碧野 圭 『辞めない理由』2011/09/06



これも経済小説です。

女性誌の副編集長の七瀬和美は、ワーキングマザーとして仕事に子育てにと忙しい毎日を送っていました。
ところが、雑誌のリニューアルをしようという時に、思いがけないことが起こります。
部下の反乱と、降格人事でした。
実質的な編集長は自分で、次の編集長は自分だという自負もありました。しかし、同じ副編集長をしていた男性が編集長になり、和美は副編集長からはずされたのです。

これが俗に言う「ガラスの天井」で、自分はいくら頑張っても編集長になれないのか。自分は降格させられるようなことは何もやっていないのに・・・。
そう思った和美はじぶんを他の部署へ異動させるようにと申し出ます。

ひとつが上手くいかないと次々と上手く行かないことが続きます。今度は娘の絵里がクラスで上手くいっていないようです。

一度は仕事を辞めようかとも思った和美ですが、自分が辞めると噂になっていることを聞き、猛烈に腹が立ち、絶対に辞めるものかと決心します。

和美の新しい部署は新雑誌準備室という閑職です。がっかりする和美に室長の田村は「攻めの部署もあれば守りの部署もある」「全力疾走できるときはいいけど、したくてもできないときもあるでしょう。うちのような部署でゆっくりすればいいんです」と言ってくれました。
しかし、和美は前と同じペースで仕事を進めようとします。


仕事も家庭も両方完璧にこなしているスーパーウーマンにありがちなことを扱っているのがこの本です。自分にもこういうところがあるな(和美が反面教師になりますね)、とか、自分の会社にもこういうことが起こりうるな(男性社会ですから)、とか思いながら読んでいくといいのかもしれません。
まだまだ女性が仕事を続けていくことが難しい世の中ですが、肩ひじ張らずに続けていくことに意味があると思います。『メリーゴーランド』のように上手くいかないことが多いのが現実ですから。
仕事がすべてではありません。どこに幸福を置くのかが問題なのです。