阿川大樹 『D列車でいこう』2011/09/15



経済小説も6冊目かな?
『あぽやん』もおもしろかったですが、この『D列車でいこう』も夢があり好きな作品です。

バイクツーリングが趣味の河原崎慎平は何年かぶりのツーリングから戻って以来、山花線のことが頭から離れません。山花線で試運転の列車に女性が轢かれるという事故に遭遇したからです。

慎平が菱友銀行の支店長として新田支店に勤めてから、新田支店は過去最高の数字を挙げていました。しかし、同じ支店には五年しかいられないことが内規で決められていて、五年目の慎平に<菱友パーソナルファイナンス>という傍系のクレジット会社の役員にならないかという話が持ち上がります。
定年まであと十年。必要な仕事ではあるけれど、やりがいのある仕事だとは思えません。しかし、人事にノーはありません。

そんな頃、池袋書店で山花線の事故の時にたまたま出会った田中とばったり再会し、意気投合する二人です。

山花鉄道は地元の山花町と広島県と、自治体が出資した第三セクターで、赤字が年に三千万円あり、再来年には廃線になる予定です。
二度目に田中に飲みに誘われた時、「いっしょに山花鉄道の支援に乗り出しませんか」といきなり切り出されます。
公務員だった田中は五十八歳。仕事を辞めて悠々自適の生活をしていましたが、何かをやりたいと思い始め、私財の二億円を出して山花鉄道を再建したいと思ったのです。
田中の言葉に心が動く慎平です。

慎平の部下に深田由希という三十二歳、独身、総合職、夜学でMBAを取った女性行員がいます。彼女とはたまに昼を食べる仲。由希が何故か山花鉄道に興味を示します。休暇を取ってわざわざ山花鉄道に乗りに行き、慎平と田中に山花鉄道再生のプレゼンテーションをします。彼女は銀行を辞め、慎平たちと一緒に山花鉄道再生をやりたいと言いうのです。

そういうわけで、社長は由希、取締役、田中博&河原崎慎平。出資額、田中、二億円、慎平、六百万円、由希、二百万円で山花線再生だけの会社「株式会社ドリームトレイン』が設立しました。

早速、三人は山花市町に会いに行くのですが・・・。

こんなこと現実にはなさそうですが、できたらいいなと思います。

「五十五で自分探ししちゃいけないかな」

「人は変わるようでいて変わらない。ただ、世間から期待されるものや、自分自身の気持ちのもちようで、長く生きているうちに無意識に自分を狭めている」

慎平のように、勇気を持って一歩踏み出してもいいかも。踏み出した後のことはこちらは責任を持ちませんが。