高橋克彦 『だましゑ歌麿』 ― 2012/09/11

テレビドラマで『だましゑ歌麿』というのを前に放送していたらしく、第二弾がまた放送されるようですね。
それで思い出しました。この本、読んでいたのですが、ブログに書いていないはずです。
高橋克彦の本は同僚から紹介されてから大分読みました。私は特に浮世絵に関するものが気に入っています。
北斎、広重、写楽を題材にしてミステリーを書いていますが、歌麿に関するものには『歌麿殺贋事件』があります。
現代の話で浮世絵研究家の塔馬が活躍するものです。
『たましゑ歌麿』のように江戸時代の歌麿の生きていた時代ではありませんが、おもしろいですよ。
さて、『だましゑ歌麿』です。
江戸を高波が襲った夜、人気絵師・喜多川歌麿の女房・おりよが惨殺されました。
その事件をあつかったのが同心・仙波でした。
その縁から歌麿と彼を取り巻く人々と親しくするようになり、いつしか深みにはまっていき、命まで狙われるようになります。
テレビドラマのサイトを見ると、歌麿が「幕府の弾圧と戦いながら、千波たちと江戸を騒がせる謎めいた事件を解決していく」ようですが、この本の歌麿は幕府の弾圧と闘ってはいますが、仙波たちとは組んでいません。表だって謎を解いていくのは、あくまでも仙波です。
歌麿は幕府の裏をかき、妻の敵をうとうとしています。
歌麿の生きていた頃を調べてみると、老中・松平定信が寛政の改革を行っており、贅沢禁止令が出されていました。
本にも出てきますが、華美な絹の着物とか鼈甲の櫛、珊瑚のかんざしなどは売るのを禁止されていました。禁止令の出る前に買い、蔵にしまっておいたものも処分の対象になっていました。
錦絵も色数の制限や版下で検閲するなど、どんでもない時代でした。
歌麿がそんな幕府を嘲笑うかのように、検閲の裏をかくだましゑを描いていたのです。
『さやゑ歌麿』というのが今回のドラマの原作のようです。
読んでいませんが、この事件の後一年間、ほとぼりを冷ますために江戸を離れ栃木に行ったはずの歌麿が江戸に戻り、仙波と共に事件解決をするという内容なのかしら?
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