S・J・ベネット 『エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿の三匹の犬』2023/03/07

一作目の『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』は2016年4月のお話でした。
二作目の今回は2016年7月以降のことになります。


2016年6月、イギリスでは国民投票でEU離脱が決まり、7月にテリーザ・メアリー・メイが首相になった。
その頃バッキンガム宮殿では大規模な改修計画が行われていた。

そんなある日、エリザベス女王はポーツマスの海軍基地で行われていた海景色画展に、かつて自分の寝室を出たところに飾ってあったブリタニア号の絵が展示されているのを目にする。
女王は秘書官補のロージー・オショーディにこの絵画がポーツマスの海軍基地に保管されるにいたった経緯を調べ、速やかに返却に向けて手はずを整えるように命じた。
海軍基地の施設管理責任者によると、その絵は国防省の所蔵品のうちの一点で、長年海軍軍令部次長の執務室に飾られているものだとのこと。
しかし女王は最後にその絵を見たのは、1990年代だという。
ロージーは再度調べるように命じられ、各方面の宮殿関係者に尋ねて回ることになる。

その頃、中傷を目的とした手紙やメッセージが女王手許金会計長官のアシスタントや年配の家政婦などあちこちに送りつけられており、しばらくしてロージーにまで送られてくる。

10月の某日、バッキンガ宮殿のプールサイドで嫌われ者の家政婦ミセス・ハリスが死んでいるのが見つかる。
ウィスキーグラスを片付けようとして足を滑らせて転倒し、割れたグラスの破片で足首のうえの動脈が切断され、失血死したようだった。

女王にミセス・ハリスが問題を抱えていなかったかどうか聞かれ、嫌がらせの手紙の件を話したロージーは、内密にしておきたかった秘書官のサー・サイモンに激怒される。

やがてロンドン警視庁からウィンザー城の事件に関わったストロング主任警部が派遣されてくる。

消えた絵画と中傷目的の手紙、そして家政婦の死は関係があるのか。
女王の推理は…。

相変わらず女王は冴えています。
犬たちに対する愛情も素晴らしいです。
そうそう、フィリップ曰く、”あの悪趣味で、見られたもんじゃない小品”のブリタニア号の絵をなんでしつこく返却させるように言い張ったのかは最後にわかります。
ヒントは「愛」です。

それにしてもバッキンガム宮殿にプールがあるなんて、知りませんでした。
もともとはジョン・ナッシュが温室として設計したのを、1930年代にジョージ六世が幼い王女たちのためにプールに改築したんですって。
外から見られたり、写真を撮られないようにしたのかもね。

どういう人たちが王室に使えているのかと思ったら、上のポストには軍の高級将校が多いようです。
「高級将校というものはまちがいなく有能で、周囲からの期待に遺漏なく応えてくれるものである」とか「高級将校の地位にあった者は、おしなべて、残酷なほど効率性を決してろこつではない形で徹底しつつ、職員たちの団結力を引き出すことで、女王が求める組織を作りあげてくれる」などと書いてあります。
日本で皇室に自衛官幹部が使えるなんて、考えられませんよね。
そういえばロージーは王立騎馬砲兵隊に在籍してから民間の銀行勤務を経て、王室職員になったらしいです。
彼女の上司のサー・サイモンは海軍でパイロットをしていて、その後外務省で外交官をしていたと言いますから有能な人なのでしょうね。(二人とも実在しませんけどww)

興味深いのが当時のメイ首相。
全く覚えていないのですが、彼女の靴って有名でしたっけ?
ファッションも独特ですね。
私、顔しか見ていなかったみたい、笑。
「各紙の一面に靴の写真がのることがお約束になっていた」なんて…。
検索してみるといっぱい出てきますね。


いつもスニーカーしか履かない(実は履けない)私は憧れますわ。
首相として何をやったのか浮かばない人ですが、ファッションは素敵です。
日本人はおしなべて暗い色の服を着ますが、彼女みたいにカラフルな色を着るといいかも。
パーソナルカラー診断でもしてもらおうかしら。

三作目「Murder Most Royal」が昨年八月に出版されています。
イギリス王室がクリスマスを過ごすサンドリンガム・ハウスの近くの浜辺で切断された手が見つかるようです。
エリザベス女王の活躍が楽しみですね。