フェイ・ケラーマン 『木星の骨』2011/09/27



楽しみなシリーズのひとつです。
最初の頃は事件と関係があったので、正統派ユダヤ教徒の生活が克明に書かれていたのですが、この頃はあまり書かれなくなっています。ちょっとさびしいです。

<神の環教団>の教祖ジュピターが教団の建物の中で死んでいました。
何者かがジュピターの娘にこっそりと連絡し、娘から警察に知らせてきたのです。
デッカーたちは事件現場の教団の本拠地へと出向きますが、死体は動かされており、警察の介入を阻止しようという教団の意思が伺えました。
デッカーたちは粘り強く捜査を続けようとしますが・・・。

アメリカは新興宗教の多い国です。
宗教の自由は尊重されなければならないと思いますが、その宗教が社会に不利益を与える時は規制せざるおえなくなります。
アメリカではあるカルト教団が多量の重火器を保有していたり、集団自殺をしたりなどという物騒な事件が起こっています。日本でもオウムの地下鉄サリン事件がありました。
何故精神的幸福を目指すはずの宗教が暴力的なものになってしまうのか、どんな書物を読んでも納得できません。未だに謎です。

私のこのシリーズの一番の楽しみは、事件ではなくて、デッカーの家族です。
リナとの仲は安定しており、夫婦の絆はバッチリ。
デッカーとリナの連れ子との関係が不安定だったのですが、良い方へと変化していきます。

「もし自分がほんのわずかな洞察力でも持ち合わせていたら、数えきれない数のよその子供に対して示してきた思いやりのかけらでも示していたら、自分の息子を――
いや、息子たちだ――傷ついて苦しんでいた八歳の息子も、ふたりとも救えたのかもしれない。
この罪悪感と恥を埋めるには、どんな大きな穴でも足りないくらいだ」

デッカーが2人の義理の息子から衝撃的な話を聞いた後に思う事です。
子どもとの関係を深めるためには、デッカーのように自分のやったことを冷静に分析し、至らなかったところを潔く認め、謝るという態度が大人に必要なことなのでしょうね。

ちょっとネタバレをすると、いつものシリーズとは違い、大脱出劇があり、ピーターの部下が大活躍をしますので、お楽しみに。