大崎梢・威風堂書店・シリーズ1~32011/08/10

日常に潜む謎を解くミステリーを探していました。
ありましたよ。
「威風堂書店事件メモ」という副題の『配達あかずきん』、『晩夏に捧ぐ』、『サイン会はいかが?』の三冊がとってもいいんです。
威風堂という書店に持ち込まれる謎を、いわばホームズの役回りのバイト店員多恵とワトソンがわりの正社員の店員杏子のコンビが解くというシリーズです。

本屋についてとっても詳しいので、大崎さんってどういう人かと思って紹介文を読んでみると、元書店員だったそうです。やはりね。本屋に勤めていないと、こういう風に本屋の仕事を書けませんわ。
今度から書店員の視点で本屋を見てみることにします。
それにしてもお客さんってとんでもないことを聞くのですね。本の題名も作者も知らずに、「かわいそうな話なのよ」、「女の子がたくさん出てきて、みんなとっても貧しいの」なんて言われても、困りますよね。(探していたのは『あゝ野麦峠』だそうです)
私は店員さんには近づかないです。本屋で漂い、本の海に沈んで、自分でおもしろそうな魚を釣った方が面白いものね。
「あ、これ、おもしろそう」とピンときて選んだ本がおもしろかったなら、これほど幸せなことってないですよね。

この本が幸せな一冊でした。お仕事シリーズの一冊にしましょう。


一作目の『配達あかずきん』と三作目『サイン会はいかが?』は短編集です。
どの話も味があり、ホロっとさせられます。こんなに本屋に隠された物語があるなんて、予想していませんでした。

二作目の『晩夏に捧ぐ』は長編です。


元同僚の書店員だった美保に頼まれ、多恵と杏子は長野に行きます。美保の勤める老舗書店に幽霊がでるというのです。

この老舗の本屋がいいんです。

「まるう堂の店内はこれといった派手な演出はなかった。けれど、初めて訪れた杏子もすぐになじんでしまうような和やかさがあった」
「棚が話しかけてきますね」「そう言ってもらうと、本屋冥利に尽きるよ」

「棚が話しかけ」るってどういうのでしょうね。こういう本屋があったら、行ってみたいです。

私の好きな書店ってどちらかといえば小さな店です。大きくなると、本が多すぎて、見るのがめんどくさくなるのです。
小さければどこでもいいわけではありません。おもしろいもので、ここはダメっという書店があるんです。意外と駅ナカの書店がよかったりします。
何が違うんでしょうね。今度行って、どこがよく、どこが気に入らないか考えてみますね。
不思議なことに、いつ行っても、気に入った本がある確率が高い書店があります。私と同じ趣味をしている店員さんがいるということでしょうか。

とにかく人間味があり、ほんわかする本です。
『サイン会はいかが?』に坂木司さんがあとがきを書いています。二人とも日常に潜む謎を書くということで、似ているのかな?