おいしいコージーミステリー2022/01/19

「コージー・ミステリー」とは、簡単に言うと素人が活躍する日常生活で起る謎や事件を扱うミステリーのことで、舞台は主人公が暮らしている地域が多く、そこで暮らす人々の人間模様や日常生活の描写が詳細に描かれています。
今回はおいしい食べ物と謎解きの両方が書かれているシリーズの新作二冊を紹介します。


ローラ・チャイルズ 『ハイビスカス・ティーと幽霊屋敷』
チャールストンのヘリテッジ協会に遺贈された古いブシャール邸が、ハロウィンにあわせて文学と歴史をテーマにした「幽霊屋敷」として一般公開されることになります。
「インディゴ・ティーショップ」のオーナー、セオドシア・ブラウニングは店のお茶のソムリエ、ドレイトン・コナリーといっしょに、ハロウィーンの一週間前に開かれたお披露目会に出かけました。
お披露目会ではヘリテッジ協会の会長であるティモシーの甥の娘、ウィロー・フレンチが書いた地元の幽霊伝説の本のサイン会も催されていました。
ところがウィローは屋敷の三階窓からロープで吊り下げられて殺されます。
その上、ウィローのアパートメントを調べに行った、セオドシアの恋人で刑事のピート・ライリーが何者かにより銃で撃たれてしまいます。命に別状はなかったのですが、しばらく事件に関わることはできません。
ウィローはティーショップのシェフ兼パティシエのヘイリーの友だちで、ライリーはセオドシアのボーイフレンド。
そういうわけで、セオドシアはなんとしても事件の真相を突きとめることにします。

このシリーズの楽しみはティーショップで開かれるお茶会です。
今回は「シャーロック・ホームズのお茶会」とハロウィーンがあるので「カボチャとスパイスのお茶会」、そして「魅惑のガーデンパーティ」が開かれます。
「シャーロック・ホームズのお茶会」を紹介しましょう。
真っ白なテーブルクロスの上にツイードのテーブルランナーを敷き、古めかしいパイプと大ぶりの虫眼鏡を並べ、ミステリの本や手錠、鍵束、おもちゃのピストルなどを置き、ロンドンの古い地図をプレーズマットがわりにセットします。
食器はロイヤルクラウンダービーのバルモラル柄。
食べ物の始めは、”バスカヴィル家の犬”と名づけたクリームスコーン。
ティーサンドイッチはスモークサーモンとクリームフレーシュ、ハムとマスタード、ローストした赤パプリカとクリームチーズの三種類。
メインディッシュはベイカー街風ミートパイ。
デザートはモリアーティの爆弾(ステッキートフィープディング)。
お茶はラプサン・スーチョンとオリジナルのシャーロック・ホームズ・ブレンド(オレンジ、ジンジャー、クローブ、カルダモンを加えた香り豊かな紅茶)。
もちろん店の従業員もお客もテーマに即した服装をします。

いつもセオドシアたちが殺人事件に遭遇しちゃうことが不自然ですが、おいしいお茶とお料理が出てくるので許せちゃいます、笑。


ジョアン・フルーク 『チョコレートクリーム・パイが知っている』
<クッキー・ジャー>を経営するハンナ・スウェンセンは失意のどん底にいました。
というのも、結婚式を挙げ、披露宴を開き、新婚旅行にも行き、これから新しい生活が始まると思っていた矢先に夫のロス・バートンがハンナのもとを去りました。
妻のもとに帰ったというのです。
(重婚か…と思ったら、何故かハンナは結婚していなかったことになっています。Marriage Licenseを役所に出していないからなのかしら?)
ロスがいない理由をこのまま町の人々に黙っていることができず、ハンナは教会の日曜礼拝の後に真実を告げることにします。

そんな時にロスが突然現れ、ハンナをまだ愛している、妻と別れるために金が必要だ、銀行に預けてある金を引き出してくれと命じます。
ところが間の悪いことに、暴風雨でガラスが割れ、銀行は休業中。
なんとしてもお金が欲しいロスはハンナを脅したり、猫なで声を出して懐柔しようとします。今までのロスとは違い、まるでふたつの人格があるみたい。
身の危険を感じたハンナをノーマンやマイクたちは二十四時間付き添い、守ってくれます。
しかし、とんでもないことが起ります。
ハンナのベッドルームでロスが死んでいたのです…。

20冊目ぐらいまでは、彼女に気のあるノーマンとマイクの二人をハンナが振り回す感じが続き飽きてきていましたが、急展開でロスと会って結婚式を挙げてから俄然面白くなってきました。それにしてもノーマンとマイクはいい人過ぎだわぁ。
そんなにハンナがいい女とは思えないのですが(失礼)。

<クッキー・ジャー>で売っているクッキーやケーキがとっても美味しそうです。
気になったのがバントケーキ。どんなケーキかと思ったら、バント型というリング状の型で作ったケーキのことでした。
バレンタイン用のピンクのクッキー(複数)も美味しそうです。
レシピがあるので、興味のある方は作ってみてください。
身近にない材料があって、私は作るのを躊躇しています。
唯一作れそうなのがクッキーではなくて、ほうれん草とベーコンのサラダにスィートクリームドレッシングをかけたものです。甘いドレッシングってあまり食べたことがないけれど美味しそうです。

謎解きも普通のアメリカ人の日常生活も両方楽しみたいと思ったら、読んでみてください。
くれぐれも謎解き重視の方は読まないようにね、笑。