近藤史恵 『風待荘へようこそ』2025/02/25



45歳の専業主婦、保泉眞夏は夫からいきなり離婚を切り出される。
「もう、何年も、ずっと愛していなかった」と言われる。
好きな人が出来たそうだ。
今までの生活はなんだったのかと思うが、眞夏は夫に自分の気持ちをぶつけずに、言われた条件を呑んで、離婚届に名前を書いて、捺印した。

一人娘の佐那は夫のもとに行ったので、眞夏は一人になった。
ソーシャルメディアで思いの丈をぶちまけたら、相互フォローだった芹と名乗る人物からメッセージが来た。
彼女は京都のゲストハウスのオーナーで、体調を崩しているので、半年くらい仕事を手伝ってもらえないかというのだ。
眞夏は自分の気持ちを整理するために、誰も知り合いのいない京都に行くことにする。

ゲストハウス風待荘は地下鉄東山駅から歩いて行く。
ゲストハウスとシェアハウスがあり、眞夏が入るシェアハウスのメンバーはオーナーの芹こと芹澤美散の他に舞台俳優の大鳥波由と京都の大学で教えている浅香さん、アイスランド人で京都の大学の院生のふうちゃんことフラプニルドゥル・ヨウンドッティルの四人だ。

眞夏は風待荘の仕事をしながら、京都を歩き、人と触れ合い、自分の人生を振り返りつつ、いつしか新しい世界へ踏み出そうと思い始める。

京都はよそ者には厳しい町だと聞いていますが、眞夏にはそうでもなかったです。
現実的な私は、上手くいき過ぎのお話だと思ってしまいました。
40過ぎの女性が仕事につくというのは難しいのですが、簡単に決まってしまいます。
その上、周りの人たちも本当にいい人たちですし、芹さんの申し出もありえません。
物語ですから、いいんですけど・・・。
これらのことに目をつぶって読んでいってください。
心に響く(または刺さる)言葉が見つかるでしょう。

例えば、眞夏が元同僚の千景と語る言葉。
「なんかさ、遠くまできちゃったね」
ホント、このままいくと、すぐに死んじゃいそう、笑。

眞夏が心の中で思うこと。
「まるでフルタイムで働いていなければ、社会にいないみたいだ。それなのに、子育てとか、介護とか、PTAとか、家にいる女性を当てにするような役目がたくさんある。納得できないことばかりだ」
「世の中はままならないことばかりで、それでもひとつずつ、自分の欲しいものを選び取っていくしかないのだ」
本当にそうですね。我慢せずに好きを優先しましょう。

娘が言った言葉。
「わたし、お母さんは、お母さんという生き物なんだと思っていた」
ハハハ、子どもにはお母さんの若い頃なんか、想像もつかないんでしょうね。

ラストも上手くいきすぎですが、私もアイスランドに行きたくなりました。
ただし、もっと円が高くなったらね。

この頃の近藤さんは女性問題を書くことにしたようですね。
興味のある方は『それでも旅に出るカフェ』や『山の上の家事学校』などをお読みください。

コメント

_ ろき ― 2025/02/26 21時00分35秒

え、黙って離婚してあげたの? 慰謝料がっぽりもらった?

現実だとSNSで「仕事手伝って」と言われても、応じちゃいけない場合のほうが多そう。フィクションだからいいよね。
アイスランド、行ってみたいですね。

_ coco ― 2025/02/27 17時20分02秒

ろきさん、一応それなりの慰謝料もらったみたいです。
そうです。フィクションだから、いいんです。普通なら絶対に怪しいですし、こんなによいことなんかありませんよ。

アイスランド、行きたいです。
ホテル代がものすごく高いのが・・・。

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