ジャナ・デリオン 『幸運には逆らうな』2023/09/14

<ワニの町へ来たスパイ>シリーズの六巻目。


七月四日の独立記念日。
アイダ・ベルとガーティの宿敵、シーリアがとうとう町長になってしまう。
なって早々に彼女は、リー保安官を解任し、悪名高き自分のいとこのネルソンを保安官に任命した。
頼りのカーターは前回の怪我で傷病休暇中。
そんな時に湿地で爆発が起る。
運の悪いことに、カーターの叔父のウォルターが、爆発で飛んできた人間の脚に頭を直撃される。
爆発したのは密造酒の製造所ではなく、メタンフェタミン(覚醒剤の一種)の製造所だった。
カーターは休暇中だが、ネルソンには任せられないので秘かに調べることにする。
もちろん、スワンプ・チーム・スリー(アイダ・ベルとガーティ、フォーチュンの三人のことよ)の出番だ!

シンフルに来てまだ一ヶ月だというのに、またまた事件に巻き込まれる、いいえ、巻き込まれに行くフォーチュン。

シンフルに麻薬がはびこっているのか…?

ハチャメチャな二人のおばあちゃんと仲良くなり、シンフルに馴染むにつれ、冷徹で有能なCIA秘密工作員であったフォーチュンが変わっていきます。
もうこうなったらカーターに身を任せ、シンフルに住みつき、二人で保安官をしちゃいなよ、と言いたくなります。
でも、そうなるにはフォーチュンの命を狙う暗殺者たちをどうにかしなければ。

ガーティおばあちゃん、またまた笑わせてくれました。
赤くきらきら光る素材で作られ、ストラップとウエストにチェーンがある水着にビニールの紫色の羽毛のボアをつけ、アリゲーターのフロートにまたがるガーティおばあちゃん。
想像するだけでも笑っちゃいますwww。
フロートを繋いだボートを運転するのがスピード狂のアイダ・ベルおばあちゃんですから、この後何が起るかは書かなくてもわかりますよね。

前回23巻まで出版されていると書きましたが、今年の2月に24巻、5月に25巻が出ています。早いペースですね。
マジに翻訳を頑張ってもらわないと、いつまでたっても追いつきません。
他に読みたい本がなければ、原書を読むんだけど…。
次はどんな笑いがあるのか、楽しみなシリーズです。


<今週のおやつ>


新しい缶が出ると欲しくなるケイタマルヤマのクッキー缶です。
リスの尻尾を袋から出すときに割ってしまいました。
前も鳥の羽(かな?)を割ってしまったような気がします。
味は変わんないからと、すぐに食べてしまいました、笑。

ファビアン・ニシーザ 『郊外の探偵たち』2023/09/16



アンドレア・スターンはニュージャージー州のウエスト・ウィンザーという小さな町に住む専業主婦。
第5子を妊娠中でかなりお腹が大きくなっている。
子どもたちを車に乗せて移動中に、末っ子がおしっこをしたいと言い出し、トイレを借りようと停車したガソリンスタンドがインド人従業員の殺害現場だった。
俄然、興味を持つアンドレア。
というのも、彼女は元FBIのプロファイラーで、連続殺人事件を解決したことがあり、第1子を妊娠したため、結婚し、専業主婦になったのだ。
夫のジェフの送り迎えと子どもたちの相手で、毎日が慌ただしく過ぎていく。
彼女の心は満たされず、もう限界だと叫んでいた。
そんな時に昔の知り合いのプリンストン・ポスト・ウィークリー紙の落ちぶれ記者、ケネス・リーと再会し、二人で事件の調査を始めることにする。

警察は麻薬がらみだと決めつけているが、インド人青年は麻薬に手を出していないと誰もが言う。何故警察は嘘を言うのか?
聞き込みをしていくと、殺された青年一家と同じようにプール工事の申請が却下さた人たちがいることがわかる。
アンドレアが殺人事件と申請却下に何か関係があるのではないかと思い調べると、以前申請が却下された土地で人骨が発見されていたことがわかる。
アンドレアたちは申請を却下された他の土地にも人骨が埋まっていないか確かめてみることにする。

ウエスト・ウィンザーはもともと白人たちの農場があった土地です。
そこが郊外の住宅地として開発され、インド人やら中国人やらが住み始め、それぞれがコミュニティを形成しています。
人種差別や結婚とジェンダー問題など、色々と考えさせられるミステリーです。
本格的ミステリーというよりもコージーミステリーに近いですね。

アンドレアはかなり優秀なプロファイラーのようで、仕事を辞めたのはもったいないです。それなのに何で子どもを4人も産み続けたのでしょうか。
夫との間にも色々とあるようで、続編で明らかになっていくでしょうね。

女性のことに詳しいので、女性が書いたと思っていたら、男性でした。
著者名を見ると、そうですよね、ファビアンって男性の名前ですものね。
彼はコミックライターでもあるようです。

第二弾では子どもが産まれて、五児の母となったアンドレアが、夫と警察の期待を裏切り、またケネスと一緒に殺人事件の解決に乗り出すようです。
楽しみですね。


<昨日のおやつ>


横浜みやげ、「横浜三塔物語」。
かわいい箱に入っているチョコチップスティックケーキ。
とっても甘くて、美味しかったです。

米澤穂信 『可燃物』2023/09/17

米澤穂信が描く、本格的警察ミステリー。


群馬県警本部刑事部捜査第一課の葛警部は「余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある」。

「崖の下」
ロッジを経営する男から群馬県利根警察署に通報がある。夕食の時間に帰るはずの五人の客のうち四人と連絡が取れないと言うのだ。
翌朝スキー場を調べてみると、コースから離れた崖の下で二人が発見され、一人が死亡していた。頸動脈を刺されたことによる失血死だった。
犯人は一緒に遭難していた男だと思われたが、凶器が見つからない。
凶器は何なのか、葛は考える。

「ねむけ」
群馬県藤岡市北平井で強盗致傷事件が発生する。
捜査本部は類似前科のある者を中心に被疑者の洗い出しをして、三人を容疑濃厚とし、二十四時間体制の監視をつけた。
その二日後、被疑者の一人、田熊が交通事故を起こす。出会い頭の事故だった。
目撃者は4人。多過ぎる。その上、田熊は制限速度の時速五十キロで運転していた。
葛は違和感を感じる。

「命の恩」
群馬県榛名山麓にある<きずげ回廊>で人間の右上腕が発見される。
上腕骨の末端部に金属による擦過痕が見つかり、人為的に切断されたものだということがわかった。
山狩りを行なうと、次々と他の部位が発見される。
歯から身元がわかったが、なぜ犯人は身元をわからないようにしなかったのか、なぜ遺体を切断したのか、そしてなぜ誰でも気軽に歩ける<きすげ回廊>に死体を捨てたのか。
葛は動機を追及する。

「可燃物」
太田市の住宅街で連続放火事件が発生し、葛班が派遣された。
燃えるゴミばかり狙われていたが、ゴミ出しマナーの不満が動機とは思えない。
なぜ犯人は放火を繰り返しているのか。
張り込みをすると、放火が止る。
なぜなのか。
動機が鍵だと思う葛。

「本物か」
ファミリーレストランで立てこもり事件が起る。
近くで傷害事件に対処していた葛班が特殊係が到着するまで情報収集に当たることになる。
犯人の名はすぐに判明したが、黒い、拳銃状のものを握っていた。
男性店長と女性スタッフを人質にしているようだ。
物音がし、非常ベルが鳴り、その後に『逃げろ』という声がして、客も従業員も店から避難したという。
ひっかかりを覚える葛。

一旦事件が起ると、カフェオレと菓子パンばかり食べている葛警部。
身体に悪いですよ。弁当はないんですか。独身または離婚経験者っぽいですね。
部下に情報収集は任せても、最後は自分で推理し解決するという切れ者ですが、これじゃあ上司や部下が浮かばれません。
部下に葛以上のいい人材がいない理由がよくわかります、笑。

事件自体に盛り上がりはなく、淡々と終わります。
この頃グレーンス警部慣れしてしまった私にはスケールがチマチマしていて、少し物足りなく感じましたが、グレーンス警部シリーズが例外ですよね。
とにかく本格的推理小説が読みたい方向けですので、是非葛警部と推理合戦をしてください。
私は最初から諦めていますが、なるほどそうなのかと意外性に驚きました。

この本に関係ないですが、私は<ベルーフ>シリーズが好きなので、太刀洗万智に会いたいです。次によろしくお願いしますね。

アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム 『三分間の空隙』2023/09/18

エーヴェルト・グレーンス警部シリーズの六作目


エル・スエコはコロンビアのゲリラ組織PRCの一員であるエル・メスティーソの警護をしている。
彼はスウェーデン人だが、アメリカの潜入捜査員で、コロンビアの麻薬組織を一網打尽にするために、アメリカのDEA(アメリカ麻薬取締局)の長官、スー・マスターソンに雇われ、PRCの情報をアメリカに提供している。

娘を麻薬により失った下院議長、ティモシー・D・クラウズはクラウズ・モデルを作り、NGA(アメリカ国家地理空間情報局)の偵察衛星から得た画像やNSAの通信傍受プログラムから得た盗聴データやドキュメント、DEA(麻薬取締局)の潜入活動によって得た内部情報などをアナリストたちに分析させ、機に乗じて、クラウズ部隊と呼ばれる現地の精鋭部隊にコカイン・キャンプを襲撃させていた。
ある日、クラウズはクラウズ部隊に護衛されながら元コカイン・キャンプを訪れるが、そこで奇襲に遭い、拉致されてしまう。

アメリカ政府は対テロ戦争を宣言し、PRCの権力者または危険人物として十三名を殺害対象者リストに載せた。
その中に、エル・スエコが入っていた。
マスターソンはエル・スエコがアメリカ側の潜入捜査員であることをあかし、彼をリストから外すように要請するが、ホワイトハウスの上層部は拒絶する。

スウェーデン警察のエリック・ウィルソンは自分が潜入捜査員に仕立て上げ、マスターソンに斡旋したエル・スエコが殺害対象者リストに載ったことを知り、愕然とする。
彼を助けるために行動するが、策が尽き、エーヴェルト・グレーンスにエル・スエコが生き延びられるように力を貸してくれるように頼みに行く。

前作の『三秒間の死角』のように潜入捜査員は見捨てられる運命なんでしょうか。
いい加減にして欲しいと思います。
コロンビアの麻薬組織の様子が鮮明に描かれていて、特に残酷な拷問場面が多く、読み進むのが困難になりました。
たとえ味方でも信用できないし、いつ裏切られて殺されるかわからないという状況は辛いですね。

『三秒間の死角』から趣が変わって、映画化できるアクション物になっています。
今回の主役もエーヴェルトではなくエル・スエコで、彼がどうやって生き延びていくのかが読みごたえがあります。

「俺はスウェーデンの警察官でもアメリカの警察官でもない。エーヴェルト・グレーンスだ。約束は守る」というエーヴェルト、カッコいいです。
愛する人が亡くなってからどうなるのかと思っていましたが、事件がある限り大丈夫そうです。

絶対に『三秒間の死角』を先に読んでから『三分間の空隙』を読んでくださいね。
そろそろ麻薬関係ではなくスウェーデンの社会問題を扱ったものが読みたいです。
次の『三時間の導線』はどうなのかしら?

観た映画2023/09/19



「生きる LIVING」
妻が死んでから、規則正しく淡々と役所勤めをしてきたウィリアムズは、医師からがんで余命半年の命だと言われる。
翌日、彼は仕事をさぼり、港町に行き、出会った小説家と馬鹿騒ぎをするが、満たされない。
仕事を放棄し町を彷徨っていると、部下のマーガレットと偶然出会う。
ウィリアムズは、転職するので推薦書を書いて欲しいという彼女を食事に誘い、話をする。
それが思いのほか楽しかったので、彼は彼女を誘い映画や飲みに行く。
彼女の生き生きとした様子に感化されたウィリアムズは、仕事に戻り、市民から出ていた地域の公園整備の要請を最後の仕事として着手することにする。

主人公ウィリアムズがビル・ナイです。
一緒に住んでいても、心が離れている家族って悲しいですね。
マーガレットが役所のみんなに綽名をつけていて、ウィリアムズが「ゾンビ」だなんて、若い娘は残酷です。
公園を作るために一致団結して頑張るウィリアムズたちは素敵でしたが、その後、元に戻ってしまうのがなんとも言えません。いかにもお役所ですねぇ。日本と同様にイギリスの役所もそうなのかしら?
ウィリアムズがブランコに乗りながら歌を歌う場面がとても印象的でした。

日本版「生きる」はまだ観ていないので、そのうち観てみようと思います。


「マイ・ドッグ・スキップ」
1942年、夏、ミシシッピー州ヤズー。
一人っ子のウィリーはひ弱な外見からいじめの標的にされている。
隣に住む野球とラグビーの選手、ディングが彼のヒーローだ。
友だちがいないので、9歳の誕生日パーティに来るのは親戚の老人ばかり。
犬が欲しいと言うが、退役軍人で会計士をしている父は犬を飼うことに反対する。
しかし母が父を説き伏せ、ジャックラッセル・テリアの仔犬をプレゼントしてくれる。
犬はスキップと名づけられ、いつもウィリーと行動を共にするようになる。
そしてスキップのおかげでウィリーに友だちができる。

ある日、野球の試合で上手くいかなかったウィリーはスキップに八つ当たりをして殴ってしまい、スキップは行方不明になってしまう。
ウィリーはスキップを探し回るが…。

原作はウィリー・モリスの『MY DOG SKIP』です。
犬好きは観ない方がいいかも。というのも主人公がスキップを軍用犬に志願させたり、野球の試合でスキップがグランドから出て行かないからと殴ったりするんですよ。
原作を読んでいないのでなんとも言えませんが、観ていて犬の扱いがぞんざいなところが嫌でした。

お父さん役がケヴィン・ベーコンでお母さん役がダイアン・レインです。懐かしい。
戦争で片足を失い、一見子どもに厳しい高圧的な父親ですが、実はとても子ども思いなのです。
犬を飼うのを反対したのも、戦争で沢山の死を見てしまったので、子どもに死の悲しさを感じさせたくなかったからなのです。
兵役に行って、逃げ帰ってきたディングの気持ちが一番わかるのが彼で、ディングにかける言葉が良かったです。
犬も可愛いけど、それ以上にお父さんが素敵な映画です。


「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」
作家を夢見るジョアンナは西海岸からニューヨークにやって来て住みつき、西海岸に彼がいるにも関わらず、ろくでもない作家志望の男と同棲し、職業斡旋業者から紹介された老舗出版エージェンシーで職を得る。

上司のマーガレットは、30年間も小説を書いていない人気作家サリンジャーのエージェントで、彼女から任されたのが、ファンレターへの返事。つまり決まりきった定型文の手紙をタイプし、送ること。
ジョアンナは熱心なファンからのファンレターに返事を書いて出してしまう。
それがバレるが、首にはならなかった。

ある日、サリンジャーから電話が来る。
何故か彼はジョアンナを気に入り、作家になるためのアドバイスをしてくれた。
その後、ジョアンナに『ハプワース16、一九二四』を出版したいので出版社に仲介してくれるように依頼してくる。

マーガレットに認められ、担当作家がつくことになった矢先に、ジョアンナは作家になるという夢に立ち向かうため、出版エージェンシーを辞めることにする。
自分の書いた詩をニューヨーカーに持ち込んだ日、なんとあのサリンジャーが…。

サリンジャー好きには嬉しい映画だと思います。と言っても、今の日本の若者たちにサリンジャーはそんなに受けていないし、知らない人の方が多いですよね。
大学時代にサリンジャーを読んで好きになった私は、それなりに面白かったです。
主人公があまり好きになれませんでしたが。
あんなクソ男、よく選んだわよね。
お金もないくせに、彼女のお金を当てにして、一緒に住む家を、それもキッチンがない家を、家賃が手ごろだと言って、彼女の意見も聞かずに借りちゃうんですよぉ。
お風呂で食器とか洗うんです。信じられない。
それに浮気するわ、ジョアンナも知っている友だちの結婚式に一人で行くわ、一体何様なのよ、お前!(言葉が悪くてゴメンなさい)
前の彼の方が何百倍もいいじゃん。
そんな彼女でも作家になって『MY SALINGER YEAR』(この映画の原作)を書くまでになるんですから、人の運命ってわかりませんね。
エージェンシーの部屋の雰囲気が素敵で、それだけで私は満足ですwww。


「異動辞令は音楽隊!」
刑事一筋30年という鬼刑事・成瀬司は、強引な捜査を行なうため警察上層部から疎まれ、嫌われていた。
たまたまハラスメント疑惑が持ち上がったのをいいことに、アポ電強盗事件を追っていたというのに、成瀬は音楽隊に異動させられてしまう。
和太鼓をちょこっと囓っただけの俺がなんで音楽隊に行かなけりゃならないんだとごねてみるが、どうしようもなかった。

仕方なく成瀬はバスに乗り、はるばる田舎にある練習場に行く。
どうもメンバーたちは警察署内のはみ出し者みたいだ。
和太鼓をやったことがあるということで、成瀬はパーカッション担当。ドラムをやることになる。

そんなある日、新たなアポ電強盗が起ったというテレビを見て、成瀬は捜査会議に乱入するが、お前はもう刑事ではないと追い出される。
市民フェスティバルで演奏するが、散々な出来で、知事に税金の無駄遣いだと責められる。

失意の成瀬がお好み屋で食べていると、音楽隊メンバーの来島がやって来る。
話してみるが、意見が合わず、帰宅すると、なんとポケットに警察手帳が入っている上着を店に忘れてきたのに気づく。
上着を届けに来た来島は成瀬に言う。
「音楽と同じですよ。ミスしても周りがカバーすればいいんです」と。

なんとかふっきれた成瀬はドラムの練習に打ち込む。
彼の様子を見ていたメンバーたちも彼に感化され、音楽隊はだんだんとまとまっていく。
音楽隊のファンの老婦人・村田ハツも成瀬のことを応援してくれる。
しかし、知事から音楽隊の失態を聞かされた本部長の五十嵐は、次の定期演奏会を最後に音楽隊を廃止すると宣言する。
自分たちはどこに飛ばされるのかと不安になるメンバーたち。

そんな頃、またもやアポ電強盗事件が起り、今度は被害者が死亡する。
その犠牲者が村田ハツだった。
悲しみに沈む音楽隊メンバーたちは、犯人グループのボスの割り出しに策を巡らすことにする。

なんとなく面白いかなっと思って観てみました。
阿部ちゃん、やさぐれ刑事が合っていますね。
最後にどうなるか、すぐに分ってしまいますので、暇な時に、ビデオで観るのがいいかも。

アンソニー・ホロヴィッツ 『ナイフをひねれば』2023/09/21

<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズの最新刊。


ホロヴィッツが脚本を書いた戯曲『マインドゲーム』がロンドンで上演された翌日、戯曲を酷評した劇評論家のハリエット・スロスビーが殺害され、彼が容疑者として逮捕される。
彼を救えるのは、あの男しかいない。ホーソーンだ。
留置場からかけた電話に出たホーソーンはつれなかった。
自業自得だ。というのもホロヴィッツはホーソーンに契約の終わりを告げていたのだから。

留置場で九十六時間過ごした後、ホロヴィッツは釈放される。
そこにいたのがホーソーン。彼がやって来てくれたのだ。
彼の友人のケヴィンが法科鑑定研究所のコンピュータに障害を起こしてくれたので、彼らに残されたのは四十八時間。
この残された時間で誰がホロヴィッツを陥れたのか探らなければならない。
ホロヴィッツ、絶体絶命!

容疑者は七人。一体誰が犯人か…。

ホロヴィッツはどう考えても圧倒的に不利な状況です。
そこをホーソーンが相変わらずのポーカーフェイスで何も言わず、ホロヴィッツを引きずり回し、犯人を突きとめていきます。

ホーソーンがそれほど好きではありませんでしたが、意外といい奴だと少しづつわかってきたので、憎めなくなりました。
ホロヴィッツはホーソーンとのシリーズをあと六冊書くらしいので、ホーソーンの過去が徐々にわかってくるのを楽しみにしますわ。

最後の場面が、クリスティのポワロ物のように容疑者を一堂に会して犯人を指摘する、でした。
ホーソーンがホームズかと思っていましたが、ポワロで、ホロヴィッツがへースティングスですか。
このシリーズ、テレビドラマになると面白いでしょうね。
また今年のミステリーベスト10などに入りそうです。

読んだシリーズ(文庫本)2023/09/23



ほしおさなえ 『言葉の園のお菓子番 復活祭の卵』
祖母が通っていた連句会・ひとつばたごに自らも通うことになった一葉は、祖母と同じようにお菓子番となる。
その縁からブックカフェ「あずきブックス」で働くことになる。
イベントの企画の担当となり、11月にトークイベントで短歌を取り上げることになる。
参加者はもちろんのこと、「あずきブックス」の従業員たちも短歌を作らなければならなくなり、急遽短歌の読書会を始める。
そんな頃、睡月さんから連句の大会の話があり、ひとつばたごでは二座出すことになる。
一葉も参加することにするが、心配なことも…。

どれだけ読んでも連句はわかりません。自分で実際にやってみないことには理解できないのかもしれませんね。ましてや短歌も作れません。
自分のことは棚に上げますが、この本を読んで興味を持った人は是非作ってみてください。
自分の意外な才能を見つけるかも。

ひとつだけよくわからなかったのが、連句会の主宰・航人さんの過去をメンバーの人が一葉に話すことです。いくら一葉の祖母が関係していたからといって、若い一葉に話すことではないと思いました。

新しいお菓子が出てきました。
土佐屋のいもようかん、大吾の爾比久良、HIGASHIYAの棗バター、銀座鈴屋の栗甘納糖。
棗バターが食べてみたいです。

長月天音 『世界をめぐるチキンスープ 神楽坂のスパイス・ボックス3』
神楽坂の路地にある「スパイス・ボックス」は姉妹がやっているスパイス専門料理店。
体調が不調な人が食べると、元気になるお料理が出てきます。
子ども連れのファミリー層がお店に来ていないことに気づいた二人は、よくお茶に来る常連さんがたまたま食事をしにやって来たことを機会に、子どもでもスパイス料理が食べられることをアピールします。

出てくるお料理はどれも美味しそうで、チョコバナナのロティがどんなものか興味があります。クレープじゃなくてロティにチョコとバナナが包まれているのかな。
とにかく読むと無性にスパイスのきいたインドのカレーが食べたくなりました。

坂井希久子 『粋な色 野暮な色 江戸彩り見立て帖』
お彩は塚田屋で呉服の色見立てをしている。
当主の刈安に流行色を作れとけしかけられ、右近と共に深川鼠を流行らせようとするが、なかなかそうは簡単にいかない。
できないと右近は店から追い出される。
辰巳芸者に無料で深川鼠の着物を配り、着て貰おうとするが上手く行かず。
策は尽きたかのように見えたが…。

色見本を片手に読みたくなるシリーズです。
深川鼠は「薄い青緑みの灰色」。
日本には色の名前が沢山あります。
鼠色では浅葱鼠、紺鼠、空色鼠、鈍色、錫色、溝鼠、素鼠…。
短歌同様、これも素晴らしい文化だと思いますが、今は忘れられていますね。
昔の日本人は色彩感覚が鋭かったのでしょうか。

風野真知雄 『わるじい義剣帖(1)またですか』
孫の桃子と会えなくなってから一月、暇を持て余す愛坂桃太郎。
屋敷に帰っても、特にやることはなく、面白いことを工夫している。
<猫釣り>や<犬外し>をしたり、牛の種つけを見たりするが、退屈だ。
そんな時に、珠子と桃子が身を寄せている雨宮五十郎の役宅の向かいの長屋で人が殺された。
愛する孫に危険が及ぶかもしれない。
そう思った桃太郎は、これ幸いと桃子に会いに行く。
雨宮は頼りにならないから、いよいよ桃太郎の出番だ。

新しいシリーズの始まりです。
いつまで経っても桃太郎さんの桃子ラブは尽きることがありません。
それが生きがいだから、仕方ありませんね。
なんともユーモラスな桃太郎がよくて、ついつい読んでしまうシリーズです。
どうぞ長く続けて下さい。

M・W・クレイヴン 『グレイラットの殺人』2023/09/25

ワシントン・ポー・シリーズの第四弾。


ポーはトマス・ヒュームからハードウィック・クロフトを買い、そこにあった羊飼い小屋を改修して住んでいた。
ところがこの小屋が歴史的建造物に当たるので、購入した状態に戻すようにという訴えが起こされた。
ティリーの助けを借り裁判に挑み、けりがつきそうなときに、二人の男が現れ、ポーとティリーに同行を願った。殺人事件が起ったというのだ。

その頃、カンブリアで首脳会議が開催される予定で、ビーアマン&マクデイドという会社が要人をヘリに乗せ、空港と会場を往復することになっていた。
そのヘリコプター会社の経営者、クリストファー・ビーアマンが売春宿として使われていた住宅で殺されていたのだ。

ポーが連れて行かれたのは、マンチェスター郊外の工業団地に建つMI5の建物。
殺人事件の捜査を国家犯罪対策庁とカンブリア州警察が共同で指揮することになる。
連絡調整担当としてMI5の職員、ハンナ・フィンチがあてがわれた。
ポーは自分が呼ばれた理由がわからずごねていると、現れたのがFBIのメロディ・リー特別捜査官。
彼女はアメリカの要人が安全に入国できるかを確認しているという。
殺人事件を解決できる、本物の刑事として、彼女がポーを推薦したらしい。

殺人現場でポーは違和感を覚える。
暖炉の上に置かれていた置物はもともと4個。
しかし最初に殺人現場に到着した巡査が撮っていた映像には5個ある。
捜査関係者の誰かが1個盗んでいたのだ。
置物から三年前の銀行強盗事件との関連が疑われる。

MI5からの妨害から始まり、ゴタゴタ続きの捜査だったが、ポーはティリーが発掘したデータを元に、思わぬことへと足を踏み入れていくことになる。

捜査は二転三転し、最後に行き着いた先はとんでもないことでした。
まあ、自分たちに不利なことを隠そうとするのは、どの機関でもやっていることなのでしょうけど、その犠牲になった家族は真実を知りたいですよね。
ポーはどんな妨害にも負けず、真実を求めて一直線です。
ティリーもポーのために頑張ります。
でも今までの作品と比べると、ティリーの言動がそれほど常識を逸脱していないし、身体をはってポーを助ける場面もなく、今回ポーと一緒に行動するリー捜査官がそれほど面白い人物ではないので、物足りなかったです。
とにかくティリー、可愛いくて大好きwww。
彼女とポーが行動を共にして事件を解決していって欲しいです。

五作目は「The Botanist」。
ポーが気になる(好きなのかな)病理学者のエステル・ドイルが父親殺害容疑で逮捕され、the Botanistと呼ばれる犯罪者が人々を次々と毒殺していくらしいです。
この2つの事件をポーとティリーがどう料理していくのか、楽しみです。


<今月のスコーン>


マンダリン・オリエンタル・ハイドパーク・ロンドンのスコーン。
2個も食べるとお腹がいっぱいになります。1個でいいわ。
マーマレードがあったので、クロテッドクリームと一緒に食べました。
やっぱりジャムがある方が、カロリーがたっぷりですが美味しいです。

大倉崇裕 『一日署長』2023/09/27

花粉がそれほど飛んでいないらしいのですが、なるべく外に出ないようにしています。
それでも出ないわけにはいかないので、買物に行くために外に出ると、数分後に左目が痒くなります。
左目は手術をしているので、粘つく涙が出ます。そのせいか、花粉が着きやすいのかもしれません。
花粉症メガネ、なるべくしないどこうと思ったのですが、仕方ない、するか…。

私のよくある勘違い。
今野敏さんが書いた『署長シンドローム』の続きだと思っていました。


五十嵐いずみは元看護師。
思うところがあって、警察官になった。
警察学校を首席で卒業し、現場実習もそつなくこなしたというのに、配属されたのが、警視庁本部庁舎地下三階にある史料編纂室。
上層部の自分の評価はこんなもんかとガッカリするいずみだったが、前任者の西脇敬三はそんないずみの気持ちを知ってか知らずか、「コマンドー」、「一日署長」と言う謎の言葉を告げ去って行った。

いずみの仕事はポルタという名のパソコンに捜査資料の内容を打ち込むこと。
資料の山はいつの間にか増えていき、いくら入力しても減らない。
こんなとろこにまわされるなんて、退職勧告の一形態かとふてくされるいずみ。

ある日、ポルタの画面が真っ白く光り、明るさを増していき、光がいずみを包み込んだ。
気づくと、何故かいずみは過去にいて、警察署長となっている。

いずみが関わった事件は5件。
1985年、外岡恵理殺害事件と放火
1999年、北新宿第二公園での巡査部長の自殺事件
1968年、質屋夫婦殺害事件
1977年、小学生誘拐殺人事件
2022年、身元不明死体と五反田警察署長の殺人事件

いずみは署長でありながら現場に赴き、一日というタイムリミットがあるにもかかわらず、見事に事件を解決していくのだった。

過去にタイムスリップして未解決事件を解決していくという荒唐無稽なお話ですが、コミカルで読みやすくてよかったです。
五十代ぐらいのおじさんの体に憑依なんて、私も嫌ですが、若いいずみだったらもっと嫌でしょう、笑。
携帯電話がなく、公衆電話が10円なんて、懐かしいですねぇ。
煙草を吸う人は今は少なくなりましたが、昔は多かったですよね。
職場で平気で煙草を吸っていましたから。

1949年の渋谷駅前広場殺人事件に関わるような感じで終わったので、続きがありそうですね。
続きを書いて貰わないと、どんな事件か気になって眠れなくなる(ウソよ)ので、お願いします。


<今日のわんこ>


音が出るか出ないかによって、おもちゃに対する食いつき方が変わります。
音が出ないおもちゃの場合、しばらく遊びますが、ある程度遊んだ後、音のするおもちゃのある方を見上げて、遊びたいとアピールしてきます。
黒いおもちゃは音がかろうじてまだ出るので、こういう風に咥えて、ハウスまで持っていきます。
ママとしては、早く遊ぶのを止めてくれれば、ありがたいんですが(笑)。

アガサ・クリスティ 『ハロウィーン・パーティ』2023/09/29

ケネス・ブラナーが監督をし、ポアロを演じた映画「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」の原作だというので読んでみました。


ウドリー・コモンで子どもたちのためのハロウィーン・パーティが開催された。
パーティの後、後片付けをするために図書室に行くと、ジョイスという女の子がリンゴ食い競争用のバケツに首を突っ込んで死んでいた。
ポワロの友人で探偵作家のアリアドニ・オリヴァは、ちょうどその時、ウドリー・コモンに住んでいる船旅で出会った友だちの家に滞在しており、パーティに出席していた。

翌日、ミセス・オリヴァはロンドンにいるポアロのところに押しかけ、ハロウィーン・パーティで起った殺人のことを話し、捜査を依頼する。
ウドリー・コモンと聞き、ポアロはある人物を思い出す。

ミセス・オリヴァに頼まれ、ウドリー・コモンを訪れたポアロは友人のスペンス元警視に会いに行き、町や人々のことを詳しく訊く。
これを手始めに、事件に関係する町の人々に会い、話をし、彼はこの殺人事件が過去の事件と関連があることに気づく。
やがて地道な聞き取りが事件を解決に導びいていく。

ポアロは服装に妙なこだわりがあり、田舎の道を歩くというのに、エナメルの靴を履いていて、足が痛くなり、みんなに笑われています。
エナメルの靴って堅いわよね。スエードの方が柔らかくて、歩きやすいですよね。
それなのに、絶対にスエードの靴を履かないなんて、面白いお方です。

「マダム、わたしは行きとどいた身なりをしていると思われるのが好きなのです」

「武士は食わねど高楊枝」ですか、笑。

ポアロの名言。

「過去は現在の父です」
「いかなる犠牲をはらってでも(中略)わたしとしては、求めているのは事実です。つねに、事実です」

この作品はポアロ・シリーズ33作のうち31作目だそうです。
私は6作目で読むのが止っています。
今回、探偵作家のミセス・オリヴァが登場していますが、彼女は33作のうちのどの作品から登場しているのかしら?
スペンス警視もポアロとどの事件で会ったのか、気になります。

さて、映画「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」ですが、予告編を見てみると、ホラー。降霊会なんて、全く本には出てきません。
本当にこの本が原作?
それにケネスのポアロ、あまり原作と似ていないし、仰々しくてねwww。
映画を観る前に読もうと思っている人、読まなくてもいいよ。
映画「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」は『ハロウィーン・パーティ』とは別物と考えて、観て下さいね。

映画ではベネチアの映像が美しそうですね。
私がベネチアに行ったのは昼間だったのですが、いい印象がありません。
8月だったので暑くて、人が多くて、ゴンドラの船頭が携帯ばかりみていたのだもの。
そういえばサンマルコ広場が洪水で浸水したと言ってました。
とにかく夜がすごくいいそうです。
行く予定があったら、是非ベネチアで一泊して、夜の街を歩いてみて下さい。
そのうち沈んでしまうかもしれませんからwww。


<今日のおやつ>


またまた缶のデザインに惹かれて買ってしまったKEITA MARUYAMAのクッキー。
今回は栗の味らしい。
また鳥を割ってしまった…。
缶ばかりたまるので、そろそろ止めますわ…。