「ドライブ・マイ・カー」を観る2022/03/15

「ドライブ・マイ・カー」が、アマゾンのプライムビデオで観られるのがわかったので、観てみました。
ポスターはフランス版を載せておきます。
映画は、私は村上春樹は好きな方なので、三時間という長さは気になりませんでした。
村上春樹が嫌いな人には向かない映画かもしれません。


ベットで脚本家の妻が物語っている。
同級生の山賀の家に忍び込む女子高校生の話を。
妻はセックスの後、物語り、それを忘れてしまう。
翌朝、覚えている夫が妻に語り、妻はそれを脚本にする。

『ゴドーを待ちながら』を演じる家福。
楽屋で化粧を落としていると、妻の音が自分のドラマに出ている高槻という若い俳優を連れてくる。

翌朝、家福はウラジオストックで開催される演劇祭に招待されていた。
そっと家を出ようとする家福に、音が『ワーニャ叔父さん』の台詞を吹き込んだカセットを渡す。
車に乗り、カセットを聞く家福。
家福はいつも車の中で音のカセットを聞きながら台詞を暗唱している。

空港の駐車場で、フライトがキャンセルになったのを知る。
マンションに戻ると、音は男とセックスをしていた。
家福は黙って出て行き、空港のそばのホテルに泊まる。
音から来たビデオ通話では何も言わず、ウラジオストックにいる振りをする。

一週間後、運転しながら台詞の練習をしていると、車とぶつかる。
精密検査で左目が緑内障だとわかる。

雨の日、家福と音は喪服を着てお寺にいる。
二人の娘は4歳の時に肺炎で亡くなった。
「もう一人、欲しかった?」、「あなたのことが本当に好きなの。あなたでよかった」という音。

その夜、セックスの後、音は同級生の山賀の家に忍び込む女子高生の話を始める。
彼女は前世がナツメウナギだったことを思い出す。
彼女はその日も山賀の家に忍び込んでいた。
誰かが階段を上ってきて、部屋のドアが開く…。

次の日、ワークショップに出かけると言って家から出ようとする家福に音は話したいことがあると言って送り出す。
家福はその日、夜遅くに帰ってくる。
音はソファで死んでいた。くも膜下出血だった。

二年後、相変わらず家福は車の中で音の吹き込んだカセットを使い台詞の練習をしているが、彼は演じることができなくなっていた。
広島で行われる国際演劇祭に招待された家福は「ワーニャ叔父さん」を演出する。
演劇祭の間は規定で家福は車を運転できず、専属のドライバーを用意したと言われる。
家福は不服ながらも、23歳の女性ドライバー・みさきが毎日送り迎えをすることを承諾する。

宿泊所でオーディションの応募者の書類をチェックしていると、高槻がいた。
高槻は合格したが、希望とは違うワーニャ役を演じる。

本読みが行われる。
俳優たちは感情を込めず、ただ読むだけ。
高槻は本読みに手こずっている。

稽古が終わった後に高槻がやって来て、家福を飲みに誘う。
高槻はスキャンダルで事務所を辞めていた。
彼はたまたま検索したらこのオーディションがヒットし、縁を感じて応募した。音に恋していた。家福に嫉妬を感じていたと言う。
そこにシャッターの音が聞こえ、高槻はスマホで盗撮していた男に掴みかかる。
家福は会計をし、出て行く。

演劇祭の運営係で通訳でもあるユンスを家まで送っていく。
韓国手話も理解しているユンスにどうやって覚えたのかと聞くと、ユンスは家福を食事に招く。
家にいくと、そこに劇のソーニャ役のユナがいた。
彼女は元ダンサーで、流産の後身体が思うように動かなくなっていた。
夫がこの劇のことを教え、チャンスと思い応募したと言う。
ユンスにみさきのことを聞かれ、よいドライバーだと褒める家福。
みさきは照れたのか、犬と遊ぶ。

帰りの車の中で、みさきと話す。
彼女は北海道の上十二滝村出身で、中学生の時に運転を覚え、水商売の母の送り迎えをした。起こすと殴られたので、起こさないような運転の仕方を覚えたと言う。

別の日、家福は車の中からエレーナ役の女優と車に乗っている高槻を見る。
高槻の車が事故を起こす。
読み合わせに遅れてくる二人。
家福は高槻に分別を持てと言うが…。

ある日、家福はどこでもいいから車を走らせるようにみさきに言う。
みさきはゴミ処理場に家福を連れていく。
ゴミが舞い散る様子を雪みたいだと言うみさき。
どうして広島に来たのかと問うと、5年前、大雨で地滑りが起こり、その事故で母が亡くなった。当時免許を取ったばかりで、当てもなく西を目指して走っていたら、広島で車が壊れてしまった。それでゴミの収集車の運転手になったとみさきは話す。

高槻がまた声をかけてくる。
彼は家福に「僕は空っぽなんです。何もないのです。音さんが僕たちを引き合わせてくれたというのは本当です」と言う。
高槻はスマホで彼を映した男を追っていく。
戻ってきた高槻を車に乗せる。
車の中で家福は音とのセックスと複数いた男のことを語る。
前世がナツメウナギだった女子高生の話をすると、高槻は続きを知っていると言い、語り始める。
語り終えてから家福に、「他人の心の中をのぞき込むことは難しい。自分の心と正直に折り合いをつけていくこと」と「自分自信を深く、まっすぐに見つめていくしかない」と言う。

舞台稽古中に警察がやって来る。
高槻が殴った男が亡くなったと言う。
演劇祭を中止するのか、ワーニャを家福が演じるかどうか決めなくてはならなくなる。
家福はみさきに彼女の育った北海道の上十二滝に連れて行ってくれと頼む。

最初の訳のわからないセックス場面と女子高生の話にうんざりしましたが、いつしか三時間が過ぎていました。
出てくる人たちの台本読みのような、抑揚のない台詞のような話し方、演出ですよね。

妻の浮気相手だった高槻が不気味でした。
彼は一体なんだったのでしょう。家福を追うストーカーか、笑。
家福たち夫婦の「細かすぎて伝わらないことを大事にしているのが好きだ」とか言っていましたが、偉そうに彼らのことを分析するより、自分のことを考えろよといいたくなりました、笑。
岡田君、「ホノカアボーイ」の純真無垢な青年役からサイコパスっぽい役を演じるまでになったのですね。

北海道までドライブし、互いのことを話し合う家福とみさき。
彼らの中にある罪悪感と悲しみ、孤独が共鳴しあっているようでした。
妻の浮気を見ないようにし、本音を言わないようにし、傷ついていない振りをしていた家福はやっと「正しく傷つくべきだった」ことに気づきます。
娘や妻を失った悲しみはこれからもずっと続き、それでも生きていかなければならないのです。
『ワーニャ叔父さん』の手話で語られるソーニャの台詞が心に染みました。
「ワーニャ叔父さん、生きていきましょう。長い、長い日と、長い夜を生き抜きましょう…」

「風の電話」と同じ台詞を西島さんが言っていました。
ハルと別れる時に「大丈夫、大丈夫」と言うのですが、この映画でもみさきに「大丈夫。僕たちはきっと大丈夫だ」と言っています。
「大丈夫」って便利な人を安心させる言葉ですね。
何も確たるものはないけれど、それでも大丈夫と言われれば、大丈夫と思えますものね、笑。

アカデミー賞が取れるかどうかはなんとも言えませんが、なんとなくフランス人の好きそうな映画だなぁと思いました。なんとなくだから追求しないでねwww。
長い再生の映画でした。