森明日香 『写楽女』2023/11/25

『おくり絵師』を書いた森さんのデビュー作で、第14回角川春樹小説賞を受賞した『写楽女』を読んでみました。


寛政六年(1794年)の春、お駒は日本橋通油町の地本問屋「耕書堂」で女中として働いている。
耕書堂の店主は蔦屋重三郎で、店では錦絵や黄表紙、狂歌集、絵草紙などを扱っている。
重三郎は喜多川歌麿を見いだし、美人絵の絵師として江戸一番の売れっ子にしていた。

ある日、店に一人の男がやって来る。
彼は重三郎が役者絵を描かせるために発掘してきた新しい絵師で、写楽と名づけられ、お駒は写楽のために料理を作ることになる。

5月興行が始まると同時に写楽が描いた役者絵が耕書堂の店頭に並んだ。
それは誰も見たことのない絵だった。
背景は豪華な黒雲母摺りで、役者の胸から上だけを描いている大首絵だ。
客たちは面白がって買っていったが、役者や芝居小屋の関係者は激怒した。

重三郎のところに山東京伝がやって来た日、お駒は重三郎に呼ばれる。
彼女の幼馴染みの鉄蔵と上方から来て耕書堂で寝泊まりしている余七、そしてお駒の三人で写楽の絵の手助けをして欲しいと言うのだ。
自信のないお駒だったが、写楽からも鉄蔵と余七の間に入って取り持って欲しいと頼まれ、お駒は覚悟を決める。
写楽は役者の顔を、手足と着物など身体は鉄蔵と余七が描き、お駒は線を引くことに徹する。

やがてお駒は自分が写楽にほのかな思いを寄せているのに気づく。

家族に縁がなく、不幸な人生を送ってきたお駒が写楽と出会い、彼に思いを寄せることで、新しい人生を切り開いていくことになります。
「叶わぬ恋こそ美しい」
この言葉が心に響きます。

「写楽女」となっていますが、絵師の女弟子の号の末尾に「女」をつけるそうです。

特に作者が創作した新しい写楽像はありませんでしたが、書きたかったのは写楽とお駒のことだったのでしょうから、これでいいのでしょう。
『おくり絵師』同様にラストが切ないお話でした。


<今日のわんこたち>


寒くなったので、ベストを着せました。
弟は胴長なので、お尻が出て寒そうです。兄が来ている方を着せた方がよかったかもしれません。


イチョウの木が色づいています。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2023/11/25/9637287/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。