに50%の確立で遺伝し、100%発症するという。
三人の子どもたちにその話をすると、アナとトムが遺伝子検査を受ける。
トムは陰性だったがアナは陽性だった。

症状が徐々に進み、仕事にも支障が出てくる。
大学に若年性アルツハイマー型認知症であると告げ、仕事を辞める。
アリスは症状がもっと進むことを考え、睡眠薬を手に入れ、自分宛のビデオレターを作り、質問に答えられなくなったら、睡眠薬を全部飲むようにという指示を入れておく。

やがてアリスは別荘のトイレの位置がわからなくなり、粗相をしてしまう。

ジョンはアリスの状況を見てみないふりして仕事にのめり込んでいく。
一年間休暇を取る予定だったが、メイヨークリニックからいいオファーが来たので休暇を取るのを止めて、メイヨークリニックに行くことにする。
アリスを連れて行きたいが、環境が変わることを恐れるアリスを置いていくことにする。
結局リディアがニューヨークに戻り、アリスの面倒をみることになる。

この映画で感動的だったのが、アリスが認知症の会みたいなところでスピーチする場面です。
書いた原稿のどこまで話したかわかるようにマーカーで印をつけながらスピーチをします。
自分は今”なくす技”を日々練習している。記憶は私の宝物だった。しかし私が人生で蓄えた全てが、努力して得た全てが剥ぎ取られていく。”地獄”だ。
でも私は今苦しんでいない。闘っているんだ。瞬間を生きているんだ。
などというようなことを語っていきます。(正確ではないかも)

言語学者として自分の知性と知識に自信のあったアリスとしては、こんなこと我慢ができないでしょうね。でも結局すべて忘れてしまうのだから、本人はそれほど苦痛を感じないのではないかしら(そう思いたいです)。
側にいる人にとっては、とても辛いことでしょうね。
家族それぞれにアリスとの向き合い方が違います。
トムは医学生ですから忙しいこともあり、家族からある一定の距離を取っているみたいです。
アナは子どもが生まれたばかりですし、若年性アルツハイマー型認知症になるのが確実ですから、一番微妙な立場です。アリスを見ていると、将来の自分の姿が見えますから、アリスに近寄りたくないでしょうね。これからどうやって発症の恐怖に対処して生きていくんでしょう。心配です。
リディアは大学に進まず、女優という不安定な職業を目指していたため、親と上手く行っていませんでした。しかし最後にアリスと和解し、父親が当てにならないことを察したのか、NYで演劇をやりながらアリスを介護をする決心をします。
夫のジョンはどうしようもない弱い人です。アリスと向き合うことを避けます。
本当にアリスを愛しているなら、最期まで側にいて欲しかったです。医者ですからお金があり、アリスの介護のために人を雇うことができたでしょうに。ミネソタでさっさと次の人を探して再婚しそうです。結局男は愛と仕事なら仕事を取るのかしら?
あくまでも私の意見ですが、男の方が女よりも身内の病や死と向き合うことに及び腰ですね。

この映画の原作は、ハーバードで神経科学の博士号を取得している神経科学者のリサ・ジェノヴァが書いた『Still Alice』です。
彼女はもし自分が…と思いながら書いたのでしょうね。
監督のリチャード・グラツァーはALSを患っており、この映画が最後となったようです。

お涙ちょうだいの映画ではなく、淡々とアリスと家族の様子を描いた映画でした。

柴田よしき 『あおぞら町の春子さんの冒険と推理』2022/04/26



園田春子はプロ野球の二軍選手、拓郎と結婚してから埼玉県青空市の古いマンションに住んでいる。
看護師をしていたが、拓郎を支えるために辞めたのをちょっと後悔している。でも拓郎が今の仕事をしていられるのは、長くても十年…かな?看護師の資格は一生ものだから、いつでも復帰できるから大丈夫。
今は週に三回、スポーツ栄養学基礎講座に通っている。

「春子さんと、捨てられた白い花の冒険」
いつものようにテラスに出て、眼下の町並みを眺めていると、一人の男性が箱のようなものを抱えてゴミの集積所に近付いている。
箱の中身はパンジーのようだ。春子はパンジーが欲しかったので、急いで集積所まで行き、男性に話しかける。
男性は田川と言い、妻が花を育てるのが好きで、妻に捨ててくるように頼まれたと言って、快くパンジーをくれた。
燃えるゴミの日に土は捨てては駄目なんじゃないかと思う春子。
三日後、パンジーをもらったお礼をしようと、ベランダから集積所を見ていると、田川が現れた。彼はまた段ボールを持っている。中身は蕾のある百合だ。
春子は田川の妻がわざとその百合を捨てさせたのではないかと考え…。

「陽平君と、無表情なファンの冒険」
春子と拓郎が怪我で二軍落ちしている川田陽平と彼のフィアンセと飲んでいる時に三塁側の観客席に最近いつも座っている女性のことが話題となる。
彼女は試合中、まったくリアクションがないという。彼女は野球ファンではないのだろうか?春子は彼女のことがすごく気になる。

「有季さんと、消える魔球の冒険」
春子は「YUKI」さんがインスタグラムに載せているお弁当の写真を参考にしており、いつもコメントを付けている。
ある日、YUKIからダイレクトメッセージが届く。
YUKIは元プロ野球選手の本橋滋の妻有季で、この春青空市に転居してきたと言う。何故か春子のことを知っているようだ。
春子は有季とお茶をすることになる。
有季は春子に友だちになって欲しいと言われ、滋の過去を聞かされる。

何と言っても日常のたわいもない謎を解いていく春子さんがいいキャラです。こんなお嫁さんなら私も欲しいわ。
プロ野球のことは全く知りません。イチロー凄いわとか、OTANI-SAN、性格よさそうとか思うだけですが、この本を読むと野球界のことが少しわかります。
アメリカの野球選手にトロフィーワイフってあるのね。大谷選手がどんな女性と結婚するのか楽しみですね。金髪美女でお願いします、笑。
そうそう野球盤に消える魔球があったなんて知っていました?
夫に聞くと知っていて、消える魔球は打てないと思っていましたよ。

本格的野球ファンには出てくる蘊蓄は物足りないとは思いますが、ほっこりする後味のいい終わり方のお話です。


<今週のおやつ>


頑張ってクリックして買った、シヅカ洋菓子店のクッキー。
ザクザクとしたクッキーです。
「地球環境への負荷が小さいサスティナブルな栽培方法で収穫された優しい原料をシンプルに使用している」そうです。こういうクッキー好きかも。

<今週のパン>


この紙袋、前の「どんだけ自己中」に似ていませんか。
「うん間違いないっ!」と言うお店の食パン「Oh!間違いない」と抹茶パン「Oh!抹茶ー!」です。名前の付け方がwww。
「どんだけ自己中」と同じ岸本拓也がプロデュースしたようです。
食べてみると、こちらのパンの方が好みです。