熊谷はるか 『JK、インドで常識ぶっ壊される』2022/03/04



親の仕事の都合で突如としてインドに住むことになった普通の女の子が、中学三年生から三年間(2018年8月から2021年5月まで)、インドで体験し、感じ、考えたことを書いた本です。
こういう本はたいていインドにはまった人が書いていますが、十代の感性は本当に素晴らしく、思っていたよりもはるかに文章が上手く、最後まで読んでいけました。

インドと言えば、今やIT大国。
私がインドに行った30年ぐらい前とはすっかり変っているだろうなと思いながら読んでいくと、全く変っていないところがあり、とても残念でした。
それはスラムやストリートチルドレンの存在です。
はるかさんは母親とストリートチルドレンの保護や支援をしているNGOが開催している町歩きに参加して、ストリートチルドレンについて知ります。
私はストリートチルドレンは、親が病気やらなんやらでいなくなり、道端や路上で生活せざるを得なくなった子どもたちだと思っていました。
しかし実際は、親がアルコホリックで暴力を振るったり、性的虐待をするので、「家から逃れるために路上に出てきてしまった子どもたち」なのだそうです。
逃れてきても、安全ではありません。物乞いをして稼いだお金を他のおとなや子どもに奪われ、喧嘩になったり、暴力を振るわれたりします。
そのため取られる前に使おうとし、街角の売店で売られているドラッグに手を出すことが多く、薬物乱用が大きな問題のひとつになっているようです。

町に出ると、インドでは常に物乞いがつきまといます。
初めはどうしようかと困惑しますが、しばらくすると面倒になり、無視するようになります。
NGOの人によると、そういう時は、すぐに「その場で食べられるもの」をあげて欲しいそうです。

前と変らないことが書いてあり、ちょっぴり安心したこともあります。
「Rights for Children(子どものための権利)」というサービスクラブではるかさんが出逢ったという、インドの子どもたちの明るさや笑顔、目の輝きです。
30年前、どこに行っても、子どもたちが人なつこくって、目がキラキラしていたことがとても印象的でした。
日本の子どもたちの目は死んだ魚のようだなと思ったことを思い出しました。
本当の豊かさとは何かを考えさせられたものです。

十代のみずみずしい感性には感心しました。
こんな国、嫌だと拒否するのではなく、受け入れ、深く関わっていこうとする、こんなJKが日本にいたのだ、日本の未来は明るいなと思いました。
できれば、はるかさんにはこれからもインドに関わっていってもらいたい、いいえ、何か国際的な仕事を目指して欲しいなと勝手に思いました。

いいインドの入門書になると思います。
この本の印税の一部がインドの子どもたちを支援する団体に寄付されるそうなので、是非購入して読んで下さい。
私は図書館で借りてしまいました…(恥)。


<今日のわんこ>

「ママさん、僕もインドに行って、野良犬たちとお友達になりたいです」
「あなたは無理よ。暑さに弱いし、家では傍若無人でも、外に行ったら内弁慶でしょ」
「ママさん、ひどい(泣)」