伏尾美紀 『北緯43度のコールドケース』2022/02/09

第67回江戸川乱歩賞受賞作の警察小説です。


沢村依理子は三十歳で北海道警察に入った。
大学院に通い、博士号を取ったが、あることをきかっけに大学に残ることを止め、警察官になったのだ。
2017年、沢村は北海道警察本部の刑事企画課をへて、札幌中南署捜査一課で現場研修につき、優秀な刑事である瀧本の下で現場捜査のイロハを学んでいた。

2018年1月、侵入窃盗犯が倉庫に侵入した時に女児の遺体を見たと証言した。
その遺体は五年前の未解決誘拐事件の被害者、島崎陽菜のものであることが判明。
犯人は事件発生時に亡くなっていたが、共犯者がいたのか。五年間秘かに陽菜を育てていたのに、何故今になって殺したのか…。
再び捜査が始まるが、勝手な捜査を行った沢村は捜査本部から外されてしまう。
結局新しい手がかりは発見されず、捜査本部は解散してしまう。

それから二年後、沢村は札幌創成署の生活安全課防犯係係長になっていた。
少女売春事件の捜査に当たっていた時に、陽菜誘拐事件の捜査資料が月刊誌にリークされる。
同じ頃、沢村のところに陽菜誘拐事件の捜査資料が送られてきていた。
道警は内部調査を始めるが、何の後ろ盾のない沢村は体よくリーク犯に仕立て上げられそうになる。
リーク犯に思い当たった沢村は、事件の解決が自分に託されているのではないかと感じ、ひとりで再捜査をすることを決意するのだった。

この作品は応募時に『センパーファイー常に忠誠をー』という題だったそうです。
改題してよかったですね。でも、改題してもわかりずらいかも。
北緯43度って札幌市のことらしいです。

何の思い入れもなく警察官になった沢村という女性が事件と関わっていくうちに一人前の警察官として成長していく様子が描かれています。
そのため家族や異性、同僚などとの関係が綿密に描かれていて、あっちに行ったり、こっちに行ったりとしますが、中盤以降から一気読みですので、止めずに読んで下さいね。
私には犯人の自供場面やある方の病気が、頷けませんでしたが、十分面白かったです。
是非、シリーズ化して沢村のその後を書いていただきたいと思いました。

そうそう、警察の階級について知らなかったことが書かれていました。
「警察官は警視の階級までは地方公務員だが、警視正以上は国家公務員となり、任命権も国家公安委員会が持つ」そうです。