ケイト・キングズバリー 『首なし騎士と五月祭』2011/05/24

ペニーフット・ホテル・シリーズの四作目。


バジャーズ・エンドに隠れ家的ホテル、ペニーフット・ホテルがありました。
季節は5月。メイデーの祭りがホテルで開かれることになっていました。

そんなある日、ホテルの常連客でいつも飲んだくれているフォーテスキュー大佐が、パブの帰りに首なし騎士に会い、必死に逃げる途中でメイポールに縛り付けられた女性の死体を発見します。
次の日、宿泊客の女性が行方不明になっていました。
メイポールに縛り付けられていたのは、その行方不明の女性でした。

ホテルの女主人セシリーはメイデーの祭りが行われないとホテルの危機だとばかりに、捜査に乗り出します。
支配人のバクスターはセシリーが無謀なことをしないかと心配しています。

セシリーはバクスターのことを異性として意識しており、彼がなかなか打ち解けてくれないのがおもしろくありません。
バクスターは亡くなったセシリーの夫から彼女のことを頼まれたからと、セシリーを助けていますが、どうもセシリーのことが好きらしいのです。
二十世紀初頭の話ですから、主人と雇い人の上下関係はきっちりと決まっています。バクスターの踏み切れない気持ちもわかります。
それなのに、セシリーはわざとバクスターを戸惑わせることを言います。

セシリーは20世紀初頭の時代の先端を行っている女性です。
夫が亡くなってからホテル経営をやっていますから、世間の女性はこうであるべきだという考えに同調できないのです。
「どんなことでも男性と同じようにうまくやれるの」とは彼女の心からの言葉でしょう。
そんな彼女にバクスターは「ふつうの女性には、マダムのような気丈さや常識はないのですから」と言います。

この本の楽しみのひとつはセシリーとバクスターの関係がどう変わっていくかです。

捜査の方はこれと言って進展がなく、警察があてにならないからと、セシリーは宿泊客を捕まえて質問ばかりしています。殺人事件でホテル存続の危機というより、彼女のしつこさの方が宿泊客に嫌われそうな気がしますが・・・。

そうそう、五月祭とは何でしょう。日本でメイデーというと、労働者の日という感じになっていますが、実は古代ローマの祭りで、夏の豊穣を祝する祭りなのだそうです。
五月祭の日にはクイーンとキングを選んだり、メイポールという柱に付けられたリボンを持って若い女性たちが踊ったりします。どんな音楽で踊っているのでしょうね。
日本でも学校によってはこのメイポールダンスをやっているところもあるようです。私の通った大学でもやっていたようですが、私は参加しませんでした。

人よりも植物とお友達の庭師ジョンに言ったセシリーの言葉はなるほどと思いました。

「ときどき、あなたのようなやりかたがいちばんいいような気もするわ。でも痛みがなければ、喜びも味わえないと思うのよ」

それでもこの頃、痛みはもういいやと思う私がいます。
人づき合いも疲れますから。

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