「お江戸けもの医 毛玉堂」シリーズ ― 2025/03/01

江戸時代に獣医がいたとは思いもしませんでした。
本当にいたのでしょうか?
谷中感応寺の境内に、かつて小石川養生所で腕が良いと評判の医者だった凌雲と妻の美津が営んでいる≪毛玉堂≫という動物の病を診る医院がある。
凌雲と美津は≪毛玉堂≫の庭に捨てられた黒太郎と白太郎、茶太郎という三匹の犬とキジトラ猫のマネキを飼っている。
凌雲は腕は確かなのだが、無愛想。
美津が凌雲と患者の飼い主の間を取り持ち、なんとかやっている。
毛玉堂に毎日やって来るのが、美津の幼馴染みで江戸三大美人と言われる美貌のお仙。
お仙は笠森稲荷の境内にある水茶屋≪鍵屋≫の看板娘で、笠森稲荷一帯の地主で三百石の旗本である倉地家の跡取り息子の政之助と恋仲になっている。
毛玉堂に持ち込まれるけものたちの問題を、凌雲と美津は様々な観点から探り解決していく。
さて、どのような問題が持ち込まれたのか。
『お江戸けもの医 毛玉堂』
「お化け犬」
十二歳になるコタロウという犬が三日も食べていない。これ以上苦しませたくないという飼い主だが。
「そろばん馬」
算術ができるという”そろばん馬”の竹馬が、算術を間違えるようになったのは何故かという相談。
「婿さま猫」
六つになる牡猫のトラジが、この一月ほど、夜になると何の理由もなく急に飼い主の妻に襲いかかるようになったという。その理由は?
「禿げ兎」
絵師の鈴木春信が飼っている兎の耳の裏側に禿げができたという。近頃、春信は兎を抱いたお仙の絵を描いている。春信はお仙が原因だというが。
「おもらし犬」
深川今川町の足袋問屋≪山吹屋≫の若旦那が飼っている狆が、息子が生まれて一月ほどしてから、息子はを追いかけ回して、小便を引っ掛けようとするので、困っているという。何故なのか?
『玉の輿猫 お江戸けもの医 毛玉堂』
「玉の輿猫」
飼い主に連れられて来た茶色い狐顔の仔犬のコンタはとても利口な犬だ。
ところが数日前から脚を引きずり、押すと痛むという。どうも生まれつき節が弱いようだが。
「ご隠居鳥」
料亭≪玉屋≫で飼われていた緋鸚哥の赤玉が自分の嘴で羽を毟るので、胸のあたりの羽がごそっと抜けてしまったという。鳥に詳しくない凌雲は鳥屋に紹介してもらい、赤玉の相談ができるようにする。
「お馬鹿犬」
てろ助は飼い主が躾もせずにかわいがるばかりなので、傍若無人にふるまい、周りを困らせているが、飼い主は頓着しない。凌雲がてろ助はいつか命に関わる事故に遭うと言うと、それでは凌雲と美津で躾の行き届いた良い犬にしてくださいと言いだす。てろ助を引き受けた凌雲と美津は賢犬堂の伝右衛門に相談しに行く。
「目覚まし猫」
十三歳になる雄猫の玉三郎がこのところ夜中に騒いで飼い主を起こすという。
飼い主の家に行き、夜中に凌雲は飼い主と釣りをし、美津は玉三郎の様子を見ることにする。
「けんけん堂」
賢犬堂から迎えた一歳ぐらいの中型犬、影法師は穏やかで、何があっても怒らない。大八車に轢かれて尾が千切れても悲鳴さえあげず、微動だにしない。それなのに、人間が手を上げると怯える。なんとも不自然だ。何か理由があるのか?凌雲と美津は賢犬堂の伝右衛門に影法師のことを聞きにいく。
『うぬぼれ犬 お江戸けもの医 毛玉堂』
「よごれ猫」
お仙がもぐらという猫を連れて来た。もぐらは薄汚れていて、ものすごい臭いがする。猫は本来、匂いが少ないはずなのに何故なのか。
「猿田彦」
お仙が小梅という犬を抱いてやって来る。猫派だったはずなのに、この頃は犬の匂いが好きだという。
猿回しが猿を連れて来た。猿が鍵の開け方を覚えてしまい、檻の中に閉じ込めても、鍵を開けて外に出てしまい困っているという。猿を預かることにするが。
「うぬぼれ犬」
鈴蘭という女けもの医者が猿に噛まれ腫れていた美津の手の治療をしてくれる。
千駄ヶ谷の湯屋の娘が二歳の雌犬のお姫を連れてくる。お姫は鏡に映った己の姿に岡惚れしているという。
「愛馬小栗」
柳沢村の死産した馬の小栗が立てなくなった。早速、凌雲と美津、そしてたまたま毛玉堂に来ていた鈴蘭は柳沢村へ行く。鈴蘭は膿で晴れたところに針を差し、膿を出し、小栗を助けた。村人の男たちは凌雲先生のお陰だと言うが、女たちは…。
「金八金魚」
赤ちゃん連れの若い母親が金八という金魚が気鬱の病に侵されたといってやって来る。金八はもともと色鮮やかな琉金だったのに、色が黒ずんでしまったという。
凌雲と美津は彼女と亭主が営む古着屋に行って調べてみると・・・。
ほとんどのけものたちは環境の変化に馴染めず、問題行動を取るようになったようで、凌雲と美津夫婦はその原因を上手く探っていきます。
ちなみに、うちの弟犬はたまに休日に吠えるという問題行動を起こします。
休日はパパがいるので、何かあるんでしょうねww。
お仙はトラブルメーカーなのですが、美津はそんなこと気にしていませんし、凌雲や飼い主に対する接し方が優しいです。
美津はしっかり者で気のいい女性です。
いつか凌雲先生と本当の夫婦になれるといいですね。
けものたちのこと以外に、凌雲と美津夫婦のことやお仙に押し付けられた子ども、善次のこと、お仙の嫁入り話、女けもの医者、鈴蘭のこと、仔犬たちに厳しい躾をする≪賢犬堂≫の伝右衛門のことなどが書かれています。
悪い人の出てこない、ほっこりしたお話です。
犬の躾のやり方も参考になるかもしれません。
気になる方は読んでみてください。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2025/03/01/9757993/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。