南杏子 『ヴァイタル・サイン』2022/02/27



どこかのお宅のサクラの花が開いていました。春ですねぇ~。
東京は気温が17℃です。
犬たちも暖かくて嬉しそうです。
花粉が着かないように夏用Tシャツを着せています。


嬉しすぎて(嘘)、兄の耳の毛が飛んでます。


ちょっとお疲れ気味かな?



南さんの作品では医師が主人公のものが多いのですが、今回は初の看護師が主人公です。

31歳の看護師の堤素野子は二子玉川グレース病院で、老人や終末期の患者が多い病棟で働いています。
シフトは過酷で休日もままならず、患者からは怒鳴られたり暴力を振るわれたり、患者の家族からは理不尽なクレームで、身も心もギリギリの状態です。
それなのにまた一人、新人を押しつけられました。
それのみか乳癌の手術の後、仕事を辞めて家で過ごしているたった一人の母のことも気がかりです。
ホッとできるのは、整形外科医の恋人・翔平と会っている時だけでした。
しかし…。

医療現場がリアルに描かれています。とはいえどの病棟もそうというわけではなく、私が入院したことのある眼科や整形外科の病棟はこんなことはなかったです。
老人が多く、認知症や終末期の患者が多い病棟や今だったらコロナ患者を扱っている病棟は、本当に過酷だと思います。
法律で看護師の人員配置基準が決められているようですが、こういう病棟の看護師の数を増やすということはできないのでしょうか。
私にはどうなっているのかわかりませんが、各病院が決めることなのですかね。
読んでいて、私が年を取り病気になった時に入院するのが怖くなりました。
できるだけ施設にも入らず、入院もせず、それこそピンピンコロリで亡くなった方がいいと切実に思いました。

この本は読んで楽しい本ではありません。
読んでいくと、益々暗くなり、息苦しくなります。
救いようのないお話です。
追い詰められた素野子がどうなるのかと思ったら、なんとかわされてしまいました。
最後に希望を描きたかったのかもしれませんが、それにしてもねぇ…。
看護師になりたいとか、リアルな医療現場を知りたいとか思う人が読んでもいいでしょうが、今までの南さんが書いた本のつもりで読むと、きついかもしれませんので、あしからず。


この本で一つ学んだことがあります。蛇足ながら自分の覚え書きのために書いておきます。
「肉体労働」や「頭脳労働」の他に、社会学者のA・R・ホックシールドが提唱した「感情労働」という働き方の概念があるそうです。
「感情労働」とは「業務を行ううえで、感情の抑制や緊張、そして忍耐といったコントロールが必要な労働」です。
感情労働が多い主な職種として、サービス業、営業職、教職、医療職、介護職等があります。
これらの職種はストレス負荷が大きく、バーンアウト状態に陥るリスクがあり、仕事への満足度の低下からメンタルヘルスに関する不調(うつや依存症等)が現れ、休職や離職に繋がることが多く、社会問題化しているそうです。