レイチェル・ナオミ・リーメン 『失われた物語を求めて キッチン・テーブルの知恵』2009/05/26

柳原和子さんの『がん患者学Ⅲ』に出ていた、レイチェル・ナオミ・リーメン博士の本です。
リーメン博士はクローン病を患っており、医師から長くは生きられないだろうと言われたにもかかわらず、医学部を卒業し、小児科医として働き、後にがん患者・がん専門医のセラピストとなり、現在に至っています。
彼女が六時間もかかった腹部手術で腹膜炎と敗血症を起こしたとき、炎症があるので、縫合をせずに自然治癒を待つことになりました。
腹部がぱっくりとあいて穴になっていたのです。
始め、リーメン博士はこんな姿でどうやって生きてけばいいのだろうと思いました。
しかし、何日かが経ち、思い切って傷を見てみると、なんということでしょう。奥のほうから肉が盛り上がり、穴も小さくなっていたのです。
人には誰でも持っている「生命の力」があるのです。

この力を信じない医師がいます。
リンパ腫の患者に「(治る)見込みがない」と言い切り、その医師の言葉で希望を失った患者が亡くなってしまうということもあるそうです。
リーメン博士が出合った、「クローン病の名医」もそうでした。
彼女の話を聞き、「現在は症状がずいぶん良くなっている」と言っているにもかかわらず、「あなたは今でもすこしは医者の仕事ができるのですか?」と言った医師。
医師は患者に希望を語ってはいけないのでしょうか?

医師という仕事にも、いろいろな思い込みがあるようです。
例えば、プロは泣いてはいけないとか。
死を身近に見ている医師や看護師の「燃え尽き」現象の大きな原因は、「死を深く悲しみ喪失を癒そうとする過程を踏まずに、死から目をそらす」からだと言います。
悲しむということは、プロとして恥であるという変な風潮があるんです。
そうじゃないのです。「悲しむことは自分のために」して、「死に直面したあとも、倒れずに先へ行くために。悲しむことで癒されるから、それでふたたび愛することが可能になる」のです。
冷たい医師より、人間的な医師の方に、私なら診てもらいたいですね。

私達が陥りがちなことに対しても、彼女は警告を発しています。
完全主義者であろうとしたり、他人の評価に自分を合わせようとしたり・・・。
ようするにありのままの自分を受け入れていないということなのです。
そうすると、「心の声」が「あなたは自分の価値観に正直ではないね」と囁き、そこからストレスが生じていることがあるのです。
「外圧ばかりがストレスの原因を作るのでは」なくて、「本来の自分の価値観や考えを妥協させる」ことからもストレスは生じるのです。
「まるのままの自分を回復」するには、「自己の内にある両面性を認め、受け入れること」であるとリーマン博士は言います。
両面性、良いとか悪いとかもレッテルを貼ることになりますよね。
そういうことを思わず、私は私と思えるといいんでしょうね。
そうすれば、誰からどう思われようが気にならなくなるし、人のことも受け入れられるんでしょうね。

残念ながら、この本は本屋では買えません。
図書館や古本屋で探してみてください。
もし英語が読めるのなら、"Kitchen Table Wisdom" を買って読んでください。
そんなに難しい英語ではないですし、本当にいい本です。
私は英語版も買い、職場の休み時間にひとつひとつ読んでいます。