「お江戸甘味処 谷中はつねや」シリーズ2022/05/08

美味しそうな和菓子が出てくるシリーズです。


倉阪鬼一郎 『かえり花 お江戸甘味処 はつねや』
嘉永三年(一八五〇年)の早春、感応寺の門前町に新たな見世がのれんを出しました。「甘味処 はつねや」です。
上野黒門町の老舗菓子屋「花月堂」で十年間修行を積んだ音松と、父の跡を継ぎ外回りの振り売りをしていたおはつが夫婦になり、のれん分けをしてもらい、見世を出したのです。
しかし門出の日は大雪。表通りには老舗の「伊勢屋」と「名月庵」が見世を構えており、新参者のはつねやを目の敵にし、嫌がらせをする始末。
さて、はつねやはどうなるのか…。

倉阪鬼一郎 『腕くらべ お江戸甘味処 はつねや』
隠居の惣兵衛や仲良し娘三人組などのような常連客がつき、はつねやの商売も順調でした。
年が明けて、花月堂から思いがけない話が持ち込まれます。
腕くらべに出てみないかというのです。
花月堂のあるじの義父が出るらしく、彼と競って勝っても負けても後生が悪いので、音松に代わりに出ないかというのです。
失うものがなにもなく、出るだけほまれと、音吉は腕くらべに出ることにします。
対するのは、江戸中に名がとどろく老舗、麹町の鶴亀堂、浅草の紅梅屋、そして日頃からはつねやに意地悪をしている谷中の伊勢屋です。
初戦の相手は、伊勢屋になります。
勝負はどうなるのか…。

倉阪鬼一郎 『思い出菓子市 お江戸甘味処 はつねや』
はつねやは腕くらべで名が揚がり、やって来る客が増えてきました。
ある日、花月堂のあるじと番頭、戯作者の百々逸三がやって来ます。
江戸で選りすぐりの名菓を集めた見本市を計画していると言うのです。
はつねやも見世を出すことになります。おはつが思い出のお菓子づくりを思いつき、言い出しっぺということではつねやがやることになります。
しかし客はやって来ません。不発に終わるのか…。

倉阪鬼一郎 『光と風の国で お江戸甘味処 はつねや』
音松が紀伊玉浦藩に赴き、半年ほど滞在して、紀州の特産品を活かした菓子をつくることになります。
音松の留守中、はつねやをおはつと振り売りの巳之作、彼と祝言を挙げたばかりのおすみでなんとかやっていくことになります。
はたして音松は藩の銘菓となるような菓子がつくれるのか…。

とにかく読みやすくて、短時間で読み終わってしまいます。
話のオチが早々にわかってしまい、悪人と善人もわかりやすいので、物足りなく思うかもしれませんが、美味しそうな和菓子に免じて許して下さい、笑。
谷中は前によく訪ねた町です。今ある感応寺の辺りにはつねやがあったということですかね。
焼きたての若鮎や冷たくした丁稚羊羹、二種類の松葉焼きが食べたいです。
読み応えのあるものをご希望の方には勧めませんが、軽いものを読みたい時にこんな本もいいかもしれません。