近藤史恵 『幽霊絵師火狂 筆のみが知る』2023/07/05



江戸が東京になってしばらく経った頃、料理屋「しの田」の二階に、有名な絵師の火狂が居候をすることになる。
彼は見えないものを見、怖い絵を描く。
彼のところに来る客は、何やら曰くありげな絵を持ち込む。

「しの田」の一人娘の真阿は十二歳の時から胸の病だと言われ、部屋から出ることを禁じられていた。そのため彼女の友は絵草紙や赤本だった。
二階に火狂が来たと聞き、好奇心を抑えられず、真阿は彼に会いにいく。
それからの真阿は火狂の描いた絵と共鳴するように不思議な夢を見るようになる。

ちなみに火狂こと興四郎の描いた「怖い絵」は裃を着ている犬の絵、火鉢の横で、猫を抱いている女の絵、上の方を見上げている少年の絵、白い打ち掛けを着た夜鷹の絵などです。
文字にするだけでは怖いと思えませんけど、絵に関係のある人にとってはとても怖い絵なのです。

幼い女の子だといって真阿を馬鹿にしないで、きちんと向き合っていく興四郎に好感が持てます。
興四郎の母と姉のことが出てきましたが、葛飾応為や河鍋暁翠などを思わせられました。

一応ホラーですが、全く怖くありません。
幽霊よりも生きている人間の方が怖いですよね、笑。
人間の性とか悲しみとか色々と考えさせられるお話です。
題名から続きがありそうですね。楽しみに待ちますわ。