サマンサ・ラーセン 『公爵家の図書係は恋をする』2025/02/28

公爵家の図書係の正体』に続く「英国貴族の本棚」シリーズの二作目。


ティファニーは兄の跡を継ぎ、ボーフォート公爵家本宅、アストウェル・パレスの図書係になり、ブリストル・コッテジを手に入れた。
しかし、いいことは続かない。
ある日、仕事に行こうと外に出てすぐに、何かにつまずいてしまう。
それは、男性の死体で、ボーフォート公爵家に仕える元フットマン、バーナード・コラムだった。
一体、彼はここで何をしていて、だれに、どうして殺されたのか。
ティファニーは治安官であるサミール・ラスロップに同行して、バーナード・コラムについて聞いて回る。

ティファニーはサミールを愛していた。
しかし、バーナード・コラムの姉のイーヴィという女が現れ、彼女とサミールは夫婦だと言う。
十一年ちかくまえに結婚したが、イーヴィはすぐにバーズリーの鍛冶屋のところに行ってしまい、それ以来二人は会っていない。
それなのに、彼女は妊娠していた。

そうするうちに、バーナード・コラムの父親が、バーナードがサミールを脅しているのを聞いたと言い出し、それを根拠にサミールは逮捕されてしまう。

ティファニーは愛する人のために、たとえ二人は結婚できないとしても、自分自身で本物の殺人者を見つけようと決意する。

ティファニーに次々と試練が与えられています。
サミールはインド系なので、人種差別をされることが多く、たとえ治安官をしていても簡単に逮捕されてしまうのです。
あとがきによると、被告は「証拠の記録」も見られず、自らを守るための意見を述べることもできなく、裁判は迅速に行われ、判決も迅速に出され、1868年まで公開処刑が行われていたそうです。
誤認逮捕が沢山ありそうですね。

この本によると、ティファニーの生きている十八世紀のイギリスでは、離婚はめったになかったそうです。
もちろん、裕福な上流階級の人は例外ですよ。
でも、抜け道はありました。
女性にとっては屈辱的なことですがね。
ホント、この時代に女性として生まれなくてよかったと思います。

三作目は出版されるのかどうかわかりません。
これで終わってもいいのですが、私はティファニーにもっと毒づいて欲しいですけどねww。
18世紀の人種差別問題やフェミニズムなどに触れたコージーミステリって感じです。
興味のある方はお読みください。

コメント

_ ろき ― 2025/02/28 19時47分55秒

貴族のお屋敷の図書係なんて天国みたいな職かと思えば、人生そんなに簡単じゃないか。
18世紀じゃ捜査も裁判も、ずさんそう。
不自由な時代に毒づくヒロイン、ぜひシリーズを続けてほしいですね。

_ coco ― 2025/03/01 07時48分19秒

ろきさん、お屋敷の図書係はいいんですが、この頃のイギリス社会が女性と下流社会の市民には過酷です。
今回は女性の生理のことが書かれていて、男性にも読んでもらいたいぐらいです。
でもコージーミステリなので読まないか。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2025/02/28/9757738/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。