篠田節子 『贋作師』2022/02/06



栗本成美は美大を卒業後、少しばかり周り道をしてから、絵画修復を仕事にするようになった。
ある日、自殺した日本洋画界の大御所、高岡荘三郎の絵の修復の仕事を頼まれる。
高岡画伯のじきじきの指名だと言うのだ。
何故、自分が…と疑問に思う成美。

荘三郎は四年前の若い妻の失踪と同時に描かなくなっていた。
保管庫に遺されていた絵は、復活後に描かれた、いかにもやっつけ仕事という絵ばかりだった。
彼の絵を見ていると思い出されるのが、美大で同級生だった阿佐村慧のことだった。彼は画家の精神まで模倣してしまう才があり、卓越したデッサン力とめざましい認識力を持っていたが、絵を描くための本質的な何かはなかった。
そのため彼はあと数ヶ月で卒業というときに、荘三郎の下に行った。
そして荘三郎よりも一年早く、武蔵野線に飛び込んでいたのだった。
成美は慧が荘三郎のところで何を見て、何を得たのか知りたいと思った。

保管庫で成美は阿佐村慧の描いた自画像を見つける。
荘三郎の作品の中に慧の作品が紛れ込んでいると思った成美は、遺された作品の中から慧の作品を見極めようとする。
そしてわかったことは、絶筆の七、八年前に言われていた荘三郎の復活はなく、慧が彼の代わりに描いていたということだった。
慧は後半生を荘三郎として生きながら、死の間際に、独自の世界をみつけ、荘三郎を超えてしまったのだった。

成美は慧の代作の時期が荘三郎の妻、雅代と深く関わっているのではないかと考え、雅代のことを調べ始める…。

ミステリーとして読むと意外性がなく物足りないですが、美術界のことや芸術家の絵に対する執念とか、自分の才能に対する苦悩とかが書かれた作品として読むと面白いです。
『沈黙の画布』以上に男女間の異常な世界が描かれていて、そこがちょっと気味が悪かったです。


大きいベッドが気に入った兄犬。


ママのベッドの半分を占めます。


平日はパパが仕事に行ってから一時間ぐらいママのベッドに寝て、その後犬部屋で寝るのに、休日になると何故かママのベッドでずっと寝ています。
弟は残念ながら一緒に寝れない犬です。