「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」を観る2022/08/07

2019年のスウェーデン映画。
私は題名で映画を観るのを決める傾向があるので、失敗する確率が高いです。
でもこの映画は題名から想像していたのと違うところがあったけど、面白かったです。


63歳のブリット=マリーはケントと結婚してから40年間、家を完璧に整え、夕食を作ってきた。ケントは出張が多く、家にいることが少ない。帰ってきても黙々と食事を食べ、すぐにサッカーの試合を観るためにテレビの前に座る。

ある日、ブリット=マリーがスーパーで買い物をしていると、ケントが心臓発作を起こしたという連絡が来る。
急いで病院に行くと、女がいた。
ブリット=マリーは家を出ることにする。

職安に行くと、60歳以上の人への求人は男女を問わずないと言われる。
ブリット=マリーは結婚する前にウエイトレスをしていただけなので、尚更だ。
唯一あった求人はボリという村のユースセンターの職だけ。
ユースサッカーのコーチ業を兼任するという条件がついていた。
ブリット=マリーはボリに行くことにする。

ボリの町は人けがなく、ユースセンターは荒れ放題。
「一日ずつよ、ブリット=マリー。一日ずつよ」と自分を元気づけ、ブリット=マリーはユースセンターの掃除を始める。

翌朝、ガラスが割れる音に起こされる。
ユースサッカーの子どもたちが来て、サッカーをしていたのだ。
ブリット=マリーはガラスを片付けたらボールを返すと言って、ボールを抱えてスーパーに行く。
スーパーの店主にユースセンターで働くと言うと、ウソだろと返される。
とりあえずガラスを入れて貰うことにする。
買い物をしてユースセンターに戻ると、子どもたちはサッカーをしている。
ボールは他にもあったのだ。
センターの中にサミという青年がいて、ガラスはすぐには手に入らないと言ったのに、代金を現金で払わせられる。
彼には妹のヴェガと弟のオマルがいて、二人ともサッカーをしていて、ユースワーカーに応募したけど落ちたそうだ。

一生懸命ユースセンターの掃除をするが、そのかいもなく、きれいにした後をこどもたちが汚す。
頭に来たブリット=マリーは罰として彼らに片付けと窓拭きをさせる。
なかなか落書きが消えない。
ヴェガがブリット=マリーに言う。
「落書きは破壊行為。サインは存在の証明」
試合では「得点できなくて、勝てなくても、チームの存在を示したい」。

ある朝、警察官のスヴェンがブリット=マリーを歓迎するために、手作りのジャムを持ってやって来る。
ユースセンターで暮らすのも大変だろうから、部屋を紹介してくれるというのに、ブリット=マリーは断る。
しかし夜中にネズミが出て、スヴェンの好意にすがることにする。

スヴェンの紹介してくれたのは元プロサッカー選手で半盲の女性バンクの家の部屋だった。彼女の父親がブリット=マリーの前任者だった。
部屋を借りることにし、部屋に入るとすぐに泣き出すブリット=マリー。
彼女が思い出すのは死んだ姉のイングリットのことだった。
イングリットはパリに行きたいと言っていた。

ブリット=マリーは彼女なりにサッカーの練習を始める。

ヴェガにコーチの夢はと聞かれ、言えないブリット=マリー。
「行きたいところはパリかな」と答えると、「コーチのパリが私のサッカーよ」と言うヴェガ。

町の委員会のレクレーション担当だというマックスの父親が来て、ブリット=マリーにコーチの経験があるか、ライセンスを持っているかと聞いてくる。
ないなら、すぐにユースセンターを閉鎖すると告げられる。

洗濯をしていると、スヴェンが食事に誘いに来る。
彼は妻の浮気で、二年前に離婚していた。
踊る二人。
楽しい時間を過ごし、スヴェンにユースセンターまで送ってもらうと、夫のケントが待っていた。
彼はブリット=マリーに謝り、たった一度のあやまちだった、女とは別れたから帰って来てくれと言う。

その夜、バンクにサッカーのコーチをやってくれるように頼むが、断られる。
「サッカーはオヤジと一緒に死んだ。自分のことを考えろ」と言うバンク。

スーパーに行き、ポートワインを出してもらい、飲んでいると、サミがユニフォームを持ってくる。
彼もサッカーをやっていたが、今は妹と弟の面倒をみるのが先で、サッカーは二の次だと言う。
ブリット=マリーが酒を飲んでいるのに気づき、咎める。
ブリット=マリーは「私は63歳の行くところもないおばさん。子どもに馬鹿にされ、サッカーも知らない。だからいいでしょ」と開き直る。

サッカーの練習は続く。

バンクにコーチは上手くいっているかと聞かれ、ブリット=マリーは答える。
「あなたが言っていたように私は役立たずよ」。

なかなか上手くならず、やる気をなくす子どもたち。
そこにバンクとスヴェン、サミたちがやってきて、練習相手になってくれる。
練習後、サッカーの試合をテレビで観ている子どもたち。
他の仕事をしているブリット=マリーのところにスヴェンがやって来て、「あなたは素敵です」と告げる。

試合前日。
マックスの父親がやって来て、ライセンスがないと試合には出られないことを子どもたちに言っていないことを責められる。
試合に出られないことを知った子どもたちは怒り、ブリット=マリーを責め立てる。

家に戻るとヴェガが待っていた。
彼女の母親は去年交通事故で死に、父は家を出ていき、サミが面倒をみてくれているそうだ。
ブリット=マリーが10歳の時に姉が死んでから、「割れた破片を片付けないで、人生を片付けてしまった」と言うと、ヴェガはブリット=マリーに「なんでもそう言って諦めるの。私は戦い続ける。私にはサッカーしかない。明日、チームの存在を証明する。だからあなたも戦って」と言って去って行く。

次の日の朝、朝食を食べていると、バンクがライセンスを探し出したと言って、ライセンスを見せる。

試合会場で、ブリット=マリーは子どもたちにこう叫ぶ。
「存在を見せつけて!」

試合は子どもたちの満足する結果となった。
ブリット=マリーは試合に感動したと言うマックスの父親に、ブリにまともなサッカー場を作り、ユースセンターを再開するようにお願いする。

試合後のパーティの最中に、ケントがブリット=マリーを迎えに来る。
ブリット=マリーは車に乗り、ケントに今までの不満をぶつける。
彼女は夫に気づいて欲しかった。
姉が死んで、抜け殻のようになった母から気づいて欲しかったように…。

ブリット=マリーは最優秀ファイターになる。
「チームと協力し、チームのために戦った人。絶対に不可能と思えたことをやり遂げた人。ボリに諦めない心を教えてくれた人」

スヴェンはブリット=マリーに言う。
「誰かが家をノックするたびに、それがあなたであることをずっと願うよ」

朝、バスに乗るブリット=マリー。
彼女が向かったのは…。

原作の本があるそうなので、そのうち読んでみようと思います。
40年間淡々と主婦をやり続け、笑うことさえも忘れてしまった無表情のブリット=マリーがだんだんと変わっていくところが見所です。
でも63歳のサッカーをしたことのない人に、コーチはできないでしょう。
私なんか、すぐに疲れてしまい、次の日は筋肉痛で動けなくなるわ、笑。
そんなツッコミ処はありますが、ブリット・マリーには共感できました。
誰でも自分の存在を証明したいのよねぇ。
映画の最後には「エー、どういうこと」と思いましたが、その後に優しいスヴェンの元に行って欲しいと思いました。

スウェーデンで大ヒットしたと言いますが、日本の女性よりも恵まれているように思えるスウェーデン女性も、ブリット・マリーに共感できるのですね。
ちょっと荒削りのところもありましたが、好きな映画です。
そうそうヴェガ役の子が可愛かったわ。